破界僧〜Fateの世紀〜   作:ヤン・デ・レェ

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R18とR15を分けることにしました。
自分で読み返すと、俺…本編でいつまで経ってもR18展開書いてないなと思いまして。
なので、エロいのを描くのはそれ専用で話を投稿できれば良いなと考えています。
どちらも世界観に差異はなく、単純に書き分けるためです。


小ドルススの恩返し

荘厳なるローマ帝国の宮殿。

 

そこでは早朝にも関わらず酷く耳に心地良くない怒声が響いていた。

 

セイヤヌス「陛下!ご決断を!これは明確な国家反逆罪です!!」

 

アグリッピナ「陛下!私は断じて帝国の威信を傷つけようなどとは…」

 

 

時の皇帝はティベリウス。

 

初代皇帝アウグストゥスの後継者としてその実力を認められて帝位についた男だ。

 

 

ティベリウス帝「だまれ!母親を奪われた子供の恨みは恐ろしい。それとも!貴様は私が貴様の母を島流しに処したのみならず、奴への死を用意していたといえばどうする?」

 

アグリッピナ「…え?」

 

ティベリウス帝「ふん!知らなかったようだな。だが!貴様は思ったであろう?憎らしいと!」

 

アグリッピナ「しかし!だからといってどうして証拠もなく何故私が罰せられなければならぬのでしょうか?」

 

 

 

ローマの英雄ゲルマニクスと大アグリッピナの女であるユリア・アグリッピナは父の死を皇帝ティベリウスによる陰謀であると言って憚らずに島流しに処された母が突如流されていた島から失踪したことについて詰問を受けていた。

 

 

 

セイヤヌス「アグリッピナ様、ではこうしましょう。これは提案ですがお聞きになりますかな?」

 

アグリッピナ「…ええ。是非。」

 

セイヤヌス「ではお話ししましょう。なぁに、単純な交換です。我々は親衛隊、即ち皇帝陛下の御身を、果ては御心の安心までもを守護することが責務であります。」

 

アグリッピナ「ええ、仕事熱心だと言うのは予々聞き及んでおりますわ。」

 

セイヤヌス「それは何より。…そんな我々としては、たとえ銀貨一枚の紛失だとしても、それが陛下の御心を曇らせるのであれば必ず解決しなければならないのです。たとえどのような手を用いたとしましても、ね。」

 

 

 

ティベリウスの玉座の隣で如何にも宰相を気取ったこの中年男の名前はセイヤヌス。

 

過去に落石などからティベリウスを生命を挺して守ったことから彼の信任は厚く、ティベリウスの息子ドルススとの対立が噂されている。

 

その信任の厚さから親衛隊長官として権勢を振るう。

 

息子ドルススの健康悪化に心を痛めて塞ぎ込む皇帝ティベリウスの精神不養生を良いことに、正に宰相の如く宮殿では幅を利かせている。

 

 

 

 

アグリッピナ「話がお上手ね…それで!お求めの品は何かしら?」

 

セイヤヌス「…単刀直入に申し上げましょう。貴女が独断で解放した挙句、何やら大変親しくされている下郎の輩。そうそう、シュルカヌスという者です。」

 

アグリッピナ「…ええ、確かにそばに置いておりますが。彼が何か?」

 

 

たらりと嫌な汗がアグリッピナの背筋を舐る。

 

 

セイヤヌス「えぇ、彼に少々用がありまして。私どもの要求としましては、給仕のシュルカヌスの身柄の引き渡し、それだけでございます。」

 

アグリッピナ「それは…。」

 

ティベリウス帝「どうだ?容易かろう?たかだか給仕一人。しかも、セイヤヌスに聞けば身元も定かでは無い怪しい男だと聞く。」

 

 

 

嗚呼、ティベリウスよ。

 

形骸化した忠誠も見抜けぬほどに耄碌したか。

 

息子の苦しみに心痛めては自邸に引きこもる頻度が増えてきている、この皇帝と政治中枢とのパイプはセイヤヌスによる時事情報と喫緊の有無くらいである。

 

 

 

アグリッピナ「しかし!」

 

ティベリウス帝「しかしなんだ?英雄ゲルマニクスの娘である貴女のような貴い人間には、たとえそばに置くだけであろうと似つかわしく無いと思うがね。」

 

 

過去の因縁を掘り返すな。

 

カビ臭い因縁は使い古したコンプレックスの集大成をも思い出させ、無実のアグリッピナをも傷ませる。

 

 

アグリッピナ「…シュルカヌス…。」

 

セイヤヌス「さぁ!ご決断を!」

 

 

さながら草木の一代を早送りに流し見るように彼女の内から力が抜けていく。

 

彼女は実母実父のみならず心の父をも失うのであろうか。

 

 

否。

 

 

時はきたとばかりに議場の眩い金に飾られた大扉が大口を開けた。

 

 

小ドルスス「お待ちください陛下!!!」

 

ティベリウス帝「おぉ!!どうしたのだ我が後継者ドルススよ。」

 

 

皇帝にとって息子のティベリウスこそが後継者であり、皇帝位即ちティベリウス自身の栄光と名誉の継承者でもある。

 

ドルススの健康不良は、帝国を継ぐべき者の消失を幻視するほどにティベリウスの心を蝕んでいた。

 

先程とはまるで違うハリのある声音が皇帝椅子に座る老人だったものの口から響き出した。

 

それは皇帝の声である。

 

 

セイヤヌス「チッ…ドルスス様いかがなされましたか?」

 

小ドルスス「私は君に用はない。」

 

 

 

セイヤヌスは皇帝の御子息へと少し遅れるも慇懃に振る舞ってみせる。

 

まさか現れるとは思ってもいなかったのだ。

 

つれない御子息の態度は淡白というよりも冷徹である。

 

嫌な汗が今度はセイヤヌスの背を指でなぞり出した。

 

 

セイヤヌス「そ、そうでございましたか。ならば如何様な御用で?現在私どもは大変重要な議題について話し合っておりますので、危急の事柄を除きましては横槍はご遠慮願いたい。」

 

 

 

まるで宰相の如き采配恐れ入る。

 

しかしながら最早貴公の覇気上々の時は火を傾けているのをご存知か。

 

 

 

小ドルスス「私には明確かつ重要な用があってここに来たのだ。…貴様ではなく、そちらのアグリッピナ様にな!」

 

アグリッピナ「私に…?」

 

 

 

アグリッピナには驚くだけの正当な理由がある。

 

だが、彼女は驚くのと同時に乙女の慧眼による恋の対抗馬の嗎を漏らさず聞き入れるだけの寛容な懐を持ち得ていた。

 

ドルススを見つめるアグリッピナの目はふとすれば雪のように、彼の前過の一切合切を踏み切り、まるで今この瞬間から始まったように新鮮で冷静な判断を下そうという気迫を含んでいる。

 

 

 

ティベリウス帝「アグリッピナにか?しかし、ドルススよ。お前とアグリッピナの間に親交があるなどとは聞いた覚えがないぞ。」

 

セイヤヌス「えぇ。全く同感です。して、どの様な?」

 

 

 

ティベリウスは回復した愛息子と言葉を少しでも交わしたくて既知の普遍的話題を投げかける。

 

セイヤヌスはその狡猾な思考を働かせるだけの血を脳みそに送ろうとしているのか、鼻息荒くも細やかに聴き迫る。

 

 

 

小ドルスス「私とアグリッピナ様の間に直接的な親交はございません。しかし、今彼女の元で給仕をしているというシュルカヌス殿とは直接的な関係がありました。」

 

ティベリウス帝「シュルカヌス…"殿"だと?」

 

セイヤヌス「そのように尊称をつけるには値しない存在かと…」

 

ティベリウス帝「私もセイヤヌスに同感であるが、何か礼を尽くさなければならない事柄があるのか?」

 

小ドルスス「はい!彼は、他でもない私の心身を死の淵から掬い上げて下さった方なのです!」

 

 

 

 

顔に深々と笑みが走る。

 

ドルススは顔に狂いを塗っているのか。

 

薄気味悪いほどの信心に突き動かされた道化師はもはや人を笑わせられない。

 

だが、心労極まる父親には如何なる形態であろうとも息子の活発な様を堰き止めるような真似をすることは出来なかった。

 

 

 

ティベリウス帝「誠か?」

 

小ドルスス「はい。私の痩けた頬も、薄く頼りなく変わり果てた肉体も、涙すら枯れた精神の衰弱も…陛下、いえ…父上ならば最も知られているところではありませんか?」

 

ティベリウス帝「…。セイヤヌス、説明せよ。」

 

セイヤヌス「は、はぁ…陛下。私に説明せよとも押されましt」

 

ティベリウス帝「聞いていた話と違うではないか…ドルススの健康が改善したのは妻の努力と献身に尽きると、朗々と語っておったではないか。」

 

セイヤヌス「も、申し訳ございません…」

 

ティベリウス帝「それは…認めると言う事でいいのだな?」

 

 

 

 

賢帝であるか、否かを決めるのは後程。

 

優れた父親であるか、否かを決めるのは後程。

 

父親の性を背負ったこの皇帝は、息子の回復ほど気付け薬はなかった模様。

 

秀麗なる思考の乱打は、狡猾なネズミの足跡を見つけるに至った。

 

 

 

セイヤヌス「あ、いやそれは⁉︎」

 

ティベリウス帝「…もうよい。ドルススよ!」

 

小ドルスス「はい!陛下。」

 

ティベリウス帝「父でよい。…お前の言うそのシュルカヌス、其奴は信に足る男か?」

 

小ドルスス「はい!彼が私に給仕として仕えてくれて以降、私の健康が一度として害されたことなどありませんでした!」

 

ティベリウス帝「妻の献身の話は?」

 

小ドルスス「無論、妻の献身には感謝しております。しかし、残念ながら私の肉体、そして精神に真の安らぎと回復をもたらしてくれたのはシュルカヌス殿その人であります。…敢えて言うとすれば、妻は結局のところ最後まで私の元へ他の男の影を漂わせずに現れたことはありませんでした…。」

 

 

 

ドルススは顔を陰気に下げつつ声を高く言い連ねる。

 

半ば真実、半ば確信、半ば固執、半ば辟易。

 

言動と行動に含まれる諸成分の合致は恐ろしいほどの名演を生んだようである。

 

虚偽ではない。

 

だが、ドルススの心情に悲しみに咽ぶほどの重苦は存在していない。

 

目に写るものは一人の黒い玉石ばかり。

 

 

 

ティベリウス帝「……よくわかった。よく話してくれた。」

 

アグリッピナ「陛下、私は…いえ、シュルカヌスは!」

 

ティベリウス帝「よい。…ドルススに感謝せよ。…皇帝の名において、今回の一件は不問とする。」

 

セイヤヌス「陛下!なりません!そのように甘やかしては!こ、後継者の育成として不適切です!そ、そうに決まっております!」

 

ティベリウス帝「セイヤヌス!どうしたと言うのだ!貴様は我が第一の忠臣。しかし、最近の貴様はどうにも真に信頼するに値するのか私には疑問を抱かざるを得ん!」

 

セイヤヌス「⁉︎へ、陛下!」

 

アグリッピナ「陛下…ありがとうございます。」

 

ティベリウス帝「もうよい。下がれ。私は疲れた故休むとする。」

 

小ドルスス「父上、ありがとうございました。」

 

ティベリウス帝「…皇帝として、父として、その責を果たしただけだ。よい。執政官ドルスス、下がるがよい。」

 

小ドルスス「はっ!」

 

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー

 

小ドルスス「これで少しは恩返しになったのだろうか。」

 

アグリッピナ「…ドルスス殿、ありがとうございます。貴女のお力添えがなければ、シュルカヌスは危うかったでしょう。」

 

小ドルスス「いいえ、それは違います。私は彼からいただいた大恩の、ほんの一部をお返しできたに過ぎません。彼の力になれると言うのであれば、私にできることは何でもやりましょう。」

 

アグリッピナ「…シュルカヌスも喜ぶでしょう。」

 

小ドルスス「彼に、よろしくお伝えください。」

 

アグリッピナ「えぇ。」

 

 

両者は示し合わせたように正反対に向かって歩き始め回廊を悠々と、豪奢な戦場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

(ふざけおって!!!クソっ!あんの青二才が!…ドルススを消し損ねたのだってヤツのせいだ!何もかもヤツのせいだ!ティベリウスが俺の周りをかぎまわり始めた…もはや時間はない。ドルススに仕向けた毒を見抜いていたということは、だ。…ヤツは、シュルカヌスは俺の計画の全てを知っている。……ヤるしかない、か。飲まず食わずで死なないなら、直接その肉体から命を奪うしかあるまい…。)

 

 

 

 

 

 

(セイヤヌスよ…何故だ?貴様は私に忠実な臣ではなかったのか?信頼をおくべき友ではなかったのか?……ドルススよ、私はお前のためにこの、皇帝の椅子を掃除しておく必要があるやもしれんな。…シュルカヌス…我が息子ドルススがあれほどに入れ込むとは…いつか会うことがあるやも知れぬな。)

 

 

 

 

 

 

(あぁ、私のシュルカヌス…君は今どこで何をしているのだろうか。私は少しでも貴方の役に立てたのだろうか。)

 

 

 

 

 

 

(モテる男は困ったものね。ドルススには感謝しなくちゃ。でも、ごめんなさいね。…シュルカヌスは渡せないの。待っててね♪ユリアが今行くわ、シュルク父さん♪)

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ヘッッブシ!!!」

 

「ぅ、ゔぅ〜…。む〜、風邪かなぁ?」

 




そろそろ日誌シリーズはおしまいです。
重要報告<そろそろネロが生まれます>

p.s今後を考えて"クロスオーバー"と "ハーレム"をタグに追加しました。
*"クロスオーバー"は主人公が単身で様々な原作世界を回ると言う意味であり、原作キャラが無秩序に入り乱れるわけではありません。
*基本的に一つの時代でヒロインは一人です。

面白かったらアンケートなどの御協力、何卒宜しく申し上ぐ。
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