破界僧〜Fateの世紀〜   作:ヤン・デ・レェ

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待たせたな。


ネロの初恋 (sideシュルカヌス)

ネロの初恋 (sideシュルカヌス)

 

 

 

 

 

 

ネロが生まれてから、カリグラとユリアさんは少しずつ仲が悪くなっていった。

 

互いに次の皇帝についてあれこれ言っているらしかった。

 

カリグラは次の皇帝を考えるのは時期尚早だと言うし、ユリアさんは生まれたネロの将来が約束されたという保証が欲しいみたいだ。

 

二人は兄妹だから多分なるようにはなるものだと思っていたんだけど、そうもいかなかった。

 

ユリアさんがカリグラを暗殺しようとしたって噂がたったんだ。

 

申し訳なさそうにカリグラの部下が上申した後の、二人の顔色は正反対だった。

 

カリグラは真っ赤。すっかり怒りに我を忘れていたんだと思う。

 

 

「わ、我が妹よ!其れは、その噂は真か⁉︎どうか⁉︎」

 

 

カリグラは玉座から跳ね上がるみたいに手で反動をつけて立ち上がると、ズカズカと大股で歩いていって、ユリアさんの肩を掴み、顔に自分の顔をすぐそこまで近付けて詰問しだしたんだ。

 

まぁ無理もない。カリグラはシスコンってヤツだからね。

 

姪のネロだって可愛くて仕方ないんだ。

 

だけど、やっぱりユリアさんから見てもカリグラは皇帝の位に執着している印象の方が強くて、だからはっきりと言って欲しかったんだと思う。

 

カリグラはカリグラで、良いローマをネロに残したくて悪戦苦闘してたみたいだから、それをわかってもらえないのが許せなかったんだ。

 

ネロはまだ5歳にもなってないのに、お互いがネロのためだと思って行動してるのが裏目に見てる様だった。

 

 

「兄上。その様な誰が言い出したかも知れない妄言を信じられるのですか⁉︎私がその様な真似をするはずがッ…」

 

「だまれだまれだまれ!!…フー!フー!この様なことは言いたくなかったが、もう勘弁ならん。余の愛しい姪の為にも暫くお前には静かにしていてもらうッ!」

 

「そ、そんなッ…あ、兄上!それはあまりにも!」

 

二人だけで話をするとエスカレートするからこうして俺がいるわけだ。

 

しかし、今回はいつもよりも一際酷いな…。そろそろ間に入ろうかな。

 

 

「カリグラ。そうカッカとするな。」

 

「貴様もユリアの肩を持つのか?」

 

「肩を持つというわけではない。」

 

「では何だというのか?余を、余を亡き者にしようと、その様な企みを許せるわけがあるまい!たとえ疑いに過ぎぬとしても、其れは何れかの噂になりうる様な振る舞いがあったということであろう!!」

 

「シュルカヌス!今は無理をしないで!兄上にはもう少し落ち着く時間が必要なだけなの!」

 

「…ならば一つだけ。カリグラよ!」

 

「…何だ。我が友シュルカヌスよ…。」

 

「君はまだ幼いネロから母を奪うのか?」

 

「…余は、ネロのためを…。」

 

「それとも、ネロのためと言いつつも今のネロが幾つなのかも知らぬとは言うまいな?」

 

「…今のネロ?」

 

「そうだ。これはユリアさんもそうだが、御二方はどうやら将来有望なネロの栄達ばかりに目が眩み、今の、今しか見れないネロの姿を見失っておるようですな。」

 

「…そうだ、な。…ネロは、余の愛しい姪はまだ5つにも届かぬ…。」

 

「ネロ…。」

 

「今のネロはまだまだ遊び盛り、実父は良父とは言いがたく、頼りになるはずの伯父と母は犬猿の仲だ。皇帝の栄光や名誉も大いに結構だが、幼く爛漫なネロを愛でることができるのもまた今しかないぞ。」

 

「彼女の健やかな心身を、ひいては次の大帝を育てるのは貴方達の責務であるとともに権利でもあるはずだ。」

 

「…長く側にいる者として憚ることを忘れて申し上げることは以上だ。」

 

二人は暫く何も言わずに互いと自分自身を見つめていた。

 

口をきつくつぐんでいた二人の口元はいつもの穏やかな気のいい彼の、彼女の口元に戻っていた。

 

カリグラがユリアさんの前に道を作る様に脇へ避けた。

 

来いってことかな?半分そんな気持ちでその空いた隙間に身を進めた。

 

ぎゅう

 

「あれ?」

 

ぎゅう

 

あらら?

 

どうやら二人に抱きしめられてるらしかった。

 

無言はちょびっと気まずいけど、どうやら通じたらしかった。

 

今日は運が良いや。

 

カリグラは俺よりも結構背が高いから熊に包まれてる感じで暖かい。

 

ユリアさんは…泣いてる⁉︎。やっぱり少し泣き上戸みたい。

 

ユリアさんは背が俺より少し低いけど、大差ないから抱き合うみたいになってしまう。

 

色々当たっててとてもアッタカイです。はい。

 

カリグラが微かに鼻を啜った。踏ん切りがついたみたいだ。

 

 

「…ありがとう。また貴様に救われたな…。一度目は月の誘いから余を救い明君たりえる機会をくれた。二度目は愛しい妹と姪へ取り返しのつかぬ罪を負わずに済んだ…。余は、今日確信した!やはり、其方が余に与えられし真の友なのだ。」

 

「お、大袈裟だなぁ…。(か、カリグラどうした?お前そんなにロマンチストだったか?)」

 

「大袈裟などではない!…余は其方の助言にのみ従おう。」

 

「お、おうっ。」

 

「ネロのことを、どうか其方に頼みたい。其方に導いて欲しいのだ!」

 

「あぁもぅ…だからそうすぐに熱を上げるな!落ち着けカリグラ!確かにお前の気持ちは嬉しい。」

 

「真か⁉︎」

 

「あぁ勿論本当だ。」

 

「では、何か不服があるのか?其方ならば誰よりもネロを健やかに育てられよう。余は確信しているぞ。」

 

「…しかしだなぁ。そういうのは母親の、ユリアさんが認めるもんだろう?なぁ、ユリアさん?」

 

押しが、というより俺に対する推しが強くなったカリグラの言葉はもちろん嬉しい。

 

だがネロのことを真に思えばそう簡単にもいかないはずだ。

 

故に、ここは少し前に復活したばかりの未だ目尻に赤みが残る実母であるユリアさんに保護者視点で意見を貰うべきだろう。

 

「ユリアさん?」

 

…おかしい。ユリアさんが俺の顔を見て顔を赤くした。

 

ついでに言うと俺に抱きついたままにカリグラにコソコソ話だと⁉︎

 

…なんだこの兄妹(困惑)

 

「うむ!うむうむ!珍しく意見が合うではないかユリアよ!」

 

「えぇ!兄上も話がわかる様になられた様で何よりですわ!」

 

さりげないディスりを華麗にスルーしたカリグラは俺から一歩離れて向き直ると堂々と宣言した。

 

いや…ユリアさんは離れないんかい。

 

「汝、ケルクヌブス・シュルカヌスをネロの教師長に任ずる!!公私に渡りローマ帝国の宝ネロを大器に育て上げよ!ローマ帝国第三代皇帝ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスの名の下に命ずる!!」

 

「頑張ってね♪シュルカヌス♡」

 

……ハッ⁉︎気が遠くなっていた!

 

…クォレハ…イカンナ。

 

イカンナというか遺憾な結果になってしまったな。

 

ま、言い出しっぺといえばそうだしなぁ…。

 

…"信頼の証"と、受け取るか。それに、ネロの可愛い時間を人一倍見ていられるって事だしな。

 

よーし!ならば俺も宣誓しようではないか!

 

 

「その大命このケルクヌブス・シュルカヌスが確と承った!カリグラよ、今回ばかりは真面目に働くから安心しろ!」

 

「ふっ…ハハハハハハッッ!愉快だ!そうだ、そうでなくては!…ふふふ。うむ。頼んだぞ!」

 

「任せておけ!義務教育は多分終了してると思う!」

 

「ギムキョーイク?なんだそれは?」

 

「あ、いやーなんでもない!それより、ユリアさんも。俺なりにネロに出来ることは全てやるつもりです。どうか俺にネロを育てさせてください!」

 

どれだけ信頼されててもネロの母親はユリアさんだ。

 

なんだかんだいってもネロのことを一番に心配しているのはユリアさんだ。

 

どうか、俺にあの子を育てさせてください。

 

ケジメはしっかりしたい。

 

「え⁉︎…け、結婚?そ、そんな…私には亡き夫が…でも…そうですよね!ネロにも父親が必要ですもの!私ならいつでも大丈夫ですわ!えぇ!」

 

……ケジメはしっかりと、だな!

 

かくかくしかじか。

 

「お、オホホホホ!そ、そーいうことでしたの⁉︎あらあら私ったら早とちりしてしまいましたわ〜。ネロのことなら貴方が最適任であると私も強く確信していますの。どうか、ネロを、私の娘のことをよろしくお願いします。」

 

ほら!やっぱり良いおかぁさんじゃないか!

 

「……あの〜先程の話は、私いつでも待ってますから。」ボソッ

 

わ、わぁぁ…ユ、ユリアさん、スッゴイ変わりようだなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

まぁ、こんな感じで俺はネロの実質的な養育者になったわけだ。

 

それでー、今まで何やかんなあったせいで、ヤッパリ直ぐにはカリグラもユリアさんも仲良しこよしに戻れる感じじゃなくってね。

 

結局3年後の予定を前倒しして、早速ネロの専任お世話係になったわけですな。

 

赤ちゃんの時抱っこして以来2年くらい経ってたから結構おっきくてね、すぐに育つんだなぁ、あっという間だなぁって思ったなぁ。

 

それからはずーっとつきっきりですな。

 

それで恐ろしく懐かれてねぇ〜。

 

 

え?甘やかして育ててないだろうな?

 

 

…だって可愛いんだもん。甘やかすよ、そりゃ。

 

ベッタベタというかデッロデロでしたな。砂糖の量で例えるなら。

 

まぁ、物心つく前からずーっと俺の顔見て育ったからね。当たり前かもしれませんな。

 

だから多分ネロからしたら…

 

ーーーーー

 

 

 

「俺は自分のパパ的な存在だったんだろうな!!」

 

 

 

ーーーーー




次回 sideネロ
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