ご機嫌よう。
拙僧、いや…ワタシの名は極運坊崇勘という。
なぜ言い直したかというと、ワタシは自称僧侶ということでな。
実のところは、酒も飲む、肉も喰らう、女も男も見境なく好む、妻もいる、複数いる、息子も娘もいる、これまた幾らもある、金も必要だが名誉もくれると言うならもらう、そんな一流の生臭坊主なのだ。
自分からは決して行かぬが。
悲しいかな。
ワタシは死ねなんだ。
何故か?
相知らぬ。
ワタシの名前というものも、今名乗ったものをいつから決めて名乗り出したのかサッパリ覚えておらなのだ。
ワタシは死なぬのではない。
ワタシは死ねぬのだ。
幾度となくこの身に降りかかれば、流石に愚かなワタシも気づいたよ。
もう…どれだけの年月を生きたらう。
どれだけの世界を廻っただろう。
幾度も平穏無事を求めて、山中へと罷るのだがその度に厄介事を背負って女子が男子かが倒れとる、待っとる、出迎えに来る始末だ。
助けなければ良いだろうって?
だがのぅ…。
助けたり、後についていって、お疲れ様でしたお帰りくださいなんてことはないのはよーくよく理解してるよ。
けれどな、ワタシの身体は思う通りに動くのだ。
不思議なことに、その後が問題だ。
放っておいても何故だかワタシのお陰になるんだわ。
こりゃぁおかしい、と思うわけだ。
しつこいくらい、それこそ断るさ、弁明するさ、嫌われようと試みるさ。
好かれるんだよ…えぇ?…おん。
そんなんだよ…訳がわからん。
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最初に目覚めたのはいつであろうか。
よもや千年、万年では到底足りない時を過ごすことになろうとは。
最初が最後の平穏であった。
現代日本。
そこに生まれ、様々な文化とネットに囲まれて育った。
何故か父も母もいない家であった。
物心つく頃には見えない母がワタシを導いてくれた。
母は声しか聞こえぬ存在であったが、ワタシを心底溺愛してくれていたというのが今ならよくわかる。
永く、永く生きたおかげで、ワタシを愛してくれるヒトとも沢山逢えたからな。
だが、幼少の平穏を最後にワタシには常識が立ち塞がった。
父も母も形あるものがそばにないのは、誰が見ようとも異様であった。
生きて育ったのは奇跡以上に得体の知れぬ怪異であろうな。
故に、ワタシはお坊さんになることにしたわけだ。
信心深さならワタシの右に出るものもあるまいて。
なにせ生まれた時から神秘的な声、心中の母と共にあったのだからな。
学校に行こうかとも思ったが、母は行かなくて良いという。
ワタシも怖くはあったから、行くことは終ぞなかったな。
暫し一人ぼっちで母の声から学問を習った。
家の中で母の声との学問は、案外寂しくなかった。
10年も母から学んだころ、ワタシは僧になった。
うむ。自称である。
だが、世のしがらみに囚われることだけは我慢しがたかったワタシにはこの立場ほど安泰に思えるものはなかったのだ。
自称というくらいだから徳がさぞかし高いのだろう。
そう思われる御方々はうつけか何かであろうな。
ワタシは何も知らずに、日頃随分運が良いことを母がいい含めてくるのでそれをそのまま僧名にした。
それがたまたま極運坊であっただけである。
外に出るように言われたのは自称坊主の17の誕生日であった。
都会の歩き方も存ぜぬワタシは、母の声に導かれるままにゆっくりと生家?を後にした。
そして、家の扉を開け放つと眩しさに目を瞑った。
コレが我が終わりなき定めの始まりよ。
目を開ければ、すっかり空気が違うのだ。
あれはどこであったろうな。
最初の世紀は古代であった。
…あぁっ!そうだそうだぞ!思い出した!
古代ローマであった。
あの日あの時、ワタシは南無南無ボウズ=ライフを始める前から奪われたのだ。
無念。
しかして、ワタシの愛と栄達の日々が始まった。
誠に遺憾であるがワタシの求めた平穏だけは与えられることが無かったがね。
さてさて…"彼女"、もといワタシの最初の"妻"との出逢いを話そうかというところで少しお休みとしようか。
なにぶん疲れた。
ん?"彼女"のことかい?
…最初はわからなかったよ。
何たって、現代日本で脇ペディアで歴史に親しんだワタシはてっきり男だと思ってたんだから。
ま、事実ワタシは生まれ以外はすっかり世界と時空の転勤族になったわけだからね。
あの時の衝撃ったらないのよ。
正直いうとね、知ったのは結ばれた時なんだ。
コレさ、未だに言うと怒られるんだよ…あはは。
忘れもしない。
結ばれた時、彼女がはっきり言ったんだ。
「余の伴侶となることを泣いて喜ぶがいい!この、ローマ帝国第五代皇帝ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスが貴様の妻となるのだぞ!!」
ってね…。
あらゆるものを運で拾う男、彼に付き纏う豪運さえ霞む極運はなんとアフターサービスまで完全保証である。
まさに世界観の転勤族となることを強いられた彼は永く生きる間に、これまでの記憶の中から目的の人物や世界を強く念じた上で目を瞑り、今一度開くとその世界へと再び訪れることができるという能力が、運良く身についていることがわかっている。
基本、一つの世紀に1人のヒロインです。