みなさんはクリスマス・イブを誰と過ごしましたか?作者は家族と一緒にチキンとケーキを食べてました!
年内の投稿は今回で終わりです。また来年もよろしくお願いします!
第8話
『ファデュイが天空のライアーを狙っている』
その話を聞いたのは偶然だった。モンド城の噴水広場をよく彷徨いているファデュイの使節であるミハイルとリュドミラがコソコソと喋っている姿を見つけ、聞き耳を立てれば天空のライアーをバレずに盗めるのか話していたのだ。生憎この2人は実行部隊には加わっていないようだったので詳しくは分からなかったが。
“天空のライアーには風神バルバトスの力が少ないものの残っている“とウェンティが前に言っていた。それが目的なのは明白だろう。龍災への干渉が出来ない今、奴らが手に入れられる唯一の風神の力だからな。大方、最後の手段として強引に奪いに来るんだろう。
ただ天空のライアーを盗む為に計画を練るならば奴らがモンドにいる間、滞在しているゲーテホテル内はまずありえない。ファデュイには悪評が絶えず、故にオーナーであるゲーテやスタッフ達も注意は怠っていない。他の場所だとしてもモンド城内は騎士団が目を光らせてる以上1ヶ所に集まれば怪しまれるのは確実だ。
つまり……実行部隊が計画を練っている場所は『モンド城内にはない』と考えた方がいい。その考えに行き着けばやる事は決まっている。
奴らが隠れ家にしている場所を絞ればいいだけだ。
「……という事でだ、最近ファデュイの奴らが城外で彷徨いてるのを見た事はねぇか?」
「ファデュイの奴らか~。俺は見てねぇなぁ」
「えっと……囁きの森では見た事がないですね」
まず騎士団の巡回ルート近くに隠れ家は作ってねぇ。その逆を突くという可能性はあったが、ジンからモンド城外の巡回ルートの配置表を借り、その道を巡りながら周囲の気配を探った結果隠れ家は見つからなかった。誰かがいるならそこにモヤモヤ~とした感覚がするはずだからな。
そして巡回ルート以外の広範囲を探すとなればそこに足を伸ばす人々を頼ればいい。冒険者達は依頼でモンドの様々な場所に赴く。隠れ家があるならば、そこに食料や物資を運ぶなどの役割を持った使節がいるはず。その姿を誰か目撃していないか情報を得る為、俺は冒険者協会支部に十数人の冒険者達を集めたのだ。もちろん部長であるサイリュスから許可を貰い、ファデュイに気付かれないよう外にいるあいつには自然を装ってもらってる。
「私も食材探しで遠くに出掛ける事はあるけど、彼らを見た事はないわね」
「ここに来る前、ティミーに話を聞いてみたけど昼間城門から出ていくファデュイは見た事がないって言ってたよ」
「いや、そもそも城門には昼夜関係なく西風騎士がいるだろ。出入りしてるファデュイがいれば怪しまれるって」
……食料や物資などを手に入れるにはこの辺りではモンド城しかない。狩人達が暮らす
にも関わらずモンド城を出入りしている使節がいないという事は……何かしら見つからないカラクリでもあるんだろうか?
「けどアレンさん。ファデュイが隠れ家を作ってるって証拠はないんだろ?もしかしたら裏をかいてくるかも……」
「ないな。城内で話して騎士団に勘づかれれば計画は一瞬でパーだ。奴らがそんなリスクを犯すとは考えづらい。絶対に隠れ家をどこかに作ってるはずだ」
ミハイルが口を滑らしたのは別として、だ。確かに“隠れ家を作ってない“という可能性はあるが、モンドのみんなから信用も信頼もされてない奴らだ。実行部隊が疑われないよう隠れながら動いている事は確実と言っていいだろう。
「でも誰もモンド城の外でファデュイを見てないんじゃあな」
「うん……」
「ああ、天空のライアーを狙うなんてあいつららしいけどよぉ」
「ふふふ……どうやらお困りのようね、共に世界の真実を追い求める同胞たちよ」
コツ、コツと床に足音を立てながらこちらへ歩いてくる女の子が見えた。冒険者達が左右に分かれて俺の方へ通すが、彼女も冒険者協会の一員だ。ただし肩書きは冒険者ではなく調査員。14歳で冒険者協会に入り、その後たった1年間で活躍の場を広げ、今では冒険者協会の新星として多くの人達にその名を知られている。
金色の髪をなびかせ、左目に「断罪の目」を持つ彼女は後ろを飛ぶ従者である鴉を引き連れて俺の前で立ち止まった。
「よぅ、フィッシュル。来てくれたか」
「光栄に思いなさい、我が断罪の騎士アレン。貴方の召喚に応じこの断罪の皇女が降臨を果たしたわ!」
フィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードット。幽夜浄土の主、千の宇宙を跨がってきた断罪の皇女────という設定を持つ“フィッシュル皇女物語“に出てくる登場人物と自身を同一視してる彼女の名はエミ。小さかった頃、冒険者の両親は忙しさのあまり彼女の相手をなかなか出来ず、気付けば大きくなった今もフィッシュルと名乗ってる。
だがここは自由の都、彼女が誰であろうと否定するつもりはない。昔も今もそれは俺達の間で変わらない事だ。
「お集まりの時間に間に合わず申し訳ありません、アレン様。グローリー様が荷物を無くしてしまったと困っていた為、お嬢様が一緒に探すお手伝いをしていたのです」
それとフィッシュルの眷属である喋る鴉、オズ。“フィッシュル皇女物語“に出てくる巨大な鴉の王・オズヴァルド・ラフナヴィネスから名前を取られ、主人の為に色々と尽くしてくれてる。フィッシュルの前に神の目と一緒に突然現れた理由は不明だが、彼女の願いが強く関係してるのは分かる。オズがいなければフィッシュルは今頃暗く沈んだ人生を歩んでいたと考えると、オズがいてくれて良かったと思うし。
「……ふん、未知なる世界で彷徨い続ける断罪の従者に手を差し伸べただけよ」
西風騎士団団長ファルカの遠征に同行していった西風騎士グッドウィンを恋人に持つグローリー。彼女は生まれつき盲目で目がまったく見えない。故に荷物を無くしても探すどころか場所さえ分からなかったのだろう。そこをフィッシュルが助けてあげたって事か。
「そっか。ならグローリーも喜んでただろ」
「わたくしの忠実なる眷属の千里をも見渡す瞳からは何物も逃れられないわ。断罪の皇女の祝福に感謝し、その身を幽夜浄土に捧げる密約を交わしたわ」
「お嬢様、わたくしにそのような力はございません!」
フィッシュルの調査員としての強み、それはオズの存在だ。鴉であるオズは空高くから偵察・観察が出来る他、喋らなければ見た目はただの鴉にしか見えない為、相手に警戒されにくい。それに加え、オズが“フィッシュルの目“と例えられるようにフィッシュルはオズと視界を共有できる上、力を発揮すればオズと同化する事も出来るなど多様性に優れている。
「うん、やっぱフィッシュルは優しいな」
フィッシュルの頭に手を置き、サワサワと優しく撫でる。小さい頃からフィッシュルが俺に自身の様々な物語を話す度に撫でていたから癖になってるのだ。他にもクレーはもちろん、幼い頃のアンバーなども褒める時によく撫でてたからうっかり他の奴にもしちゃうし。
「きゃふっ……わ、わたくしの頭に気安く触れるなど許される事ではないわ。でもわたくしに認められた騎士である貴方にはその権利を授けてる。だ、だからもっと撫でてもいいのよ?」
「お嬢様はアレン様に頭を撫でてもらう事がお好きと言ってましたものね」
「オ、オズ!?それは言わない約束でしょ!何で言っちゃうのよ!」
「おや、これは失敬」
おっ、久々にフィッシュルの素の声が聞けたな。まぁ、好きだって事は昔から知ってるが。だって撫でられると目を細めて気持ち良さそうにしてるし。
「あー……アレン?フィッシュルも呼んでたのか」
「ああ。フィッシュルにはお前らとは別に、ファデュイの使節が城外にいないか調べてもらってたんだ」
最初はアンバーに頼もうとしたが、最近龍災の影響でヒルチャールが城近くにまで迫ってきており、その対処に追われてるらしい。なら、とフィッシュルに頼んだわけだ。偵察騎士も調査員も肩書きは違うがやってる事は大体同じだからな。
「確かにフィッシュルは調査員として優秀だけど、探す場所も分からないのに見つけるなんて……」
「凍てつく国より舞い降りしモンドの平和を脅かす罪深き者達……彼の者達の巣窟は、既に突き止めたわ!」
「おっ、はえーな。流石はフィッシュル」
「ふふんっ♪」
よく見つけてくれたフィッシュルを褒め、また頭を撫でれば嬉しそうに笑った。
「……えっ?」
「ほ、本当にいたのか!?」
「フィッシュルちゃん、マジで嬉しそうだなぁ……」
「ああ……俺、あんな笑顔見た事ないよ」
冒険者達が戸惑う中、フィッシュルはいつもの眼帯に手を添えるようなポーズをとる。初めて見た時は左目を怪我したのか心配したが結局何もなく、「断罪の目」を隠す為って言ってたなぁ。曰く、隠さないと真実を見た負担と痛みに襲われるらしい。
「で、でも一体ファデュイの奴らいたんだ?俺達色々な所に行くけど、誰も見た事なかったんだぞ」
「いえ、正確に言えば初め見つけたのは
冒険者からの問いにオズが答える。その中の気になる言葉に俺はフィッシュルの頭を撫でる手を止めた。残念そうな顔を向けられたが、我慢してくれ。
「怪しげなフード……誰だったんだ?」
「あ、もう終わりなの……?っ、コ、コホン!」
「残念ながら正体は掴めませんでした。しかしその人物を私が追い掛けた所、僅かな食料と武器をファデュイの使節へと渡す姿を見たのです」
「その使節はどこに?」
「清泉町より南に進んだ先にある洞穴を隠れ家としているようです。お嬢様と共に調査を続けましたが、出入りをする様子は見られませんでしたね」
なるほどなぁ。その協力者が誰なのか、そもそもモンド人なのかはファデュイの奴らを捕らえて聞き出すか。そうとなれば行動あるのみだな。
「場所さえ分かれば後は俺に任せとけ。フィッシュル、オズ、みんなも集まってくれてありがとな」
「いや、それはいいんだが……アレンさん1人で行くのか?俺も最後まで協力するぞ?」
「私もお手伝いしたいです!」
「断罪の騎士アレン。この断罪の皇女もモンドの平和を取り戻す為なら、貴方への協力を惜しまないわよ」
ここに集まってくれた冒険者達全員がファデュイ捕縛の為の協力を申し出てくれた。だが全員で向かえば見つかるリスクは上がるし、ファデュイの連中が何をしでかすか分からない。それにこれはスネージナヤとの問題、冒険者よりも騎士団が解決するべきものだ。……まぁ、騎士団は龍災で手が離せないから俺がジンの許可を得て代わりに動いてるんだが。
「いや、冒険者協会も龍災の被害で人手不足だろ?そっちに足を運んでやってくれ。なぁ~に、心配すんなって」
「────というわけで、今この状況が起こってるわけだ。理解できたか?」
「ごふっ……なる、ほど……」
壁から瓦礫と共に崩れ落ちたファデュイのデッドエージェント……名前はザメンホフって言ってたか?何故ここが分かったのか、何故天空のライアーを狙ってる事がバレたのか問い掛けられた俺が答えてる間に戦いは終わりを告げた。
仮面は割れ、満身創痍になった体。折られて地面に突き刺さる自慢の刀。捕縛する事が目的の為、致命傷は与えなかったがしばらくはまともに動けないだろうな。
「わ、私の仲間は、どうしたっ……?」
「全員捕まえたに決まってるだろ」
洞穴の奥に辿り着くまではそんな時間は掛からなかった。守衛の殆どは背後からの奇襲で倒し、途中見つけた
「まっ、この計画書さえ騎士団に届ければお前らファデュイをモンドから追い出す事は出来るけどな」
「ちっ……」
ザメンホフの懐から奪った計画書には天空のライアーを奪う為の経路や雷蛍術師が教会の地下へ侵入する事……その他にも警備が緩くなる時間帯や城外の巡回ルートなどが書かれている。
「だけど聞きたい事がある。お前らに食料や武器を運んできた協力者は誰だ?あとここに書かれてる警備の事や巡回ルートは誰から聞いた?」
「そこまで、知ってるか……ごほっ。……いや、知ってるからこそここがバレたんだったな。まったく、使えないモンド人だ……」
……協力者はモンド人、ね。大体予想はつくが間違いというのもある。協力者の正体については
「城内にいる連中も、はぁ……そうだ……貴様には注意するようあれほど言ったのに……」
「お前らにとって俺は
モンドだけじゃなく各地でファデュイの企みをぶち壊したり、執行官を叩きのめしたりしてりゃあ警戒されないはずがないからな。
「ふん……だがこれで……貴様もモンドも終わりだろうな」
「あん?」
「この事態がシニョーラ様に伝わればいくら貴様とて、敵わないだろう?貴様に制裁が下される時が楽しみだ……!」
シニョーラ……ファデュイの幹部、11人いる執行官の第8位。『
ただ──────
「……本気で俺を殺りてぇなら執行官全員引っ張ってくるんだな」
「は……?」
「たった1人の執行官だけで俺をどうにかできると思ってんなら甘い考えだぞ」
まぁ、あいつらが11人揃ったとして協力なんてしないと思うが。そもそも全員が強大な力を有してるせいで味方同士で邪魔し合いになるだろうな。
「っ……ならシニョーラ様の為にも……モンドからファデュイが追い出されない為にも、覚悟を決めねばな」
ザメンホフが壁を手で押すとその部分のみが凹み、代わりに鉄製のレバーが奥から出現してくる。そのレバーを掴んだ奴は深く息を吸い、そして吐いた。
「この洞穴は……我々によって改造がされている。この緊急事態の対策も……準備済みだ」
「何する気だぁ?そのレバーで」
「我々の作戦は失敗に終わるが……貴様の作戦も、消えて無くなるだろう……」
消えて無くなる?──────まさかっ!?
「おい、やめろっ!ここにはお前の仲間がいるだろうがっ!」
「本望だろう……皆、覚悟の上でファデュイのメンバーになったのだから」
くそっ、間に合え……!
「ファデュイに……栄光あれ」
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤガシャンッ!
風の神をかたどった
龍と少年、それにこの不思議な結晶と分からない事ばかりの中歩いていると、西風騎士団というモンドを守る組織に所属する偵察騎士のアンバーに出会った。
彼女には怪しい人物と疑われたが、『騎士団ガイド』の規範により“見知らぬ尊敬できる旅人さん“としてモンド城に案内してもらえる事になったのだ。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤドオオォォォン……
「……えっ?」
「どうしたー?突然止まって」
今の音って……爆発?
「ねぇ、パイモン。アンバー。今何か、爆発みたいな音がしなかった?」
「そうか?オイラは聞こえなかったぞ」
「わたしも聞こえなかったかな」
「そう……」
パイモンとアンバーに尋ねるものの返ってきたのは真逆の答え。
私の聞き間違いだったのかな?……いや、確かにアレは何かが爆発した音だった。それに周囲では何も起こってない所を見るに、遠い場所で大きな爆発があったんだと思う。
「爆発……あっ、もしかしたらクレーかな?」
「誰だ?クレーって」
「わたしと同じ西風騎士なんだけど、まだ小さいんだ。だけどあの子、よく爆弾をおもちゃにしてて……いろんな場所を爆発させてるんだよ」
「爆弾をおもちゃ!?い、いいのかよそれ?危なくないか?」
「よくはないし、危ないけどクレーの爆弾が役立った時も多いからね。それにみんなクレーが大好きだから、取り上げたら泣かせちゃうって思うとね……」
つまりみんな甘い、と。でも他の世界でも爆弾を使う少年はいたし、爆発を操る少女だっていた事を考えるとそのクレーって子が爆弾をおもちゃにしてても、そこまでおかしくはない……かな?
「それじゃあ私が聞いたのはクレーって子が爆弾を爆発させた音ってこと?」
「たぶんそうだと思うんだけど……」
確証はないけれど、そういう事にしておこう。仮に別の原因があったとしても私達に確認する方法はないし、今はあまり気にせずモンド城を目指そう。
「おいっ、一体何があったんだ!?」
清泉町はモンド城郊外にある町であり、猪などの獲物を狩る狩人が住んでいる。その狩人達のリーダーであるドゥラフは爆発が起きた場所へ急ぎ、既に集まっていた狩人達に事情を尋ねた。
「そ、それが突然ここの岩山が爆発したみたいで……詳しい事は何も分かってないんです」
狩人の1人であるエレンが説明すると、煙が漂う瓦礫の山に近付いたドゥラフは何かに気付いたのか顔を近付け、臭いを嗅いだ。その臭いは火薬。それが爆発の原因と判断しつつ、何故ここに火薬があったのか思案していると──────
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤピシッ……パキッ……
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤピシシッ……
「ん?何の音──────」
「っ、ドゥラフさん危ない!」
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤドンッ!!!!
瓦礫に小さなヒビが入り、その音にドゥラフが気付いた瞬間地面が勢いよく爆ぜた。狩人達が間一髪でドゥラフを後ろへと引っ張った事で彼が巻き込まれる事はなかったが、間に合わなければ瓦礫に潰されていただろう。
……ちなみにドゥラフを助ける事に集中していた為、誰も見ていなかったが瓦礫の中から大きな
「な、何だこれ……お、檻……?」
「お、おい!中に閉じ込められてるのって、ファデュイじゃねぇか!?」
「何だと!?」
地面へと落ちたのはファデュイの使節入りの檻。全員が気を失っており、中には手足を縛られた者もいるなど状況が理解できないドゥラフ達は困惑するばかりである。
「
状況を唯一知っている人物はただ1人。瓦礫の中から出てきたアレンは口に咥えていたデットエージェントのザメンホフを地面へと放り投げる。爆発のすぐ側にいた彼はボロボロだが、同じく側にいたアレンは服が少し焼き切れているだけで傷らしき物はない。頑丈さやタフさも普通とはまったく違うのだ、“元モンド最強“は。
「アレン!?どうしてお前がここに!?」
「お、ドゥラフじゃねぇか。実は──────」
「……なるほど。ここにファデュイの隠れ家があったとは……」
「この辺りは僕達の狩猟区域からは離れてますからね……誰も気付きませんでした」
瀕死状態のザメンホフを狩人達に手当てしてもらってる傍ら、俺はドゥラフとエレンにここであった事を話した。手に入れた計画書は焼かれてほんの一切れ残っただけでもはや使い物にならない。隠れ家も失くなってしまったし、明確な証拠がないんじゃファデュイをモンドから追い出す事は出来ないな。あいつらが何か吐いてくれれば監視を強く出来るかもだが。
「しかしよく生き埋めの中から脱出できたな……しかもファデュイまで連れて」
「あいつらを閉じ込めたのが運良く檻だったからな。おかげで一度に助ける事が出来たんだ」
「アレンさん、そこじゃないですよ……」
大丈夫だ、エレン。分かってるから。普通じゃ助けられない、だろ?だから俺は強くなる為に普通じゃなくなったんだよ。
ㅤㅤㅤ「ガァァアアアアアアアッ!!!」
「っ!?この声……」
「う、嘘だろ……ふ、ふふ……風魔りゅっ!?」
エレンの言葉は言い終わる前に突然の暴風によりかき消された。その暴風の切れ目の遥か先に見えたのは──────トワリン。
だが今までとは様子が違う。怒ってるのは目に見えてるが、体から突き出た腐食した血の塊である結晶の数が多い。頭、首筋、背中、翼、尾に巨大な結晶が生えているのだ。おそらくアビスの奴らに何か仕込まれたんだろう。
怒りと苦しみがトワリンを蝕み続ければ彼は死んでしまうとウェンティは言っていた。あのままじゃ……本当に死ぬぞ。
「おい……あいつ、モンド城に向かってないか!?」
「な、何だと!?」
狩人の言葉にドゥラフが人一倍声を荒げる。確かにモンド周囲を旋回したトワリンはモンド城へと進路を向けてる。このままだとモンド城に辿り着くのは時間の問題か。
「おい、アレン!モンド城に急ぐぞ!あの龍にディオナが襲われたら……!」
「ドゥ、ドゥラフさん!?ファデュイはどうするんですか!?」
「お前達に任せる!そいつらが逃げ出さないよう見張ってるんだ!」
ドゥラフの指示に不安を隠せない狩人達。だがドゥラフがモンド城に急ぎたい理由は分かる。彼の1人娘であるディオナはキャッツテールの看板娘だ。つまり城内におり、そこにトワリンが向かってるとなれば心配するのは親として当然だ。
「……ドゥラフ、お前はここに残れ」
「だが!」
「お前は清泉町のリーダーだろ?風魔龍が現れた今、不安なのはここにいる狩人達だけじゃない。清泉町にいるブロックさん達がお前の帰りを待ってるかもしれないんだぞ」
「ぐっ……」
ドゥラフが唇を噛み締める。頭では分かってるんだろう、自分が今何をするべきなのか。伊達に長年リーダーをやってるわけじゃないんだ。
そしてしばらくして俯いていた顔を上げたドゥラフは俺の肩を力強く叩いてきた。
「分かった……俺の代わりにディオナを……モンド城にいるみんなを守ってやってくれ……!」
「おう、任せとけ。ファデュイの奴らは城の方が落ち着いたら戻ってくるから、それまで逃げ出さないよう見張っといてくれ」
「はい!分かりました!」
清泉町やファデュイの見張りを狩人達に任せ、俺はモンド城へと走り出す。しかしいつまでも走ってるわけじゃない、これじゃ時間が掛かりすぎるからな……うん、ここまで来れば誰も巻き込まれる心配はないな。
「
地面を雷脚で踏み抜き、その反動で砕け散った地面と砂煙を背景に俺は空高く宙を舞った。瞬く間にモンド城までの距離を一気に詰め、もう一度飛雷脚で跳べばモンド城まであと少しという距離である。
「トワリン……本気でモンド城を襲うつもりなら容赦しねぇぞ?」
他の国でもそうですが、なるべくメインストーリーにはゲームでは出てなかったキャラも登場させたいです。