元モンド最強騎士はそろそろ彼女を作りたい   作:白琳

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第9話の後書きに「ジンやディルックなどの実力はアビスの使徒、詠唱者と同等」と書いてましたが、少し前に削除させてもらいました。これを読んで感想をくれた方達には申し訳ないと思っています。
消した理由としてはゲームでもキャラクター達の明確な力量差がない事、そして今後の展開を考えての結果です。

ただそれぞれがどの位の実力を持ってるかは決めていきたいのでこれからは慎重に考えたいと思います。


第11話

「あ、ありがとう」

「いやいや、何で嬢ちゃんがお礼言うんだよ。助けてもらったのは俺の方だろぉ?」

「でもそれからは何も出来ないまま、逆に貴方に助けてもらったし……」

 

風神の像がある広場に着地し、アンバーには頼んだものの周りに怪我人等がいないか見渡してると少女からおずおずとお礼を言われた。確かにそうだが、彼女が俺を助けようと危険を冒してくれたのは事実だ。それを無下にする事は出来ない。

 

「そんじゃお互いに助けてもらった事で終いにしようぜ?助けてくれてありがとな」

「うん……分かったよ。えっと……?」

「あぁ、まだ名前名乗ってなかったな。アレン・グンヒルドだ、よろしくな」

「アレン……?もしかしてアンバーが言ってたモンドで一番強いっていう?」

 

アンバーの奴、ま~たそんな事言ってんのか。モンド最強の称号はファルカに返上したって言ってんのに。あいつが遠征でいないからって、俺がモンド最強って呼ばれてちゃダメだろ。

 

「“元モンド最強“な?利き腕があれば別だけど」

 

そう言って本来なら右腕がある場所に指を差す。左腕だけでも勿論戦えるが、全力を出すならやっぱり利き腕がねぇとなぁ。それに実際、実力は落ちてる。そのせいでまだ越えられてないとはいえ、昔は大きな差があったジンが実力を上げて段々とその差を詰めてきてる。

シスター・ゴテリンデも言ってたが、今は単独でトワリンを追い払える実力を持ってるからな。ただバルバトスを崇拝してるジンは眷属であるトワリンと戦う事を躊躇ってるけど。

 

「か、片腕だけで戦ってたんだ……」

「おう。慣れればどうにかなるもんだぜ。で?嬢ちゃんは誰なんだ?少なくとも旅人だろ」

「うん、私は蛍。モンドには生き別れた兄の手掛かりを探しに来たんだ」

 

なるほどなぁ。その生き別れた兄が空だとすれば蛍が空の妹なのは確定だが……ここから更に踏み込むのは後にしよう。あっちから駆け付けてきたアンバーと、この話を聞けば面白半分にかき乱しそうな()()()が来たからな。

 

「あっ、蛍!それにアレンさんも……2人共、無事だったんだね!よかった~」

「ごめん、アンバー。心配掛けて」

「ううん、怪我してなかったら安心だよ!」

 

蛍とアンバーが知り合った過程は分からないが、どうやら互いに気遣える程度の関係は築けてるらしい。その様子を見ていれば、蛍に近付くアンバーと共にやって来た青髪の男。

 

「────見事だったぜ。アレンの活躍に隠れがちだったが、巨龍に立ち向かったお前の勇気は称賛に値する」

 

そう言ってパンパンと手を叩き、蛍を褒めるのは西風騎士団の騎兵隊長のガイア・アルベリヒ。酒造名家「ラグヴィンド家」の養子であり、ディルックの義弟だが昔“お互いに本音を語り合った喧嘩“をしてからというものの、兄弟として接する姿は見ない。

ちなみに騎士ではあるが、事件を解決するやり方は決して『正しい方法』とは言えないものが多い。まぁ、本人はなんと言われようが全然気にしてないが。

 

「えっと……?」

「蛍、こちらはガイア先輩。騎士団の騎兵隊長なの」

「モンドへようこそ。アンバーから大体の話は聞いたぜ?血縁者を探してると聞いたが、訪れるタイミングが最悪だったな……」

 

“このような事態に巻き込んでしまって申し訳ない“と謝罪を告げるが、果たしてどこまでが本当なのか。モンドの客に対して『表』と『裏』を使い分けてるガイアは時には味方も平気で騙すから、嘘を見抜けなければ敵と一緒に痛い目を見る事になる。正直言って、敵味方共に厄介な存在だ。

 

「なぁ、ガイア。怪我人や被害はどうなってる?」

「軽傷者がいたが、ノエルと数名の騎士に手当ては任せてある。建物の被害報告はまだだが、大きな被害は見なかったな」

「大丈夫かぁ?ノエルにお願いしてよ」

 

ちょっとでも龍災に関わらせたら「困ってる人々の為に!」ってトワリン退治に向かいそうで心配なんだが。マジで。

 

「安心しときな。城外に出ないよう色々と任務を言い渡してきたからさ」

「そっか、ならしばらくはそっち優先で動いてくれるな」

 

事件が起きた時、騎士団が注意する1つがノエルの独断行動だ。あの子は誰かが困ってればその人の為に全身全霊を尽くす、正に奉仕の極みだ。故にこの前みたいな二次被害が起きないようノエルには大量の任務が言い渡され、事件から遠ざけられる。大聖堂に現れる不審人物(アルバート)の捜索や城内の掃除、落とし物探し等々……その役割はガイアに任されてる。悪く言えば雑用の押し付けだがノエルは不満1つ言わずにこなしてくれてる。優しく真面目な彼女だからこそちょっと心苦しいが、それが一番効果があるんだよなぁ。

 

「さて……蛍、でいいか?」

「うん。私もガイアさんでいいかな」

「ああ、構わないぜ。実は代理団長がアレンと一緒に風魔龍を撃退してくれたお前の姿を見ていてな。興味があるらしい。一緒に騎士団本部まで来てくれないか?」

 

ふむ……トワリンを前にしても動じず、かつ攻撃する度胸を見せた蛍に龍災を終結させる協力者になってくれる可能性でも感じたのか?ファルカに精鋭の騎士は連れて行かれてるとはいえ、俺とディルック、ジンがいれば戦力は足りてると思う。だが話を聞きたい蛍を近くに置いてくれるのはありがたい。

 

「いいよ。ここからは見てるだけ、というわけにはいかないからね」

「すまないな。では騎士団本部に案内しよう。アレンも一緒に来てくれるか?風魔龍に対抗するのにお前の力は欠かせないからな」

 

そう尋ねてくるガイアだが、俺は首を縦に振らない。騎士団本部に行く前に尋ねたい所があるからな。

 

「わりぃ、少し寄りたい所があるんだ。用事が終わったら向かうから、その間にジンにこれまでの経緯を説明しといてくれ」

「分かった。だが急げよ?()()()()()()じゃ誰もが不安を感じてるからな」

 

ガイアの言う通り……モンド城周辺を見渡せば、この風の都は現在暴風に囲まれてる。おそらくトワリンが残した手土産だろう。どうにかしないと、いずれはこの暴風に巻き込まれるかもしれない。ったく、面倒なものを置いていきやがって。

 

「ああ、分かってるって。「お~い」……ん?」

 

手早く用事を済ませてこようとガイア達と別れようとした所で、空から声が聞こえてくる。見上げれば遠くの方で白い物体がふよふよと浮き、こちらに近付いてきてる。

 

「あれってもしかして……パイモンちゃん?」

「パイモン?」

そういえば忘れてた……うん、私と一緒に旅をしてる大切な仲間(非常食)なんだ」

 

仲間という言葉に悪意があるような言い方だったが気にしないでおこう。そういえば上空で蛍がトワリンに攻撃してた時、彼女のすぐ傍になんかちっこいのが浮いてたような。それがパイモンだったか。

 

「ふぃ~、ようやく辿り着いたぞ……うん?何だかいつの間にか人が増えてるな。そいつら誰なんだ?」

 

小さな星座に似た軌跡を残しながら飛んできたパイモンが俺とガイアにそう問い掛ける。それにしても……パイモンみたいな種族は初めて見るな。容姿は子供だけど、空を飛ぶ事や頭上の冠など特徴が当てはまる種族がなかなか出てこない。

 

「ほぅ……不思議なマスコットを連れた旅人だったとは。ますます興味深い」

「誰がマスコットだ!?」

「マスコットっていうか……ペット?」

「おい!どんどんランクが下がってってるぞ!?」

 

……と考えてる内になんだかパイモンがガイアと蛍に弄られてる。何もなければ面白いが、状況を考えるとここで時間を掛けてる場合じゃないか。

 

「ガイア、とりあえずそっちは任せるぞー?俺の事はお前と一緒に簡単でいいから紹介しといてくれ」

「ああ、任されたぜ。お前もとっとと用事を済ませてこいよ?」

「おう。騎士団本部で待っててくれ」

 

蛍、パイモン、アンバーの事をガイアに任せて俺は広場から飛び降り、着地と同時に走り出す。ドゥラフとの約束はちゃんと守らねぇといけねぇからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャッツテール」の看板猫……じゃなくて看板バーテンダー、ディオナ。清泉町に住むドゥラフの娘であり、彼女は父親と同じくカッツェレイン一族の人間だ。その証拠に彼女には猫によく似た耳や尻尾が生えてる。

彼女がキャッツテールで働く目標、というか夢は『モンドの酒造業を破壊すること』だ。尊敬する父・ドゥラフが酒で酔っぱらって様々な醜態を見せた事により、ディオナは酒を目の敵にして“まずい酒の調合方法“を見つける為にバーテンダーをしているのだ。……まぁ、不思議な体質のせいで目標にはまだまだ程遠いが。

 

「んしょっ……よいしょっ……」

「お~い、ディオナ~」

 

倒れた掲示板を直すディオナを見つけ、声を掛ける。見た感じ、キャッツテールは被害をほとんど受けてないようだった。ディオナも怪我してる様子はなく、片付けを頑張っている。

 

「あ、アレン。……言っとくけど、今はお酒なんて提供できないからね」

「何だよ急に?んなこと分かってるって。いくら酒が好きだからって……」

「冗談よ、冗談。あんたがこんな状況でお酒を飲みに来るなんて思ってないにゃ」

 

冗談でよかった。確かに酒はエンジェルズシェアやキャッツテールでよく飲んでるが、そんな見境なしに飲むような奴だとは思われたくないからな。

 

「だけどならどうして来たの?風魔龍に襲われた対応であんたも忙しいんじゃないの?」

「今から騎士団本部に行くさ。ただその前にディオナが無事かどうか見に来たんだよ」

「……えっ?」

「まぁ、大丈夫そうで良かったぜ」

 

これで怪我なんてされてたら、約束したドゥラフに怒られちまう。……って、何でディオナは恥ずかしそうにモジモジしてんだ?

 

「えっと……それってあたしを心配して来てくれたってこと……?」

「ああ。ドゥラフが心配して……いでっ!?」

 

フシャーッ!と怒った猫のように俺の頬を鋭い爪で引っ掻いてくるディオナ。いやいや、怒るような事言ってねぇだろ俺は。

 

「ふんっ!やっぱりね、パパに心配されてたから来ただけなんだ!あんたはあたしの事、心配してないのね!」

「んな事は言ってねぇだろ。俺だってディオナの事は心配してたって。無事で良かったって思ってんだぞ?」

「うっさい!うっさい!」

 

シュッ、シュッと素早い動きで繰り出してくる爪をかわしつつディオナを宥めようとするが効果なし。猫のような気質を持つ彼女は気分屋だ。今はドゥラフよりも俺に心配してほしかったらしい。哀れドゥラフ、お前は俺の次だったようだ。

 

「ふぅ、ふぅ……あぁ、もう。いいわ、許してあげる」

 

しばらくディオナとのじゃれ合い……じゃなくて攻撃を避け続けてると息を切らした彼女が手を止めて溜め息をつく。どうやらいつまでもこんな事を続けてても意味がない事に気付いたようだ。

 

「おっ、ありがとさん。でもディオナの事は本当に心配してたんだからな?」

「わ、分かってる。あんたはそういう人だって知ってるし。その………あ、ありがとう」

 

恥ずかしそうにお礼を言うディオナの頭を優しく撫でた。髪の間から生えてる猫耳が手に触れる度に、ピクピクと反応してたまにディオナも震えてる。耳と尻尾は性感帯と聞いた事がある。特に尻尾は一番敏感で、前にディオナが酔っぱらいに触られた時は大暴れだったらしい。

 

「そんじゃ、俺はそろそろみんなと合流しなきゃなぁ。騒ぎが落ち着いたらまた飲みに来るからよ。ディオナの特製ドリンク、楽しみにしてるぜ?」

「うん、楽しみにしてるといいよ……“とってもまずいお酒“を提供してあげるから!」

 

う~ん、でもディオナがどんなにまずそうに作っても最終的にはうまい酒が生まれるんだよな。まっ、ディオナの特製ドリンクは後の楽しみにして、今は騎士団本部に急ぐかな。




ディオナはまた後でメインとして出したいな~。
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