リサがモンド周辺の元素の流れを調べてくれた結果、彼女曰く『元素と流れと地脈の循環が子猫ちゃんが遊んだ後の毛糸玉みたいになってる』というのが今のモンドの現状らしい。そしてその乱れた元素の流れを生み出したのはトワリンであり、モンド城を囲む暴風はその影響が形となって現れたものだという。
だが今のトワリンにそこまでの力はない。何故ならあの龍はモンドへの憎しみと悲しみを糧にして既に力を使い果たしてるから。でなきゃ成れの果てである魔龍になんてなってない。
ならばそんな強大な力をどこから得たかと聞かれれば奴は
「なら……
「おいおい、神殿は龍の力に悪い影響を受けてるかもしれないんだろ。そんな場所に俺は1人で行かされるのか?」
「わざわざいらん芝居すんなって、お前なら大丈夫だろ。……それに」
(蛍が何者なのか気になるんなら聞くだけ無駄だ)
(……ほぅ?)
(あいつには確かめたい事があってなぁ。だから今回だけは俺に譲れ)
俺もあの兄妹の事を全部知ってるわけじゃない。だが少なくともあの2人がこの世界のルールに囚われない
「アレン、わたくしが調べた限りだと神殿内には凶暴化した元素生物がいる可能性もあるわ。ガイアが強いとはいえ、状況が分からない神殿に1人で向かわせるのは危険が伴うわよ。単独なら貴方の方が適任じゃないかしら?」
「いや……北風の狼の神殿は俺に任せてくれ。モンドの危機を察した
“そっちも巻き込めれば楽勝だ“という意図を察した俺とジン、リサは納得するがあんまり接点のないアンバーやそもそも会ってない蛍は何も分かってないようで首を傾げてる。ま、情報をわざと流すとかして屋敷から引っ張り出すんだろうな。
「みんな、済まない……私も協力したいが今ここを離れれば多くの者を不安にさせてしまう。申し訳ないが、神殿の調査をよろしく頼むぞ」
傍に立て掛けてある
「はい!任せてください、ジンさん!」
「オイラ達に任せとけ!」
アンバーはともかく、パイモンまで自信一杯に応える必要はないと思うんだが。
「パイモンは戦えないでしょ」
「むっ!オイラだって戦えるぞ!例えば、え~っと……」
「……ま、蛍もパイモンもよろしく頼むぜ?活躍を期待してっからよ」
「おう!強いお前も驚くような活躍をしてやるぜ!」
「ハードルを上げないでよ、パイモン……」
「……それで兄さん。ファデュイの動きはどうだった?」
各々が神殿へと向かう準備をする為に散り、蛍にも戦える準備をするよう伝えて集合場所を門の近くにある鍛冶屋に決めた。今団長室に残ってるのは俺とジンだけだ。
「ファデュイの隠れ家は冒険者達との協力で見つけたが、生憎自爆で証拠は木っ端微塵だ。メンバーは全員捕まえて、今は清泉町のドゥラフ達に見張っててもらってるよ」
「そうか……なら暴風がなくなり次第清泉町に騎士を向かわせよう。何か計画を裏付ける証言を吐いてくれればいいんだが……」
証言……あぁ、そういえば。
「どうやらあいつらにはモンド人の協力者がいたみたいだぜ」
「っ!?な、なんだって!」
「だけど見当はついてるからな、まずはそいつに近い奴に探ってもらうさ。ジンも大体の予想はつくだろ?」
「……シューベルトか」
シューベルト・ローレンス。かつてモンドの頂点に君臨し、逆に今ではその横暴さが仇となって底辺にまで衰退した旧貴族ローレンス家。その末裔の1人であり、エウルアの伯父に当たる男だ。
あのおっさんは末裔の中でもローレンス家のやり方に囚われ過ぎてる。今でも“モンドは旧貴族である自分達が支配するべき“なんて古臭い考え方を信じてる位だ。しかもそれを実現する為に利用できるなら何にでも手を出すという厄介な性分を持ってる。
「分かった、騎士団でも彼の動向を調べてみるとしよう。と言っても、私達騎士団では彼を深くまで探るのは困難だろうが……」
「騎士団はファデュイの方に専念しとけ。シューベルトへの探りはエウルアに任せてみるからよ」
「……分かったよ、兄さん」
シューベルトに最も近い人物であり、尚且つこちら側の人物はエウルアしかいない。つってもシューベルトにとっては目障りな西風騎士団に入ってるエウルアも、あのおっさんからは悪く思われてるから探りを入れるのは簡単ではないが。エウルアの他にもかつてのローレンス家に否定的な末裔は少なからずいるが、信頼できるような関係じゃねぇし……どうにかエウルアに頑張ってもらうしかない。
「そうだ、ファデュイが狙っていた天空のライアーの件なんだが」
「あぁ、今んとこどうだ?教会は貸し出してくれそうか?」
ライアーの入手はウェンティが自信満々に引き受けていたが、“自身を風神バルバドスと偽った(本人なんだが)“せいでシスターに呆れられ、教会から追い出されたらしい。その日の夜には『ボクは本物の風神様なのに!』とやけ酒に付き合わされ、警備が手薄な夜中に泥棒に入ろうなんて言い出したからげんこつ落としてやった。
なのでライアーがトワリンを静める為に必要と教えてあるジンに協力を申し出たのだ。当然ライアーの使い道を話した所で教会側がすぐに納得するとは思えない為、“ファデュイがライアーを盗もうとしてるのでしばらくは騎士団本部で保管する“というのを表向きに代理団長であるジンに話を通してもらう事にしたのだ。
「ひとまずカルヴィン枢機卿と今年の民衆代表である酒造組合長のエーザイからサインを貰えた。明日にはライアーを騎士団の管理下に置く事が出来るはずだ」
「へぇ、よくカルヴィンがサインしたな」
「初めは断られたよ。でもバーバラとロサリアがカルヴィンを説得してくれたんだ」
「バーバラはいいとして……ロサリアが?」
珍しいな、あいつがそんな事するなんて。普段なら絶対にめんどくさいって言って関わってこないのに。
「兄さんが私の後ろにいると気付いていたな。それなら協力した方がよさそうね、と」
「ふ~ん」
ライアーを何に使うかは分かってないと思うが……本来は教会が保管するべき天空のライアーをファデュイの情報があったとはいえ、ジンが回収に動き出した事に違和感でも感じたんだろうか。それかモンドで事件が起こった時には大体俺が関わってるから予想でもされたか。
「とにかく天空のライアーが手元に来るならこの龍災を終結させんのも時間の問題だ。ディルックにも伝えて……そうだな、明日の夜中にでもエンジェルズシェアで作戦開始といこうぜ」
「酒場で話を?……いや、あそこはディルックがオーナーだったな。私達が集まったとしても怪しまれる可能性は低いか」
俺とディルックは小さい頃からの付き合いだし、ジンもあいつが騎士団にいた時から俺を繋がりにして交流がよくあった。ジンが副団長、代理団長になった事で顔を合わせる機会が減ったものの信頼関係が薄れたわけじゃない。
ま、俺達3人の他にウェンティもいるけどな。説明役のあいつがいないと話が進まないし。
「んじゃ、俺も蛍と合流して神殿に行ってくるよ。まずはあの暴風をどうにかしなきゃな」
「そうだな。よろしく頼む、兄さん」
「おう。兄ちゃんに任せとけ~」
「……あ、アレンさん」
「おっ!ようやく来たか!待ちくたびれたぞ!」
鍛冶屋に近付くとワーグナーと喋っていた蛍とパイモンが近付き、駆け寄ってくる。そんなに待たせたつもりはなかったんだけどなぁ。
「よぉ、アレン。武器の具合は大丈夫か?」
「おう、大丈夫だぜ。あんたの自信作だかんなぁ、壊れたりしたら一大事だろ?」
「……そもそもまともに振れる重さじゃねぇんだけどな」
確かに。何十種類もの素材の配合と何重にもよる岩元素の補強によりこの西風大剣は俺が振っても傷1つ付かないが、重さを度外視した事により普通は持ち上げる事すら不可能だ。力持ちなノエルでさえ持ち上がらず、鬼である
「そうだ、この子アレンの知り合いか?珍しい剣を持ってるから見させてもらったが……一体どんな素材を使ってるのかさえ分からん」
「珍しい剣?」
「ん、これの事だよ」
どこからともなく蛍の手に現れる片手剣。それは水色をメインにしており、持ち手部分にはひし形を思わせるような結晶が埋め込まれている。確かにあまり見ない独特な形をしてるな。
「
「へぇ。どこで見つけたんだ?」
「ここからずーっと遠い場所、かな」
ここから……というよりも、“この世界から“、か。
「なぁ、アレン!ガイア達はリサが魔法で風に開けた穴を通って行ったけど、オイラ達はどうするんだ?リサはアレンに任せれば大丈夫よって言ってたけど」
「ん?おう、任せとけって」
見た感じ、風龍廃墟を閉じ込めてる特殊な暴風に似てるがアレの劣化版ってとこか。ならここから出るのは簡単だ。
「よっ」
西風大剣を振り上げ、放った雷刃が暴風を大きく切り裂いて道を作り出す。しばらくの間はこれで無事に通れるだろう。
「さぁ、行こうぜ。着くまでの道すがら、お前の実力も知りたいしな~」
「えぇ……」
「な、なぁ。風って斬れるもんだっけ……?」
「斬れない……と思うけど」
「だ、だよな……」
((元モンド最強……ヤバすぎない……?))
ゲームではキャラクターには色々な武器を装備できますが、ここではそれぞれが自分の武器を持ってます。例としてはジンは西風剣、蛍は降臨の剣みたいに。
あと、西風剣は本来なら読みは「セピュロスソード」ですが、自分の中では世界観に合わないのでここでは「せいふうけん」と呼ぶ事にします。
追記(5/12)
“そっちも巻き込めれば楽勝だ“という意図を察した俺とジン、リサは納得するがあんまり接点のないアンバーやそもそも会ってない蛍は何も分かってないようで首を傾げてる。ま、情報をわざと流すとかしてアカツキワイナリーから引っ張り出すんだろうな。
↑この部分のアカツキワイナリーを屋敷に変更しました。