元モンド最強騎士はそろそろ彼女を作りたい   作:白琳

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ついに執行官全員が紹介されましたね!作者は今の所第3位の“少女“が気になってます!

※諸事情がありまして、後半のアレンとディルックの話を変更しました。その為、以前読んだ時とお話が異なっている為、もう一度読んでもらえると混乱がないと思います。申し訳ありません!


第17話

団長室に戻る道すがら聞いたが、リサとアンバー、ガイアは一足先に戻ってきたらしくアンバーとガイアはそれぞれ一旦、自分の持ち場に戻ったとのこと。リサは今後の対策を練る為にジンと共に話し合いをしていたようだ。

 

「(兄さんが言った通り、清泉町に騎士を数名派遣している。連行後は騎士団本部地下の独房に入れて1人ずつ話を聞かせてもらうつもりだ)」

「(ん、りょーかい)」

 

“こちらの件“とは無関係な蛍は巻き込まれないようジンと共に声を潜めて話をする。エウルアにシューベルトのおっさんを探ってもらうよう頼みはするが、あのデッドエージェントのザメンホフはまだ何か知ってるはずだ。それを騎士団に聞き出してもらうのだ。

 

「あら、帰ってきたのね。おかえりなさい」

「おう。そっちもお疲れさん」

 

団長室に入れば椅子に座ってるリサが手を振って出迎えてくれた。どうやらジンが途中で出ていって暇になってしまったからか、本を読んでいたようだ。膝の上に置かれてる厚い本がその証拠だ。

 

「ジンもお帰りなさい。……彼女に何か言われなかった?」

「前回と同じさ。風魔龍の対処を自分達に任せろと言われたよ」

「でも断ったんでしょ?」

「あぁ、当然だ」

 

リサは風魔龍の正体がトワリンである事、変貌した理由の1つである“風神バルバトスとモンドに裏切られたから“である事に俺を除けば初めて気付いた人物だ。ドゥリンの毒が要因になった事やアビス教団が関わっている事は書物にはない情報だからか知らないが、故に彼女も真実の一部を知り、他国の執行官であるファデュイの風魔龍退治には反対している。

 

「さっき言った通り、ガイアとアンバーは持ち場に戻ってもらったからこの場にはいないが……モンドの民に変わってお礼を言いたい。ありがとう、みんな」

「おう!これでひとまずは安全だな!」

 

俺達に頭を下げ、感謝の言葉を口にするジン。ここにはいない2人にも言ったであろう言葉を聞いて嬉しそうなパイモンだが、その隣では蛍が何か考え事をしてる様子だった。

 

「どうしたの、可愛い子ちゃん?何か悩んでるようだけど」

「か、可愛い子ちゃん?……えっと、実はみんなに見てもらいたい物があって」

「さっき言ってたやつか。何なんだ、見てもらいたい物って」

「うん、コレなんだけど……」

 

そう言ってさっきは躊躇っていたポケットから取り出したのは、“光を発する赤く濁った涙のような形状の結晶“だった。

これ……見覚えがあるぞ。確か前にウェンティが見せてくれたトワリンの──────

 

「これ……結晶の中に穢れた不純物があるわ。こんな物、一体どこで……?」

「実はモンド城に来る前に森で風魔龍と遭遇したんだ。その時に風魔龍が落としていった物だと思うんだけど」

「風魔龍と!?ぶ、無事だったのか?」

「うん、すぐに飛び立っていっちゃったから」

 

……今のトワリンじゃあ、例えモンド人じゃなくても他国の人間との区別は難しいはずだ。にも関わらず襲われなかったって事は運が良かったか。

 

「これが何なのかはすぐに結論は出せないわね……少し時間を頂戴、禁書エリアで資料を探してみるわ」

「分かった。リサ、この結晶の構造分析は君に任せた」

「ええ……ただ古代の文献にはあまり期待しないで。可愛い子ちゃん、その結晶を借りてもいいかしら?詳しく調べる為には実物が必要なの」

「いいよ。私が持っててもしょうがないし」

 

そう言って蛍は手の平の上で輝いてる結晶をリサの方へと持っていく。はい、と差し出される結晶にリサは手を伸ばしていき──────

 

「ほいっ、そこでスト~ップ」

「あ、ちょっと!?」

 

涙の形をした結晶にリサの手が届く事はなかった。俺が手首を掴み、すぐ後ろへと引いたからである。俺の突然の行動にリサはもちろん、蛍やジンも訳も分からず驚いた表情をしている。

 

「な、何よ急に?アレン、悪ふざけは……」

「やめとけ、()()に俺達は触れない方が身の為だぜ」

 

リサが言ってた不純物……それは俺達のように元素を操る者達とは決して相容れない“黒い血“だ。持ち主であるドゥリンの血を飲み込んだトワリンだからこそ、流した涙までにもその“黒い血“が蠢いているんだろう。もしもそれに俺達が触れれば間違いなく拒絶反応を引き起こす。

同じく元素を操る蛍には何故かまったく拒絶反応がないみたいだが……ま、異界からの旅人って時点で何が起こっても不思議じゃねぇか。

 

「兄さん、それはどういう……?」

「……貴方、もしかしてこの結晶が何なのか知ってるの?」

 

俺の手を振りほどいたリサは一転、落ち着いた声で尋ねてくる。ま、得体の知れない物を仲間が知ってれば気になるわな。

 

「こいつはトワリン……いや、風魔龍が流した涙の結晶だ。元素を操る者にとっては毒になる代物だよ」

「風魔龍が……?でも風魔龍は私達モンドの人々が眠ってる間にその存在を忘れた事に憎しみを抱き、牙を向いたのでしょう?涙を流すなんて……」

 

龍災の真実を伝えたのはジンとディルック、その2人だけだ。故にリサはトワリンがモンドを襲う重要な理由を知らない。だがここまで来ればリサやトワリンの撃退、神殿攻略に協力をしてきてくれた蛍とパイモンにも龍災の真実を伝えるべきか。本当はガイアやアンバーにも伝えたかったが……。

 

「風魔龍の涙……あっ、そういえば……」

「ん?どうしたんだ?」

「この結晶の事で不思議に思ってた事があるんだよ」

 

何か思い出したらしい蛍にパイモンが尋ねる。どうやらこの涙の結晶に関するものらしい。

 

「不思議ってのは?」

「この結晶を持ち歩いてた時……たまに悲しみや憎しみ、苦しみみたいな感情が結晶から感じられたんだ。アレンさんの言う通りなら、それって……」

「おそらく風魔龍が抱いてる気持ちがその結晶を通して蛍に流れ込んだんだろうな」

 

そんな事があるなんてウェンティは言ってなかったが、実際に感じ取った蛍がいる以上、本当なんだろう。ウェンティも知らなかった現象が起こったと考えるしかねぇか。

 

「憎しみだけじゃなく、悲しみや苦しみも?一体どうして……」

「なぁ、ジン。前にお前に渡した“森の風“、まだこの部屋に残ってるか?」

「あぁ、ここに置いてある」

 

悩むリサに真実を伝える為、ジンに龍災の真実を伝える時にも使った書物を本棚から抜いて持ってきてもらった。この本の最後の方に書かれた一節が龍災の真実を紐解く鍵になるのだ。

 

「何の本なんだ、それ?」

「数百年前の学者達がモンドの数多くの詩を集めて詩集にしたものだ。この本の一説に、風龍トワリンがあのような姿になった要因が書かれてる」

「っ、何ですって!?」

 

ジンの説明にリサが驚く。ま、図書館の司書ならこの本も読んでるだろうし、見落としてるわけじゃないとしてもこんな詩集に龍災の原因が書かれてるとは思わないよな。

 

「ま、この本にも書かれてるが一部の吟遊詩人は内容を誇張したり、捏造したりするから信憑性がねぇんだよな。それに書かれてるって言ってもトワリンに何が起こったかまでは分かってなかったからなぁ」

 

本をペラペラと捲り、目的のページを見つけるとそれを机の上に広げた。要因が書かれた一節を指差すとリサ、蛍、パイモンがその本を覗き込む。

 

「『風龍は勝利した。だが彼の牙が悪龍の喉を切り裂いた時、その毒血を呑み込んでしまっていた。悪龍の毒血は歪な黄金であり、山を崩し、大地を割るほどの力がある』……これって、もしかして……」

「あぁ、そうだ。これがトワリンが風魔龍に変貌した一番の原因。ドゥリンの毒血を呑み込んだせいであいつは苦しみだした。そして長い眠りにつき、目覚めたトワリンを待ってたのは人々から忘れ去られたという深い悲しみ。……そして痛み、苦しみ、悲しみで満たされた心にアビス教団がつけこんだんだ。“お前はモンドに裏切られた“、と」

「アビス教団が!?そんな……!」

 

ドゥリンの毒血、人々から消え去った記憶、アビス教団……様々な要因が重なった事で風魔龍が誕生した事にリサは驚きを隠せていなかった。モンドをただ憎み襲撃していたと思っていた風魔龍にそんな過去があったと知れば無理もないだろう。

 

「ねぇ、アレンさん。ドゥリンの事は少し書かれてるけど、アビス教団っていうのは?」

「テイワットの各地で暗躍してる集団だ。ヒルチャールを指揮して町などに襲撃をかけるなんて芸当も出来る迷惑な奴らさ」

 

おそらくアビス教団の奴らさえ関わってなきゃトワリンの誤解をもっと早くに解けたんだろうが……過ぎた事をとやかく言っててもしょうがないか。

 

「……ところで兄さん、その結晶は元素を操る者にとっては毒になると言ってたが……どうして蛍は平気なんだ?彼女も元素の力を操れるんだろう?」

「あん?ん~……蛍、何か心当たりってあるか?」

「ううん、私にはないかな」

 

どうやら蛍自身も知らないらしい。だがあの毒は元素というよりも神の目と反発し合ってる。蛍が元素を操れるにも関わらず神の目を持ってないという事を踏まえれば、何故彼女に毒が効果を発しないのか答えはすぐに出てくる。

 

「とりあえずこの結晶は蛍が持っといてくれ。俺達じゃあ、持ち余すからな」

「うん、分かった」

 

そう言って蛍は涙の結晶を再び自分のポケットにしまう。騎士団で預かってジン達が怪我するよりはひとまず蛍に預けておいた方がいいだろう。結晶を最終的にどうするかは、後でウェンティに聞いてみるか。

 

「では、これからどうするべきか話したい所だが……蛍、パイモン、いいかな?」

「?何かな、ジンさん」

「無理な願いではあるが……君達の力をもう少し貸してほしい。モンドに平和を戻す為、どうかよろしく頼む……」

 

そう言って頭を下げるジン。それを見ていた蛍とパイモンは驚いた様子で顔を見合わせ、再び正面に戻った時にはやる気に満ちた顔を俺達に見せ、

 

「うん、勿論だよ」

「おう!オイラ達も精一杯協力するぞっ!」

 

というジンにとって最も嬉しい言葉が返してきてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、これをエウルアによろしくな」

「はいっ、分かりました!必ずエウルア隊長にお渡ししておきます!」

 

騎士団本部に残っていた遊撃小隊の女性騎士に“シューベルト・ローレンスの動向を調べてほしい“と書いた手紙を渡し、俺はその場を離れる。外に出てる他の遊撃小隊の騎士達はドラゴンスパインにいるらしく、必然的に隊長であるエウルアもそこにいる。よって代わりに彼女に手紙を預け、渡してもらう事になったのだ。ちなみに手紙が入ってる封筒には細工がしており、氷元素のみに反応して開く為、万が一失くしても誰でも開けられるわけではない。

 

「あっ、アレンさん」

「あれ、蛍にパイモン。まだここにいたのか」

 

遊撃小隊が使用してる場所から出ると前を歩いていた蛍とパイモンに出くわした。確かジン達と話が終わった後、龍災を早く解決できるよう情報を集めに行くと言ってたはずだが。

 

「まずは図書館でリサと一緒に調べものをしてたんだ!でもめぼしい情報は見つからなかったな……」

「ま、リサも一緒で何もなかったんなら本から情報を得るのは無理かもなぁ」

 

リサのみが入れる禁書エリアならどうか分からねぇが、さっきあんまり期待はするなって言ってたし難しいか。

 

「……ねぇ、アレンさん」

「ん?」

「さっき話してくれた風魔龍が流した涙の結晶……本当はまだ話してない事があるよね」

「んー?何でそう思うんだぁ?」

「さっき気付いたんだけど、これ……」

 

そう言って再び取り出された涙の結晶。しかしさっき団長室で見せた時と違い、その結晶は水の如く澄んだ色をしていた。しかも結晶の中にあったはずの異物はまったく感じられず、まるで浄化されたかのような感覚だ。

 

「こいつは……蛍がやったのか?」

「ううん、それがこいつにも分からないみたいなんだ」

「うん……いつの間にかこうなってて」

 

近寄っても痛みは来ない……元素を操る神の目と相互反応を起こす“黒い血“は確かに無くなってるみたいだ。その結果がこの涙の結晶なんだろうが、トワリンを蝕む毒と同じこの“黒い血“が自然に消える事はないとウェンティは語っていた。つまり浄化された原因はこの結晶を手にしていた蛍にあるんだろうが……。

 

「……いや、考えててもしょうがねぇか」

「どうしたの?」

「わりぃが、俺から言える事はもうねぇよ。ただもしかしたら知ってるかもしれない奴を教えてやる」

「知ってそうな奴?そんな人がいるなら、何でさっき言わなかったんだよ?」

「色々と事情があんだよ、俺にも」

 

パイモンから最もな事を言われるが、細かい所にも気付くジンの事だ。あいつの前でウェンティの事を言えば、正体が風神バルバトスだと勘づかれるかもしれないからな。

 

「緑色の服を着た吟遊詩人を探してみろ、名前はウェンティだ。一応言っとくが、ジン達には教えるなよ~?」

「……うん、分かった。みんなには伝えないでおくよ」

「おう、そうしてくれると助かる。んじゃ、頑張れよー」

 

そう言って俺は歩き出し、2人に手を振りながら騎士団本部の玄関へと向かっていく。

 

「ん?アレンもどこかに行くのか?」

「あぁ、ちょっと用事があるんだ」

 

───────昔からの親友に、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤディルック・ラグヴィンド

 

ラグヴィンド家の現当主でガイアの義兄、そして俺の親友にして戦友。長い赤髪と夏でも着てる分厚い外套が特徴的な男だ。かつては西風騎士団の騎兵隊隊長として共に戦っていたが4年前に起きた事件をきっかけに騎士団を抜け、その後は色々あって現在は造酒業を継いでいる。

騎士団・造酒業共にその活躍とモンドへの貢献は亡くなった父親・クリプスをも上回るだろう。俺やジンと同じくあいつの一声がモンドに及ぼす影響は大きい。だからこそ今回の龍災解決の証人の1人になってもらうわけだが。

 

「……んで?ガイアがばらまいた情報を辿って北風の狼の神殿に向かい、そこで神殿を守っていたアビスの魔術師と対峙。そのあとガイアとは別行動で風魔龍の情報を集めていたってわけか」

「風魔龍は再び風龍廃墟に戻った様子だった。君から受けた傷、それから神殿からの力の供給が全て止められたとなれば、しばらくは大人しく力の回復を待つはずだと思うが……」

「ま、アビスの奴らが何もしなければな」

 

ディルックが所有する醸造所“アカツキワイナリー“から少し離れた土地に建てられたラグヴィンド家の屋敷。冷たく強い風が吹く星拾いの崖にしか咲かないセシリアの花で囲まれた庭園を始め、外装も内装も立派なものである。

その屋敷の応接室に通された俺はテーブルを挟んでディルックと龍災の終結に向けた話をしている。ここのメイドさんが用意してくれた紅茶を飲みながらな。うん、うめぇ。

 

「……以前、君から聞いた話では天空のライアーが今回の龍災を終わらせる手がかりになると言っていたな」

「あぁ、そうだな」

「本当にそんな事が可能なのか?アレは確かにモンドの至宝であり、風神バルバトスに連なる遺物だが、あの龍を静める程の力があるとは思えないが」

 

まぁ、元々天空のライアーはバルバドスがトワリンを召喚させる為に用いていた道具だからな。静めるのはウェンティであって、ライアーはその切っ掛けになるだけだし。

 

「まっ、俺の協力者を信じてくれよ」

「協力者……君にモンドの神話の一節を教え、天空のライアーが必要である事を示してくれたという人物か」

「あいつには明日の作戦会議に来てもらう事になってる。きっと俺達の力になってくれるはずさ」

 

もしかしたらウェンティの奴が酒場だからって酒を飲みたがるかもしれないが、その時は絶対に自分で払ってもらおう。……つってもディルックが見た目の問題から提供しないと思うが。七神って言っても今の姿は“成人前の少年“だからな、あいつ。




前に『コレイはコナのままで進めていく』と言いましたが、訂正します。やっぱり原作通りコレイの名前はコレイのままでいきたいと思います。
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