今回はロサリアとバーバラメインです!最初はアンバーメインだったんですが、彼女の祖父をどうしようかと考えて一旦止めました。多分次かそのまた次くらいに投稿します。
今回の文字数は1万越えと中々に長いです!
「あーあ、彼女ほしいなぁ……絶対に俺くらいの年齢の男ってみんな彼女いるって」
ちなみにあの赤髪と青髪の兄弟を除く。女性からの人気あるくせに片方は全然興味ないし、もう片方は誘われても軽く遊ぶ程度だし。
「ええっと……そんな事ないと思うけど、お兄ちゃん?」
「あるって。バーバラだって1人や2人くらい彼氏いた事あるだろ」
「いないよ!?」
「え、いないのか?」
俺が今いるのはモンド城で最も高い場所に建てられた西風教会の大聖堂。騎士団本部がある区域よりも上に位置する巨大な風神像が建てられた広場を抜けた先にある建物だ。
大聖堂の運営自体は騎士団がしているが、管理は風神バルバトスの信者達により行われている。義父であったサイモン・ペッチや俺の義妹であった牧師兼アイドルのバーバラ、それからヴィクトリアやジリアンナなどのシスター達だ。まぁ、義父さん……サイモンはファルカに連れられて遠征に行ってるから現在管理をしているのは実質バーバラとシスター達だが。
まぁ、それは置いといて。
「マジでいないのか?お前、そんな可愛いのによく周りが放ってるな」
「か、可愛いなんて……そんな、お兄ちゃんから……コ、コホン。だって牧師の仕事もあるし、アイドル活動も忙しいからね」
確かにバーバラが忙しいのは分かる。でもこんな可愛いんだぜ?(元)身内贔屓ってのもあるけど、みんなを元気にさせる為に頑張ってるとてもいい子なんだぞ。
「ところでお兄ちゃん、どうして大聖堂に来たの?」
バーバラがそんな疑問を掛けてくる。どうしてと言われても用事があるから来たんだよ……普段まったく来ないからそう言われてもしょうがないが。というかバーバラもバーバラで、隣に座って俺と喋ってていいのか?俺ら以外に誰もいないから大丈夫だとは思うけど。
「俺に彼女をくださいって祈りに来たんだよ」
「お兄ちゃん……」
「いや冗談だから。冗談だから「えっ、そこまで?」って感じで哀れんだ目を俺に向けないでくれ」
彼女ほしいのは本当だけど、それをバルバトスに祈る気はない。祈った所であの自由気ままな奴が叶えてくれるとは到底思えないし。……直接祈ったら彼女作り手伝ってくれないかな?変な目で見られるだけか。
「知り合いを待ってるんだよ。集合場所にここを選んだってだけさ」
「えー……集合場所にここを選ぶのは場違いな気がするんだけど……」
「……だから言ったでしょ。ここを選ぶなんてどうかしてるって」
「お、やっと来たか」
「えっ……ロ、ロサリアさん……!?」
後ろを向くと、こちらに歩いてくる西風教会のシスターの姿が見えた。その名はロサリア。人と比べると肌の色が薄い為、体調が悪いと誤解されそうだが元からそういう色なのだ。あと、ピン留めである髪飾りがついたウィンプルの裾が長いせいで勘違いされがちだが、本人の髪はショートカットである。
「何言ってんだ、ここ大聖堂。お前シスター。一番職場に近いじゃんか」
「……私がいつもここにいない事、知ってるわよね?おかげでヴィクトリア達から何度も仕事をするよう呼び止められたわ」
「すりゃいいじゃんか、仕事」
「嫌よ」
そして流れるような動作でタバコを取り出したロサリアは先端にライターで火をつけ、吸い始める。いや、少しくらい躊躇えよ。一応ここ、神様の目の前だぞ?本人はどっかでリンゴでも食べながら昼寝してるかもしれないが。
「あ、あの!ロサリアさん……」
「なに?」
「大聖堂でタバコを吸うのはやめてくれないかな?」
お、バーバラが注意に出た。シスター……聖職者であるロサリアが聖職者らしいのは格好だけだ。式典にも合唱にも出ないどころか、大聖堂に顔を出さずに仕事もしない。仮にいてもタバコを吸ってたりと聖職者としてはあまりにも異質過ぎるだろう。……聖職者としては、な。
「どうして?ここにいるのは私と君、それと彼だけ……私がこういう人間だって知ってる人しかいないし、誰にも迷惑をかけてないわ」
「そ、それはそうだけど……」
「それに君以外のシスター達はほとんど私の説得を諦めたわよ。声は掛けてくるけど一言二言言っておしまい。君も仕事が大切なら私に構ってないで────」
「ほいっ、しゅーりょー」
俺はロサリアの手からタバコを取り上げ、微弱な雷元素で一瞬で灰に変える。その灰すらも空気の中に溶けて消え、その光景をただ唖然と見ていたロサリアは俺を睨み付けてきた。
「……どういうつもり?私からタバコを盗って消し炭にするなんて、死にたいのかしら?」
「俺は聖職者じゃねぇからな。お前の仕事に対する態度をどうこう言うつもりはないぜ。だけどバーバラをいじめないでくれるか?」
せっかく注意してくれてるんだ。直す気はないだろうけど、せめて本人に言われた時くらいは素直に従おうぜ?
「いじめてるつもりはないわ。ただ私みたいなつまらない人間に関わってもロクな目にしか遭わないって事を伝えただけよ」
「ロサリアさん、自分の事をそんな風に言ったらダメだよ!」
つまらない人間ねぇ……?
「……なによ。人をそんな気持ち悪い目で見ないでくれるかしら?」
「ひでぇな、ただつまらなくはないだろって思っただけだよ。俺、ロサリアと酒飲むの好きだし」
「……そう。……そろそろ時間ね、行きましょ」
そう言って大聖堂の入り口となる扉へと体を向けるロサリアだったが────
「ロ、ロサリアさん!おに……アレンさんとどこに行くのかな?」
────突然バーバラが彼女を呼び止めた。2人きりの時は「お兄ちゃん」だが、他人がいる時だと「アレンさん」と呼ぶのだ、バーバラは。曰く人前でもそう呼ぶとジンと姉妹である事を周りに気付かれるかもとのこと。
別にジンを嫌ってるわけではないんだけどな。ただ気持ちの整理がなかなかついてないだけで。
「彼とどこに行こうと君には関係ないわよね?」
「あ、あるよ!だってお……ア、アレンさんは……え、ええっと……」
「はぁ……話にならないわね」
バーバラが俺との関係を兄妹以外で説明しようとするが何も浮かばなかったらしく、ロサリアは呆れて大聖堂の扉に手をかけて出ていってしまった。彼女がここから出ていってしまった以上、俺も出ていかないと置いていかれてしまう。
「バーバラ。俺、ロサリアを追いかけないといけないから」
「……ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「ロサリアさんとどこに行くの……?」
ロサリアから聞けなかったとなれば、同じく行き先を知ってる俺に聞くのは当然だろう。しかし変に首を突っ込まれるとロサリアが困るし、俺も心配する。だからバーバラには悪いが、ここは大人しく退いてもらいたい。
「そんな不安そうな顔すんなって。大丈夫、危ない所には行かねぇからよ」
「うん……」
……今は、な。
アレンとジン、バーバラは義理の兄妹だった。しかし両親の離婚でアレンとジンは母親と共にグンヒルド家で、バーバラは父親と過ごす事になってしまった。離婚の原因は互いの思想の違いだが、子供達まで離れ離れにさせた事にも理由がある。
まずグンヒルド家は代々当主が女性と決まっている。故に現在はフレテリカが現当主であり、いずれジンかバーバラが継ぐはずだった。しかし当主に必要な剣術の才能がジンにはあったが、バーバラにはなかった。その時点で次期当主はジンと決まり、母親は彼女を引き取った。
そしてもしも何らかの理由でジンが当主になる前に命を落とした場合、養子ではあるがジンと同等以上に剣術に長けたアレンを当主にする為に彼も引き取った。その時は掟を強引にでも変える事を覚悟して。
2人の、正確にはジンの育成に集中する為にバーバラは不必要だった。故に父親であるサイモンは彼女を西風教会の一員にする事を決め、自らの元に引き取ったのだ。
サイモンの言葉通りバーバラは西風教会の一員となり、みんなから愛される牧師になった。しかし彼女の中では姉に対する劣等感と憧憬が、反対にジンには妹に対する罪悪感と慈愛の感情が生まれ、大きくなってからもお互いがすれ違う結果となってしまったのだ。
そんなジンへの複雑な感情を持つバーバラの前に立ったのが義兄であるアレンだ。血の繋がりがなく、家族としての繋がりもなくなったにも関わらずアレンはバーバラに妹として優しく接してきた。アイドルの在り方に迷いが生じた時や姉との接し方に悩んだ時、バーバラが無理をして体調を崩した時も一番に気付いて心配したのもアレンであった。
元々グンヒルド家の人間ではない上にジンの代わりの当主候補に選ばれたとはいえ、バーバラとは性別が異なる。加えてジンよりも強いにも関わらず掟によって次期当主にはなれなかったのだ。劣等感を抱く事もなく、昔から今までバーバラはアレンを血が繋がっていなくても兄として尊敬の眼差しだけを向けてきた──────
(お兄ちゃんがロサリアさんと知り合いだなんて初めて知ったなぁ……ど、どういう関係なんだろう……?)
仕事を大聖堂にいるシスター達に任せ、いつもの牧師姿とは違った可愛らしい私服に着替えてバーバラはモンド城の町へと出た。「ロサリアさんに仕事をするよう言ってくる」と言えば彼女が諦めない事を知ってるシスター達は快く行かせてくれた。実際はアレンとロサリアの行き先、そして2人の関係を突き止める事が目的だが。
(もしも……つ、付き合ってたりしたら……ど、どど、どうしよう!?私の大好きなお兄ちゃんがとられちゃう!!)
バーバラはアレンの事が好きである。家族としてはジンの事も好きだが、アレンの場合は
俗に言う、ブラコンである。
(2人共、どこに行ったんだろう?)
珍しく私服姿である為、牧師姿に慣れ親しんでいるモンドの人々から気付かれる事もなく──疑問を抱かれる事はあるが──アレンとロサリアを探しながら騎士団本部や冒険者協会本部がある区域を抜け、バーバラは雑貨屋「モンドショップ」や記念品ショップ「栄光の風」などが立ち並ぶ商業区域へと足を運んだ。
色々な人達とすれ違いながら歩いていると、バーバラは人の集まりを見つけた。不思議に思い、よく見てみると2人組の男達が装飾品を売ってるらしい。どちらも見た事のない顔や店の規模が小さい事から、彼らがモンド人ではなく、外から入ってきた商人だと彼女は気付いた。バーバラも立ち並ぶ人達と同様、商品が気になって近付こうとしたが──────
(あっ、いた!)
人々の中からアレンとロサリアを発見し、バーバラは壁の影に咄嗟に隠れて2人の様子をこっそり見つめ始めた。
「へぇ……色々なものがあるんだなぁ」
「ああ!俺達は色々な所を旅してきたからな、珍しいもんばかりだろ?」
商人のおっさんの言う通り、確かにいくつか珍しいものかある。七国各地でしか採れない貴重な宝石を使った首飾りや耳飾り、魔物の強固な鱗を利用した腕輪など様々だ。触ってみても、よく出来ている事が分かる。
「なぁ、何か欲しいもんとかあるか?」
「……別に。興味ないもの」
「ふーん……おっ、これとか似合いそうじゃん。試しに着けてみろよ」
「だから興味ないって言ってるでしょ……ちょっと」
ロサリアからの返事に関係なく、素早く首飾りを彼女に付けてみる。ロサリアの髪色と同じ色の宝石が使われた首飾りであり、太陽の光で輝いている様が彼女によく似合っている。
「……これ」
「どうだ?」
「ええ、そうね……気に入ったわ」
使われている宝石は特に珍しいものではないが、売っている中ではこれが一番彼女と似合っていると思ったのだ。ロサリアも気に入ってくれたようで何よりである。
「なぁ、商人さんはどう思うよ?」
「ええ、よく似合ってると思いますよ」
「なら購入で」
俺はロサリアが首飾りの宝石部分を手に取って見ている間に商人に必要な分のモラを手渡した。そして払い終わった時に彼女は身に付けている首飾りが俺に支払われている事に気付いたようだった。
「……私、買うなんて一言も言ってないんだけど」
「でも気に入ってるだろ?」
「まぁ、この中ではね……いえ、そういう事じゃなくて……」
「いいじゃないか、
「誰と誰が……何ですって?」
うおっ、寒っ!ロサリアの奴、おっさんに勘違いされたからって氷元素で本当にこの場を凍らせるつもりかよ?そこまで怒るとか悲しいんだが……見ろよ、地面と店の柱がちょっと凍り始めてんぞ。
「え……あ……?」
「私と彼はそういう関係じゃないわ。そういう風に見えるなら、まず貴方のその目をつぶ─────」
「すまねぇな、商人さん。俺とこいつはそういう関係じゃねぇんだわ。そんじゃ、別んとこでも頑張れよー」
ロサリアが聖職者としては言ってはいけない不穏な言葉を言う前に彼女の口を手で塞ぎ、おっさんに謝りつつ俺達はその場を離れていった。
「おい~……勘違いされたからって脅さなくてもいいだろ?おっさん怯えてたぞ」
「脅してないわ。間違いを正してあげただけよ」
「だからってあれはねぇだろ」
(…………)
通り過ぎたアレンとロサリアの後ろ姿を見ながらバーバラは考えていた。恋人である事をあそこまで否定するという事は、ロサリアは兄の事が嫌いなのかと。しかしそれならば一緒に出掛けるはずがない。
だが本当に嫌いならば1つだけ矛盾する場面をバーバラだけが見ていた。アレンが首飾りの支払いを勝手に済ましている時、ロサリアはアレンからも誰からも見えない方向を向いていたが、隠れていたバーバラには偶然にも彼女の顔が見えてしまったのだ。
(ロサリアさんの嬉しそうな顔……初めて見たなぁ)
正確には口角が僅かに上がっただけだが、バーバラにはそれがロサリアの「嬉しい」という感情が表れた表情であると気付いた。普段から誰に対しても気怠げだったり、暗い表情を見せているからこそロサリアのそのような姿が見れた事に衝撃を受けたのだ。
(……お兄ちゃんがくれた物だから?だったら────)
バーバラは2人を追いかけつつ考える。しかしその後は2人を見失ってしまい、バーバラの尾行はこれで終了となった。結果、アレンとロサリアの関係がどのようなものなのかをバーバラは知る事が出来なかったのであった。
深夜──────誰もが眠りにつき、賑やかだった昼間とは反対に静かになったモンド城の裏門から荷車を引きながら出ていく怪しい2人組がいた。裏門から出ていったのは正門には西風騎士が常におり、逆に裏門は警備が薄いからである。
夜の外は危ない事やモンドの夜を駆ける「闇夜の英雄」という存在などに悩む2人であったが、何日も滞在して
だが「闇夜の英雄」の他にもモンドを影から守る存在がいる事を彼らは知らなかった。それが自分達の運命を左右するとも知らず。
「……そこの2人組、止まりなさい」
「「!!」」
モンド城を離れ、野外で過ごしている西風騎士グッドウィンの目からも逃れた2人は清泉町に繋がる道を進んでいる途中で背後から声を掛けられた。荷車を止めて緊張と驚きの顔で振り返り、声の持ち主を見つけて2人は安堵した。恐れていた西風騎士ではなく、西風教会のシスターだったからである。
「な、何だよあの時のかの……じゃなくて姉ちゃんじゃねぇか。こんな真夜中に何してるんだよ?」
「それはもちろん捕まえる為よ。モンドの民からお金を巻き上げた詐欺商人をね」
そう言い、ロサリアは2人組の商人を睨んだ。昼間、彼女から絶対零度の目を向けられた1人はそれに怯えて小さく悲鳴を上げる。
2人組の商人──────言う必要はないと思うが昼間アレンとロサリアが立ち寄り、首飾りを購入した商人達である。ちなみに現在、ロサリアは首飾りを身に付けてはいない。
「詐欺って……おい、俺達は何も騙しちゃいないだろうが」
「────騙してるだろ。嘘吐くといい事ないぞー?」
「うわああっ!?」
商人達のすぐ背後から突然声を掛けられ、振り向き様に腕を振るうも相手には当たらなかった。その相手の正体は商人達の頭上を通った後にロサリアの横へと着地した。
「……ちょっと。あの2人組を挟み撃ちにする予定だったでしょ」
「んー……まぁ、それでも良かったんだけどな。こっちの方が楽かなーって」
「……?」
アレンからの答えにロサリアが困惑している一方で、商人達は驚いていた。
「よーっす、おっさん。また会ったな」
「(っ、あの時の男……!?)お、おい、どういう意味だ?俺達が何を騙したって言うんだよ?」
「まっ、全部じゃねぇけどさ。これだよ、これ」
アレンが左手に掴んでいる物を見せる。それは荷車から取ってきたいくつかの装飾品であった。
「そ、それが何だって言うんだ?というかそれはうちの商品だ!返せ!それ1つ1つが何万モラもするんだぞ!!」
「何万モラね……まっ、確かに本当よく出来てるよなぁ」
「よく出来ている」。その言葉を聞いて商人達の怒号も動きも止まり、体が一瞬震えた。
「だ、だろ?そりゃ珍しい宝石で有名な彫金家に作ってもら──────」
「よっ」
アレンが装飾品の宝石を軽く握ると簡単に砕け散った。手を広げ、粉々に砕けた宝石を地面に落としていく。その様子を見ていた商人達は一気に青ざめた。
「今砕いた装飾品に使われてた宝石は七色のダイヤ、真実のサファイア、夢幻のスピネル……これらの硬度は結構高いはずだ。なのに簡単に砕けた。つまり?」
「売っていた装飾品は偽物って事でしょ。早くしてくれないかしら、残業はしないわよ?」
「いやいや、説明は必要だろ」
アレンがいくつかの宝石が偽物だと気付いたのは昼間ロサリアに似合う装飾品を探しながら装飾品を触っていた時。七国を巡り、冒険の中で色々知識を得た中には宝石が本物か偽物か判断する方法もあったのだ。
「にしてもよく考えたよ、偽物の中に本物も混ぜて売るなんて。どれも誰でも買えそうな値段のやつばっかだったけど」
「……そこまでバレてんならダメだな。おい!全員出てこい!」
商人の一声で茂みの向こう側や木々の裏から現れる男達。彼ら全員が投げナイフやハンマーを持っており、服装も商人とは異なっている。その服装は
「こいつらは宝盗団を辞めて俺達の傭兵になってくれた優秀な駒だ!たった2人殺すなんて造作もない!」
「聞いてもない事をよく喋るなぁ……自慢話か?」
「……手下は任せるわ、どうせすぐでしょ?私は商人達が逃げないよう見張っておくわ」
「おう、さっさとケリつけるぞー」
ロサリアはどこからともなく西風長槍を出現させ、アレンは西風大剣を出現────させる事なく、元宝盗団の傭兵達に急接近する。
「ぶっ飛べ」
神の目が紫色に輝き、左腕に電流が走る。左拳に雷元素を纏い、大きく振りかぶったアレンは一番初めに迫ってきた傭兵に狙いを定めた。
雷極術・
雷元素を纏った拳による強烈な一撃が傭兵の腹を貫き、一瞬で意識が吹き飛ぶ。しかしそれだけに留まらず、彼の体を通して背後に放たれた雷元素混じりの衝撃波が他の傭兵達を襲って吹き飛ばしていく。幸運にも残った傭兵達はいたが、次の瞬間には雷脚の一撃で一筋の光と化した仲間との衝突で散っていった。
「はぁっ……!?」
「ふっ、ふざけんなよ……!何だよあいつ!?」
商人達が瞑った目を開ければ傭兵全員が倒れ伏しており、中には顔から地面に突き刺さっている残念な者もいた。
西風騎士ばかりを注意していた詐欺商人達だがそんな生易しいレベルではない。怪物すら恐れる本物の怪物が商人達の目の前にいた。
「ん!?雷元素に隻腕、それにこの強さ……ちょ、ちょっと待て!お、お、お前っ!まさか元モンド最強の雷鳴騎士かっ!?」
「せ~いか~い。騎士団は抜けてるから雷鳴騎士ではないんだけどな。昼間名前言わなかったから分からなかっただろ?」
「そ、そんな奴に勝てるわけないだろ!おい、逃げるぞ!」
「逃がさないわよ」
慌てて逃げようとした商人の前にロサリアが立ち塞がり、西風長槍を構える。神の目が水色に輝き、ロサリア自身や槍の刃先から冷気が溢れていく。すると商人達の足は地面に固定されるように氷付けになってしまった。
「なっ……く、くそっ!」
「は、外れねぇ……!」
「私、残業はしない主義なの。だから早めに済ませてくれるかしら」
ロサリアが槍を振りかぶる。その高さの位置はちょうど商人達の首元と同じであり、これから起こるであろう自分達の残酷な死に方を察した商人が暴れ始めた。
「お、おい、やめろ!殺す事ねぇだろ!やめろ!やめてくれって!」
「……風神バルバトスの名において、死ね」
商人の救いの懇願はロサリアに無視された。ブォンッ!と振られた槍の刃が商人達の首を刎ね飛ばす──────寸前で止まり、2人は恐怖と緊張で意識を失って地面に倒れた。
「もうちょっと他に気絶させる方法ねぇのか?それ、絶対トラウマになるぞ」
「これが一番手っ取り早いのよ。それにトラウマになる位がこいつらには丁度いいわ」
ロサリアに商人達を殺すつもりは元々からない。もっとクズでどうしようもない相手ならば躊躇いなく殺す事もありえるが今回は命を奪う程の犯行をしたわけではないのだ。それでも西風騎士団の地下にある牢屋の中でしばらく暮らす事にはなるだろうが。
「モンドが好きなお前にとって、悪さされんのは許せねぇ事だもんな」
「……その事、絶対に誰にも言わないでよ」
「分かってるって。こいつら騎士団に連れてったらエンジェルズシェアで一杯飲もうぜー」
「……そうね」
人数が多い為、商人達が運んでいた荷車に気絶した男達を次々に放り込んでいくアレン。ロサリアはその様子を見ながら小さな声で呟いていた。
「バーバラ、この前はごめんな」
「ううん。大丈夫だよ、お兄ちゃん」
詐欺商人と元宝盗団の護衛共を騎士団の牢屋に叩き込んでから数日後、再び西風教会を訪れた俺はバーバラにその時置いてけぼりにしてしまった事を謝った。
「いや、それだけで済ますのはなぁ……なんか欲しいもんとかやってほしいもんとか、何かないか?」
「えっ?うーん、そうだなぁ……あっ、そうだ!前にお兄ちゃんが作ってくれたお料理が食べたいかな!」
「俺の料理?えーと……ああ、アレかぁ。うし、任せとけっ」
前にバーバラの「初公演記念日パーティ」で俺が作ってあげた激辛料理だろう。辛党なバーバラに気に入ってもらえたらしく、その時もまた食べたいって言われたっけ。璃月を回ってた時に
「ね、ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「あのさ、お兄ちゃんってロサリアさんとどんな関係なの?」
出た。俺がここ最近モンドの人々から一番聞かれてる質問が。
「なんだ~?バーバラまで気になんのか?」
「だ、だって最近気になるっていう人が何人かいるし……」
別にこの前のがロサリアの「見定め」に初めて付き合ったってわけではないんだが。いや、人前で一緒に行動したのは久し振りだからみんなにとっちゃ珍しいか。
「まっ、バーバラが考えてるような如何わしい関係じゃねぇよ」
「い、如何わしいって……そんな事考えてないよ!お兄ちゃん、変な事言わないで!」
「へーいへい」
……つっても俺もロサリアとの関係をなんつー言えばいいのか分からないんだよな。彼女からすれば俺はファルカ達共々『居場所を奪った父親の仇』と言える。しかし逆に彼女を『酷い境遇から救った救世主』とも言えるかもしれない。もしかしたらそのどちらでもないかもしれないが。
ロサリアをモンドに連れ帰る事を最終的に決めたのはファルカだが、最初に言い出したのは俺だ。その時は彼女の境遇を可哀想だと思ったんだろうが、本人の気持ちなんてほとんど考えてなかったはずだし。今はロサリアの氷みたいに冷え切った心を少しでも溶かしてやりたいってのが理由だが。
まぁ、つまり……俺とロサリアの関係は一言で言える程簡単じゃないって話だ。
「…………」
ロサリアは相変わらずの如く大聖堂から抜け出してエンジェルズシェアのカウンター席で1人
そんな時、酒場のドアを開けて入ってきた人物は近寄りがたいロサリアに躊躇いなく近付いていった。
「やぁ、どうも。まさかモンドで今話題の人物に会えるなんてな」
その人物とは西風騎士団騎兵隊隊長のガイア・アルベリヒ。その姿を見た同じ西風騎士は顔を背け、休日に戻る事にした。例えモンド城の見回り中や任務中であっても仲間の目をすり抜け、酒場を訪れる彼には何を言っても無駄だと判断したのだ。
「……そんな話題、すぐに消えるわ」
「いやいや、なかなか消えないと思うぜ?何せあの雷鳴騎士と教会のシスターが付きあ──────」
「それ以上言うなら覚悟を持ちなさい……これは警告よ」
ピキリ、と空気が凍ったような感覚に流石のガイアも苦笑いを浮かべつつ口を閉じた。バーテンダーのチャールズや他の客も寒気を感じたが、ロサリアから放たれる他を圧倒する不機嫌なオーラには何も言う事が出来なかった。
「噂は嘘だろうが、お前のアレンへのアプローチはどれも弱い。あいつは微塵も気付いてないと思うぜ?」
「……そうね」
「その首飾りだって誰が相手でも平気で渡す奴だからな。なんだったら、俺が上手なやり方を────」
「いらないわ」
「……そうかい。ああ、俺にも蒲公英酒を頼む」
ガイアがチャールズに注文をし、隣に座ってもロサリアは首飾りを見続けていた。
ロサリアはアレンに特別な感情を抱いている。しかしそれが何かなのかは本人もよく分かっていない。アレンから首飾りを貰った時、彼女の心の奥で遠い昔に失った“喜び“という感情が再び芽生えた事もロサリアには不思議な感覚としか思われていなかった。
ロサリアの伝説任務、まだゲームでは出てませんが主人公がモンド人ではない為、彼女の暗部としての仕事に付き合われそうな気がします。