元モンド最強騎士はそろそろ彼女を作りたい   作:白琳

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ゲームのメインストーリーは稲妻編が終わり、次はスメール編ですね。スメール編でコナが出てきてくれたら嬉しいです!

今回はアンバーがメインですが、コナの現在が分かったらアンバーと一緒に登場させたいです。


第4話

(かぜ)(つばさ)────それはモンドに大昔から伝わる由緒ある道具だ。名前の通り翼の形をしており、背中に装着して広げることで風を受け止め空を自由自在に滑空できる。

だが誰でも使えるわけではない。飛行にはある程度の練習が必要だし、免許制だから無免許で飛んでたら西風騎士団に捕まって処罰を受けるハメになる。例を出すと自宅の2階から飛び降りて怪我して1年間飛行禁止になったり、危険な方法で飛行を繰り返して自宅謹慎になったりとかだ。

 

そして今、俺の目の前にも違反をして西風騎士の取り締まりにより1週間の飛行禁止を言い渡された少女がいる。

 

「……てか取り締まる西風騎士が捕まるとか、本末転倒だろうが」

「だって急いでたんだも~ん……」

 

モンドのレストラン・鹿狩りのテーブル席に向かい合って座り、「ニンジンとお肉のハニーソテー」を沈んだ表情でハムハムと食べるアンバー。ウサギを彷彿とさせる赤いリボンも心なしかしょげてるように見える。

曰く、任務の開始時間に遅れたのが原因らしい。急ぐあまり城内の飛行禁止区域を飛んでしまった所を他の西風騎士に目撃され、任務終了後に処罰を言い渡されたようだ。

アンバーは西風騎士団に所属する唯一の偵察騎士だ。偵察騎士は騎士の中で最も風の翼を使い、アンバーも既に10回は交換していると聞く。しかしその風の翼が使えなければ行動範囲は狭まり、偵察騎士としての任務に支障が出る。故にジンは免停が終わるまでアンバーに休息を与えたようで、俺は今日アンバーに誘われて昼飯を一緒に食べる事になったのだ。

 

「ていうかアンバー……お前、今年に入って免停受けたのこれで何回目だ?」

「2回……さ、3回目かなぁ……?」

「しっかりしてくれ、飛行チャンピオン」

 

飛行チャンピオンとはアンバーがモンドで開かれた飛行大会で優勝した時に付けられた別名だ。前回のも含めて3年連続で優勝しており、飛行技術の腕前だけならモンドでアンバーに勝てる相手はほぼいないだろう。

 

「…………」

「えーと……ど、どうしたの、アレンさん。わたしの顔に何かついてる?」

「いやぁ……まさか俺が初めて試験官をやったアンバーが飛行チャンピオンになるなんて、あの時は思ってもいなかったなーって」

 

ディルックが騎士団を抜けてから少し経った頃に騎士団に入ったアンバーだが、当時はまだ飛行免許を持っていなかった。偵察騎士は主に風の翼を使って行動する。その為、アンバーには至急飛行免許を発行してもらう必要があり、俺は彼女の試験官を担当したのだ。思えば試験は全て一発合格だったな。

 

「それはわたしも同じだよ。アレンさんが飛行大会に出たわたしを懸命に応援してくれたから、わたしは諦めずに優勝できたんだって今も思ってるんだから」

「そりゃするだろ、応援。お前は俺の最初で最後のたった1人の生徒なんだから」

「ふふっ……そっかぁ」

 

何だ、アンバーの奴?何でそんなに妙に嬉しそうなんだ?別に誉めるような事言ってねぇけど。

 

「今年も出るのか?飛行大会」

「もっちろん!アレンさんはわたしが初めて出た飛行大会しか見てないもんね……あの頃よりもさらに成長して速くなったわたしの姿を見せてあげる!」

「おう。その時を楽しみにしてるかんな」

 

その時にまた免停になってたら呆れるしかねぇけど。

 

「そういえば……アレンさんはもう風の翼を使ってないんだっけ?」

「免許は持ってるけどな。1回壊れてからは使ってないぞ」

「でもそれなら外で動く時、どうしてるんです?高い場所に行く必要がある時とか遠い場所に行く時とか」

「どうしてるってそりゃ()()()()んだよ」

 

飛ぶんじゃなくて、跳ぶ。その方がわざわざ風域(ふういき)を探す必要はないし、風の翼使ってのんびりと滑降する必要もないからな。

 

「えっっ、跳ぶって……ジャ、ジャンプしてるってこと!?」

「そっ、せいか~い」

「……いつも凄いとは思ってるけど、風の翼を使うような距離を跳んで移動できるのは凄すぎる……」

 

そうでもないんだけどなぁ。七国巡ってれば崖や谷を軽々とピョンピョン越えられる奴なんて結構いるぞ?ファデュイのデットエージェントとか執行官(ファトゥス)の奴らとか。

 

「まてーっ!ドロボーッ!!」

 

噴水広場がある地区から大声が響く。食べていた「お肉ツミツミ」から手を離し、上半身だけを後ろに向けると階段を駆け降りてくる男が見えた。その後ろを西風騎士のアートが追い掛けているが、大分距離が離れている。男が手に持ってるのは……財布か。

 

「アンバー、ちょっとだけ席外すぞー」

 

椅子から立ち上がり、アンバーに手を振ってその場を離れる。こちらに走ってくる泥棒をとっとと捕まえる為、俺は奴の元へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「ア、アレンさん!わたしも一緒に────」

 

泥棒を捕まえるのは西風騎士の仕事。休み中だろうと関係ない。先に席から立ち上がったアレンさんを手伝おうと声を掛けるが、わたしが喋り終わる前に姿が消えてしまった。咄嗟に泥棒へと視線を向ければ目の前に立つアレンさんの拳を受け、崩れ落ちる瞬間が見える。

 

……速い。速すぎるよ。目で追う事すら出来なかった。それでもアレンさんはきっと力をほとんど出していないだろうけど。軽く足を踏み出した程度かもしれない。

 

「凄いなぁ、もう」

 

アレンさんに遠く及ばないわたしにとってその実力はもはや「凄い」の一言に尽きる。強さが他の人とは別格すぎるんだもん。ジンさんだってアレンさんには一度も勝てた事がないみたいだし。

 

「強いしカッコいいし優しいし……そりゃみんなからモテるよね……」

 

そう言うわたしもアレンさんの事は好きだ。さっき、「最初で最後のたった1人の生徒」と言われた時はとても嬉しかった。わたしの事を特別に見てくれているみたいで。

しかしわたしも最初からアレンさんの事が好きだったわけじゃない。初めて会った頃はそういった気持ちよりも憧れや尊敬といった気持ちを抱いていたの。それが好意に変わっていたのがいつからかは分からないけど、気付いたのは初めて飛行大会に出た時。最後の最後で負けそうになった時、アレンさんは誰よりもわたしを応援してくれた。その応援を耳にした時からわたしはどうしてかいつも以上の全力を出して優勝を果たす事が出来たんだ。

モンド酒造組合長のエーザイさんからチャンピオンの証であるトロフィーを受け取った時、わたしはこの喜びを誰よりも早くアレンさんに伝えたかった。その時、わたしの心にどうしていつも以上の全力を出す事が出来たのかについて、1つの答えが出たんだ。

 

わたしはアレンさんに応援されたから優勝できたんじゃない。大好きなアレンさんに応援されたから優勝できたんだって!

 

アレンさんへの気持ちに気付いてからは恥ずかしくてしばらく顔を合わせられなかったんだけど……突然アレンさんが右腕を失う重症を負ったと聞いた時は驚いたし、ショックだった。そして気付けば七国を巡る旅へとアレンさんは旅立ってしまった。それから2年間アレンさんと会う事はなかったけど、わたしの気持ちが変わった事はない。今でもわたしはアレンさんの事が好きなの!

 

「たっだいまー」

「うひゃあっ!?」

「ん、どーした?」

 

び、びっくりしたぁ……!あの時の事を思い出しててアレンさんが戻ってきてた事に全然気付かなかったよ。うぅ、変な声が出ちゃった……。

 

「悪いな、いきなり抜けちゃって」

「ううん!アレンさんは泥棒を捕まえたんだから、むしろ凄いよ!あんな一瞬で捕まえられるなんて!」

「まっ、ただの泥棒だったしな」

 

ただの泥棒じゃなくてもアレンさんだったら一瞬で捕まえられると思うけど……前に「怪鳥(かいちょう)」っていう泥棒が城内に現れた時なんか、空中でシードル湖に叩き落として捕まえたって聞いてるし。

 

「ところで考え事でもしてたのか?なんかボーッとしてたけど」

「そ、そうかな?アレンさんの気のせいだと思うよ」

 

好きって気持ちに気付いた時の事を思い出していた、なんて本人に言えるわけないよ……。

 

「そっか。そういえばさっきの話で思い出したんだけどさ、アンバーって()()()まだ持ってるのか?」

「あの本……?」

「忘れたか?アンバーが俺に見せてきた絵本だよ」

 

アレンさんに見せた事がある絵本って……あっ。

 

「もしかして……「風、勇気と翼」って絵本?」

「それそれ。今思うとあの本がきっかけで、ようやく飛べるようになったんだよなぁ」

 

わたしは今でこそ飛行チャンピオンなんて呼ばれる程飛ぶ事を得意としているけど、飛行免許を取るまでは飛ぶ事なんて怖くて全然ダメだったの。アレンさんも試験官として色々と考えてくれたけど、あと一歩が踏み出せなかった。

────そんな時だった。わたしは小さい頃から好きだったその絵本を見つけ、落ち込む気持ちを少しでも明るくしようと読んだの。そこで気付いたんだ!飛ぶのに一番大事なのは勇気だって。勇気を振り絞ればきっと飛べるはずだって!

そしてわたしはあの鳥達のように風唸りの丘の風の強い高い場所で試験をしてもらったの。そこでわたしは飛べるんだって勇気を出して踏み出したら見事合格したってわけ。

 

「それもあるけど……あそこまで頑張れたのはアレンさんがわたしをずっと信じてくれてたからだよ」

「俺が?」

「うん。アレンさんが落ち込んだわたしをいつも励ましてくれたから。わたしなら絶対に飛べるって言ってくれたから。アレンさんがいなきゃ、今のわたしはいないかもね」

「よせって。アンバーが飛べたのはお前自身が頑張ったからだろ。俺は何もしてねぇよ」

 

『俺は何もしてねぇよ。アンバーが頑張ったからだろ』……あの時と変わらないなぁ、アレンさんは。違うって絶対言うだろうけど、わたしを空へと飛び立たせてくれたのは絵本よりもアレンさんだよ。

 

「……よし!」

「ん?」

「ねぇ、アレンさん!わたしの免停が終わったら一緒に空を飛ぼうよ!」

「いやいや……さっき言ったろー?風の翼は壊れてから使ってないって。それに飛び方も覚えてねぇし」

「それなら大丈夫!ジンさんに言えば新しい風の翼を用意してくれるよ!そ・れ・に、アレンさんの目の前にいるのは何のチャンピオンかな?」

 

かつて飛び方を教えてもらった人に今度はわたしが飛び方を教えるなんておかしな話だけど……またあの時みたいにアレンさんと飛びたいんだもん!

 

「しゃあねぇなぁ……飛行チャンピオン、ご指導お願いできるか?」

「うん!任せて!」

 

今度はわたしがアレンさんを空に飛び立たせてあげるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で?また免停になったって聞いたんだが?」

「ううっ……」

「城内で「怪鳥」の模倣犯を捕まえたんだが……巡回中の騎士から飛び方が危険過ぎると報告があったんだ」

「ならご指導はまたの機会にお願いするかな」

「そんなーっ!!」

「……ご指導?兄さん、何の話だ?」




次は一旦キャラ紹介を出して、そのまた次から新しいお話を投稿する予定です!

とりあえず残ってるモンドの女性キャラとウェンティの話を出したら魔神任務の序章に入ろうかなと思ってます。
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