「先ず、ボク達のことを世間一般では、
狭い路地を抜けて、いつもの実験場に入る。ノムも長身で頭を打ちかけつつも、その路地を抜けて私についてきた。いい子だね。本当。
「魔法戒師?
「それは国の犬だろ?少なからずともボクのように国に敵対する魔法使いは魔法戒師と分類される。魔法戒師は世間一般では殺人鬼みたいな扱いさ。大犯罪者だ。」
傷んだ扉を押し開けて、冷たいアスファルトの室内…地下の修練場へと足を入れる。ノムは鼻を押さえ、酷い匂いだと言い放つが、ボクはもう慣れてしまった。これはこびりついた血の匂いだ。
「魔法戒師の主な危険さは魔法と異能の二つを持つこと。ボクの能力は異能という言葉では形容できないけどね。」
「…異能だと?」
「特定のスキルのことさ。異常な魔法量、常に回復する…とか。そんなんだね。」
「…それで?それを見せてくれるのか?」
…興味津々だねぇ。とりあえず見せてあげようか。
ボクは汚い白布をかぶった箱から、鳥籠を取り出す。中にはカラスがいる。ノムは扉の横の椅子にかけ、その様子をマジマジと見ていた。
「例えば、ボクの異能。名をつけるなら『強制提示』かな。言葉や文字にした言葉を実行させる。たとえ、不可能であっても。」
「…それがお前が自身を添削者やら編集者やら言う所以か。」
「…現実を書き直させる。ボクの都合のいいようにね。『烏、燃え尽きて死ね』」
ボクが烏にそう言うと烏は何処からか発火し、跡形もなく燃え尽きてしまった。火元はない。
ノムはその状況に唖然としている様子だった。
「…魔法か。火属性魔法を見えないように使えばそれで…。」
「君の知っている通り、魔法は名前を言わないと使えない。上位になれば詠唱が必要だ。ボクが何も言わずに使ったと言うことは魔法以外の何かになる。」
「…なら、斬術…とか。」
「ボク、
…何かしらあらを探そうとするノム。長身でとてもゴツい体躯をしているが、それでもかなり慎重な男だ。流石に一度では信じないか…。
「なら、これで信じてくれるかな?
「…は…はぁっ!?」
白い鳥籠の中、先ほど痕跡もなく燃え尽きた烏は
「時でも…戻したのか…?」
椅子から立ち上がり、ボクに向かって歩いてくる。驚愕としていた。
「…だって言っただろ?元通り…と。ボクの言葉は…絶対なのよ。ふふっ。」
「…テメェ、何度も何度もこれをしてきたのか…。人で!!命で!!遊んでたのかッ!!何度も何度もッ!!」
「やぁん♡胸触らないでよ〜。結構自信あるんだぁ。こ・れ♡」
「話を逸らすなッ!!クソビッチがッ!!」
胸ぐらを掴み、ボクに怒鳴り散らかしてくるノム。折角のラッキースケベなアレが台無しじゃないか。
「好きなだけ触ってくれて構わないけれど。一つ、言わせてもらうとしたら、君が怒る必要はないと言うことだ。」
「んだとッ…!!」
「正義気取りの馬鹿ばかり。世の中、それじゃあ、退屈じゃないかッ。」
ボクは彼の手を剥がし、彼の座っていた古い木の椅子に触る。彼はさながら、狼のように歯をむき出しにし、こちらを睨んでいた。
「ボクは、この世界に飽き飽きしている。正義と悪?光と闇?…そんなありきたりな。兵士だって殺すのだから、同じ殺人だろう?だから、それを正義と悪で判断するなんて…ナンセンスじゃない?」
「…俺たちは正当防衛。国のために魔物や異常者を斬り伏せるのが仕事だ。」
「…それだよ。正当防衛…なんて、ただの殺人や暴力の言い訳にしかならない。少なくともこの国では。…さて、くだらない論争は置いておいて、そろそろ始めようか。」
「…くっ…。」
ノムは悔しげな様子でボクから目を離した。そう、これで彼も正義気取りの騎士から反逆者となるのだ。笑いがこみ上げてくる。嗚呼、こんなに愉快なのは殺人か男漁りのどちらかだ。…この世界の女王になるものが、男漁りはまずいか。
「始めよう、