転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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100.魔王との因縁話です

そんな馬鹿な。

 

「2番目の項目、ターニャが許可した場合は除くに変更してあるから、これ署名してね。持って帰るから」

「ん…わかった…」

 

あたしが差し出した書類に自分の名前を書き、ナズナはまた突っ伏してしまった。

 

「ナズナ、寝るならベッドで…」

「シャルがいないベッドで寝る気にならん…」

 

全くこの人は。

甘えんのもいい加減にしなさいよ。

 

「あと半年の辛抱でしょう? それに、あたし陛下から魔王討伐の褒賞貰ってないの。貴方との婚約を褒賞にしてもらうつもりなのに。貴方が体を壊したら元も子もないと思わない?」

 

ナズナは上半身を起こし、椅子の背もたれに後頭部を乗せた。

 

「…ターニャはどこまで許可した?」

「抱き合うのと、手を繋ぐまでは許すって」

 

まぁ妥当だよな、と彼は苦笑した。

 

「今までが許されてたんだ。俺も浮かれまくっていた。すまなかった、シャル。今後は、そういうのは控える」

「…抱き合うのはいいって。ターニャ言ってたもん…」

 

薄暗い部屋の中だからだろうか。

ナズナの言葉と態度が、拒絶を示している感覚に陥った。

 

「あたしだって、寂しいもん。でも、まだ婚約者じゃないから、そういうのダメだって…」

「シャル…」

 

ナズナは立ち上がり、あたしを抱きしめてくれる。

頭を撫でてくれる彼の背中に、手を回した。

 

「辛いな、シャル。悩ませてしまってすまない」

「お互いの、身分が…低かったら。周りの目を気にせず、貴方とずっと一緒に、いられるのに…っ!!」

 

涙が溢れてしまう。

泣いたら彼が困ってしまうのがわかっているのに、止まらない。

 

「あぁ、それも良いな。俺も、この地位を捨てられたらどんなに良いだろうかと、考えた事はあるよ。やっぱり、似た者同士だな俺達は」

「ナズナ…」

 

彼の抱きしめる力が強くなる。

離れたくないと、言われているような気がした。

 

「周りから見たら、滑稽に映るのでしょうね。あたし達は」

「あぁ、滑稽だろうな。俺達の恋は。だからなんだという話だが。この念書、守ってみせるさ。お前との将来とのためにな」

 

ナズナはあたしから離れ、跪くと手の甲にキスをしてきた。

 

「社交での挨拶だ、過剰ではないだろう?」

「そうね」

 

クスクス笑っていると、ナズナの表情も綻んでいる。

あたしが泣いていたのが、心配だったのだろう。

本当に優しい人だ。

 

「シャル、すまない。昨夜から風呂に入っていなかった。汗臭かっただろう? 少し待っててくれ、すぐ入ってくる」

「…今度はあたしが扉の前で待ってるわ。貴方、過労死しそうな働き方するんだもの。お風呂の中で溺れそうだわ」

 

シャワーだけ浴びてくると言って、彼は部屋に備え付けのお風呂場に行ってしまう。

手持ち無沙汰になってしまったので、あたしは部屋のカーテンを開けた。

それから窓を開け、陰気な空気を入れ替える。

ベッドはナズナが一切使ってないため、綺麗なまま。

 

ソファーに腰掛け、背もたれに頭を乗せる。

 

早く喪が明けないだろうかと、どうしようもない事を願ってしまった。

暫くして、ナズナがお風呂場から戻ってくる。

ちゃんと髪を拭いていないのか、ポツリポツリと服に水滴が滴っていた。

 

「ナズナ、今の気候考えて」

「あぁ。すまん、シャル」

 

バスタオルを奪い、ナズナの頭を乾かす。

手がかかる、と思う反面、可愛いとも思ってしまう。

というか、これナズナに罰則はあるけど、あたしにはないのよね。

あたしから触れる分には大丈夫…なわけないか。

 

「シャル、もういいぞ」

 

言われてバスタオルを畳んで洗濯物かごに放り込む。

あとでメイドさんが来て、回収していくのだ。

 

「シャル、話す事がある。向かいに座ってくれるか?」

 

ナズナの真剣な顔に、あたしは言われるがまま向かいのソファーに腰を下ろした。

 

というか、話す事ってなんだろう。

まさか、まだ喪も明けていないのに婚約者が決まったとか?

え、嘘。

側妃扱いになる?

あたし。

 

あたしの百面相に、ナズナが困った顔をした。

 

「お前、少し悲観的すぎないか? なんでそんなに自分に自信がないんだ」

「いや、元々は平民ですし? 異世界から転生してきたって言ったって、信じてくれる人って貴方か、同じ境遇の人だけだし? そんな真剣な顔されたら悲観的にもなるでしょうよ」

 

顔を覆って嘆きながら俯く。

彼が立ち上がり、あたしの隣に座った。

 

「何を考えていたかは知らんが、前も言っただろう? 俺の妃はお前だけだって。もし親父が何か縁談を持って来たとしても、突っぱねてやる。だから安心してくれ、シャルロット」

 

肩を抱かれ、そう諭される。

 

「…うん。で、話って?」

「魔王が出現した時、王家との因縁の話をしたのは覚えているか?」

 

確か、宮塚があたしを探して村を焼き払っていた時ね。

 

あたしは彼の言葉に頷いた。

 

「名前は、ハイクロッカス・ド・ヴァンデルゼンセン。当時の王の側近で、魔術師だったらしい。当時の王妃に懸想していたらしいが、詳しい記録は残っていない。そいつは、王と王妃を巡って対立し、結果反逆者として討伐されたと聞いている。死ぬ間際、自分に蘇りの術をかけた。それで、100年周期で復活する、という話なんだ」




100話行きましたー
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