転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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104.少し落ち込んじゃいました

それはそうなる。

あたしも彼が来るのは予想外だった。

 

「訓練場以外での魔法は禁止、それに加えて校内での私闘も厳禁となっている。わかっててやっているのか、貴様ら」

「ひぃ…っ!」

 

ナズナの眼光が鋭く、令嬢達は今にも倒れそうなくらい怯えてしまっている。

声も怒りでだいぶ低くなっているから、尚更だろう。

 

「ナズナ。下流貴族に対して言った所で、彼女らは理解しないでしょう。馬鹿にはしてませんよ、先輩方。頭に来て、怒りで我を忘れる事など誰しもある事ですもの。それにね、ナズナ。こんな嫌がらせされた所であたしには響かないのよ? だってすぐ治せるのだから」

 

時魔法を使って、その部分だけ遡行させる。

それを見た令嬢方は一言。

 

「化け物…」

 

と呟いてしまった。

ナズナの前で。

 

「お前らの顔は覚えた。シャルが俺の婚約者になった暁には、不敬罪で取り潰してやるから覚悟しておけ」

 

あちゃー、とあたしは自分の顔を押さえる。

 

ある校内の噂話は、あたしも聞き及んでいた。

曰く、ナズナ殿下は自分の専属護衛を溺愛している。

彼女に手を出したら最後、殿下の怒りに触れて生きて戻る事は出来ない、と。

 

それが半分本当の事だからタチが悪い。

溺愛は本当だけど、生きて戻れないわけではない。

ただ、ナズナは国民全員の顔を覚えている。

どこの家の者かなど、彼は見ただけでわかるのだ。

誤魔化そうとも無駄。

彼の記憶力の良さは、あたしも知っているのだから。

 

だからこそ、ナズナはあたしに対して嫌がらせを行った家の者達をリストアップしている。

どれだけ隠そうとも、無駄らしい。

 

もしかしたら、ナズナに隠れて受けていた喧嘩も、彼は把握しているのかもしれない。

 

「で、ですがナズナ様。その娘はナズナ様に気安いばかりか、運だけで21貴族になりましたのよ? そんな娘を貴族として認めろなんて、馬鹿な話だとは思いませんこと?」

「何が運なものか。全てシャルの実力だろう。気安いのも俺が許可したからだ。それに、シャルが荒事だけで貴族になったとでも思っているのか? さっきそっちの令嬢が言ったみたいに、荒事だけだったなら、テスタロッサ家の当主はシャルの事を好ましく思わなかっただろう」

 

あたしは、魔力が人より多かっただけなのだけど。

だからお義父様は、あたしに興味を持ったと聞いていたんだけどな。

 

「その話初めて聞いたのだけど。いつの間にお義父様とお話してたの?」

「いや、その…あの時に、な」

 

あたしの方へ顔を向けたナズナの目が泳ぐ。

あの時と言えば、念書を交わした時か。

夕飯時まで姿を見せなかったから、延々とお説教を受けているものだと思っていたんだけど、合間でそんな話してたんだ。

 

ナズナは怯えまくっている令嬢達を見ると、何かを思いついたようでニヤリと笑う。

また何か悪い事でも考え付いたのかと、あたしは若干呆れた。

 

「シャルの事が気に食わないなら、お前達も実力を見せてみれば良いのではないか? 終業式前に個人対抗戦があったな? そこでの結果次第では、俺も考えを改め直そう」

 

令嬢達の顔が明るくなる。

首の皮一枚繋がった、と言わんばかりだ。

 

「も、勿論ですわ、ナズナ様。私達が上位に入った暁には、その娘との縁談考え直して頂けますね?」

「あぁ。まぁ、結果次第だが」

 

喜色満面になった令嬢達は、ナズナに頭を下げた後その場から立ち去る。

その後ろ姿を見ていると、ナズナから軽く小突かれた。

 

「痛っ、何するのよ?」

「あまり心配させるな」

 

そう言い、彼はあたしを抱きしめてくる。

彼の体温と腕の強さに、自分の体が少し強張っていた事に気付いた。

体の力を抜くと、ナズナはあたしの頭を撫でてくれる。

 

「あ…ごめんなさい…ありがとう…」

「悪意を受け慣れていないんだ、仕方ない。俺の方こそすまんな、シャル。早く宣言出来れば、こんな揉め事は無くなるはずなんだが…」

 

あと五ヶ月だが、なんと長い事だろう。

それまでこんな諍いが続くのかと思うと、あたしはため息をついた。

 

◆◆◆

 

「シャル、体冷えてないか?」

 

寮に一緒に戻ってきた後、ナズナがそう言う。

その言葉に、あたしはキョトンとしてしまった。

 

「いえ、別に? 体温調節魔法を編み出して使っているから、体は暖かいはずなんだけど」

 

ほら、と彼の手を握る。

ナズナは少し驚いて、あたしの首にも触れた。

 

「…あんな寒い中いたのに、本当にお前は規格外というか、なんというか…」

「んっ…逆に貴方が冷たいわよ。あと、規格外って何? あたしは人外だって言いたいの?」

 

冷たい手が首筋に触れて、変な声が出てしまう。

それを意に介さず、いいや、と彼は手を離し、首を横に振った。

 

「お前みたいに魔法に長けた者は、国内外探したところでいないだろうな、と思ってな」

「神にこの世界へ落とされて、特殊な能力ももらったんだもの。まぁ…人外って呼ばれても仕方ないというか…」

 

思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

化け物って親衛隊の人達からも言われた事はあるが、あれはただの冗句だ。

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