本気ではない。
それはあたしにもわかっている。
ただ、今回のように本気でそう思っている人達に言われるのは、多少キツイものを感じた。
神に、死にたくないからこの世界で最強にしてくれと願った。
そう願ったのは自分だったけど、孤立感を感じるのも確かで。
もしも、ナズナ達に出会っていなければ、あたしはずっと一人だっただろう。
「俺は魔法でも、技術でもお前には敵わないと思っている。だが、ただそれだけだ。敵わないからと、お前の人格まで否定する気は無い。アイツらの言葉は気にするな、シャル。お前は、お前の価値をわかってくれる者達の言葉だけ聞けばいい」
そう言って、ナズナはあたしの頬を撫でてくれた。
少し泣きそうだったのが、バレていたようだ。
あたしは苦笑する。
「それ、相手が甘言を弄してきたらどうするのよ?」
「その者の言葉の真偽くらい、お前にはわかるだろう? そこまで愚かではないはずだ」
そうかしら?
あたしは、信頼してしまった人の言葉は、信じてしまう。
それで裏切られた時、自分が悪いのだと責めてしまうのだ。
「あたしが愚かだったら、貴方はどうするの?」
「その時は、俺が真偽を見極めるさ。お前一人に責を負わせるつもりはない。夫婦とは、そういうものだろう?」
コツン、とナズナはあたしの額に自分のを合わせてくる。
ここまでのスキンシップは、許されるよね? ターニャ。
「我が主、お疲れだろう。夕食を作ってみた。如何か?」
扉付近で話し込んでいたあたし達に、ルティがそう問いかけてくれる。
レヴィもだが、ルティもなんて主想いのいい子なんだろうか。
いい子って、あたしの数千倍生きている相手に対して失礼かもしれないが。
たまに、奥さん可愛さで主に反旗を翻す事があるけど。
それでこの間レヴィに怒られていたっけな。
「ありがとう、ルティ。貴方のご飯美味しいから好きよ」
「…俺だって食事くらい作れるが」
あたしの使い魔に対し、ヤキモチを焼くナズナ。
王族の貴方が作れてどうするんだという話なのだが。
むしろ作らなくていいです、怪我されたら困るので。
そんな考えがあたしの頭を巡った。
ジト目であたしを見るナズナの頭を撫でる。
「はいはい。今度あたしの監視下で作ってもらうから、そんな怒らないでよ」
「怒ってないが」
ムッとしている時点で、怒ってるのよ貴方は。
ナズナの手を引いて食卓につく。
食卓の上には、牛肉の赤ワイン煮込みとパン、サラダが乗っていた。
「ルティ、これいつから仕込んでたの…?」
「3日前だが」
あたし、いい使い魔を手に入れたのかもしれない。
料理上手とか、本当に助かる以外ない。
あたしはルティに向かって拝んだ。
「助かる、ありがとう、あたしの使い魔になってくれてありがとう」
「いや、別に良いが…。我が主の番がすごい顔で吾を見ているので、吾はこれにて。我が妻を待たせている故」
そう言うと、ルティは消える。
横を振り向くと、ナズナが臍を曲げてしまったようだった。
「もー…使い魔にまで嫉妬してどうするのよ」
「俺だってあそこまで、感謝された事ないからな」
いつもしてると思っていたけど、まだ足りなかったらしい。
あたしは立ち上がり、ナズナの頭を抱きしめた。
「本当に子供っぽいんだから、貴方は。そんなところも好きよ、ナズナ。貴方と出会ってなかったら、あたしはずっと一人だったなってさっき思ったわ。あたしと出会ってくれてありがとう。大好きだよ、ナズナ」
「カヅキよりもか?」
なんでそこで彼女の名前が出てくるんだ。
今は親友の域だというのに、未だにあたしの婚約者だった事が気になるのだろうか。
「カヅキよりも」
「ターニャよりもか?」
ターニャの名前も出てきて、ついにあたしは吹き出した。
まったくこの人は、本当に子供っぽいのだから。
あたしはクスクス笑いながら、彼の問いに答える。
「ターニャよりも、誰よりも愛おしいわ。だから、あたしから離れないでねナズナ。貴方が離れてしまったらあたし、死んじゃうかもしれないもの」
「離れるつもりも、離すつもりもない。すまないな、シャル。お前があまりにも綺麗だから、俺の手の届かない所に行きそうで、少し怖いんだ」
あたしの腰に腕を回し、さらに密着してきた彼の頭を撫でた。
「そんなわけないでしょ。あたしは別に天使でも天女でもないのだから」
「それぐらい綺麗だって言ってるんだ。シャル、愛してる」
そう言って、彼は腕の力を強める。
あたしはナズナの肩を軽く叩いた。
「お腹すいたから手を離してもらえる? せっかくの美味しいご飯が冷めちゃう」
「そうだな」
案外すんなり離してくれて、あたしは食卓につく。
食事を始めてしばらく経った頃、そういえばと思い出した事を彼に尋ねた。
「個人対抗戦って何? 期末テストと関係あるの?」
「あぁ、シャルは初めてだったな。二学期末に、実技を兼ねた対抗戦をやるんだ。筆記とはまた別のな。その結果で、期末の成績が決まると言っていい」
それを聞いて、あたしは少しゲンナリする。