転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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106.特訓します

「期末テストって、最大3日間じゃないのかしら」

「3日間で実技までやったら、怪我人が出ると思うがな。筆記で頭を使った後に体を動かすとなると、戦闘の際、隙が生じるだろう?」

 

それもそうか。

体育の時間の後の授業は、確かに眠くなってしまっていた。

 

寝なかったけど。

 

逆もまた然りなのだろうと納得した。

 

「まぁ、筆記でも上位のお前が、実技で下位になる事はないだろうな」

「そんなに高く買わないでよ。もしかしたら、最下位になる可能性だってなきにしもあらずでしょう?」

 

グラスで水を飲んでいたナズナは、目を丸くしてあたしをマジマジと見る。

一体なんだと首を傾げると、彼は盛大にため息をついた。

 

「な、何よ」

「お前、自分の実力を見誤ってるんじゃないのか? いや、カナリアにも以前言われていたな。もう少し自信を持てシャル。お前の魔法の実力は、この国一番だ。俺が保証する」

 

ニコリと笑いかけてくれた彼から、顔を背ける。

笑顔と信頼が、眩しすぎたのだ。

 

「お、お皿片付けるね」

「あぁ」

 

シンクに洗い物を置いて洗い始める。

背後からナズナに抱き締められるのは日常茶飯事だったので、それは無視した。

 

「本当、やってる事はメイド達に聞いた同棲生活よね、これ」

「ドウセイ? とはなんだ?」

 

あたしの肩に顎を乗せ、ナズナが聞いてくる。

耳元でナズナの声がして、少し照れながら説明した。

 

「結婚してない男女が、一つ屋根の下で暮らす事だって。あたしと貴方の立場的に主人と従者なのだけど、初めて会った頃ならともかく、今は関係性が違うじゃない? 今はあたし、貴方のこ、恋人なのだし」

 

言ってて更に照れる。

 

言葉にしてみればたったの4文字なのだが、その関係性がとても恥ずかしい。

さらに言えば、当初のナズナのスキンシップがとても異常だったのが、何ものよりもだ。

あれに慣れてしまって、今の触れ合いがとても、とても、恥ずかしい。

これが恋する乙女心というものなのだろうか?

 

もっと触れてほしいと、駄々を捏ねてしまいたくなる。

立場的に、これ以上は婚約者になってからだとは、頭で理解していてもだ。

 

「そうだな。お前は俺の恋人だ。どこにも行かせない。お前の場所は俺の隣だ、シャル」

 

そう言って、ナズナはあたしに頬擦りしてきた。

本当に愛おしいな、この人は。

 

「さて、洗い物も終わったし。離してくれる?」

「寝る前くらい触れ合っていてもバチは当たらんだろう?」

 

少し拗ねたように言う彼に、あたしは苦笑する。

 

「あたしは別にこのままでも良いのよ? 少しテスタロッサの家に用があるから、夜半過ぎには帰るつもりだけど。この状態で帰って、お義父様とターニャがなんて言うかしらね?」

 

そう言うと、彼はすぐ離れた。

シャルは意地悪だ、と呟いて。

 

「そんなあたしも好きでしょう? ルティを置いていくから、ちゃんと寝ててね?」

「子供じゃあるまいし、言い聞かせるように言うな」

 

クスクス笑いながら、あたしはテスタロッサの家に転移した。

 

◆◆◆

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。本日はどのような要件でお戻りに?」

 

自分の部屋に転移したはずなのだけど、そこにはすでにターニャがいた。

どうやら毎日清掃をしてから就寝しているようだ。

 

「ターニャ…帰ってくる前でいいのよ? 掃除は」

「いいえ、いつ何時お嬢様がお帰りになるかわかりません。現に今帰ってらしたではないですか」

 

まぁ、その通りなんだけど。

あたしはターニャの手を取った。

 

「ターニャ、個人対抗戦というものが二学期末にあるらしいの。あたし今、どれくらいなら人を殺さないで済むのかわからなくて…」

「承知しました。お嬢様が力を制限できるよう、尽力させていただきます」

 

ターニャはあたしの手を引いて、お義父様の研究施設まで連れて行く。

 

普段生活に支障は全くないが、最高神に更に力をもらって、化け物並みに振るえる様になった。

力加減次第では、人を殺してしまう可能性もある。

だから、戦闘の時が一番恐ろしい。

 

だからこそ、カヅキの戦闘の師匠でもあったターニャに頼ったのだ。

 

だが、あたしの言葉足らずな話で全て理解してくれるあたり、ターニャはすごく優秀だな、と感じる。

いや、甘えちゃダメなんだけど。

 

お義父様の研究室に辿り着くと、ターニャはおもむろにノックした。

 

「旦那様、夜分に失礼致します。お嬢様がお帰りになられたので、訓練場の貸し出しをお願いしたく」

「ターニャ? シャルが帰ったって…」

 

くぐもった声が中から聞こえ、続いて扉が開けられる。

あたしの姿を見たお義父様は目を丸くした後、フワッと笑った。

 

「お帰りなさい、シャル。一体何があったのです?」

「実は…」

 

あたしは今までの経緯を説明した。

ナズナに念書への署名させた日、あたしは死にかけた事。

最高神とやらに会って力をもらった事。

それ自体はありがたいが、戦闘の際力の制御が出来るかわからない事。

 

お義父様はあたしの話を黙って聞いた後、わかりました、と一言言った。

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