あたしも魔法を使ったが、ナズナを守るためだったのでお咎めなしだ。
「…案外あっさり捕まったな」
「成績上位のナズナを今のうちに落としておけば、自分達が上位に入れると勘違いしていたみたいね、今の動きからして」
なんと浅はかな事だろうか。
ナズナを蹴落とした所で、その者の成績が上がる事はないだろうに。
あたしはトーナメント表を見る。
ナズナとあたしは別ブロックで、決勝まで勝ち上がれば戦う事になりそうだ。
「うわ…嫌だなぁ」
「手を抜く事は許さんぞ。それは俺相手でもだ」
あたしの頭に手を置いて、彼は思い切り撫でてくる。
髪が乱れるからやめろと怒ると、ナズナは苦笑した。
「あまりピリピリするな、シャル。思い切りやればいい」
「思い切りやって人死にが出たら笑えないのよ。何のために、カヅキにリミッターつけてもらったと思ってんの」
その提案をしたのは、ターニャが呼び出した彼女ではあるのだが。
だが、彼女の名前を出した瞬間、ナズナがあたしを抱きしめてくる。
「な、な…?」
「嫉妬するから、これ以上名前を出すなシャル」
ナズナの背中を軽く叩き、離すように促した。
「今は友達だって、何回言わせるのよ貴方は。あんまりしつこいと、あたし領地に帰るからね?」
「それは困る」
あたしの手を握ってくる彼に、軽くため息をつく。
このやりとりも何回目になるだろうか。
そんなにカヅキが気になるのか?
「まさか、カヅキに惚れたとかないわよね? あの子、恋人いるって言ってたけど」
「そんなわけないだろうが。俺はシャルだけいれば良い。ただ…」
あたしの手を引き、観客席に向かう道を歩き出したナズナに寄り添うようあたしも歩く。
「ただ、何よ?」
「何でもない」
何でもないわけないだろうに。
あたしに頼られてるカヅキに嫉妬してるんだろうけど、それとこれのベクトルが違うと、言い聞かせてるはずなんだけど。
「あたしの全てを手に入れないと気が済まないのね、貴方は」
「当たり前だろう。初恋の女で、
ナズナの顔が真っ赤になっている。
念書の件があるから、ナズナはこれ以上あたしに手を出す事が出来ないのだ。
一体何を想像したのかしら、この人は。
「なんて言ったっけ、こういうの…あぁ、そうだ。むっつりスケベだ」
「どこからそんな知識を…カヅキだな?!」
いや、まぁ、その通りなんだけど。
ターニャみたいな形相とお説教まがいに、あたしは閉口する。
コロシアムの方から歓声が上がったところを見るに、第一試合が終わったようだった。
ちょっと、他の生徒がどんな魔法を使うか見てみたかったのだけど、仕方がない。
ナズナのお説教まがいを右から左に聞き流し、あたしは彼の問いに相槌を打った。
◆◆◆
あたしの番が先に回ってきたので、ルティとレヴィにナズナを任せ、コロシアムへ降りる。
同じ制服にリボンの色が違う事から、一学年という事は見てとれた。
表情が明るい事から、こちらに好意を抱いてくれているようだが。
親衛隊入隊試験の時みたいな結界が、コロシアム一帯を覆う。
致死量のダメージを負っても、これで無効化される
らしいので、魔法はなんて便利なものだと思った。
「お姉様! お手合わせお願いします!」
「その言い方…アンが作ったファンクラブの子か…」
だから、なんで同い年にお姉様と呼ばれなければならないのだろうか。
先生の、開始という言葉を聞いたあたしは、手の平を名前も知らぬその子に向ける。
「容赦しないから、恨むなら恨んでいいよ」
「いいえ! お姉様に撃たれるなんて光栄です!」
その子もあたしに杖を向けた。
これで、撃つ理由が出来たな。
「
光の槍が上空からその子目掛けて降り注ぐ。
避けようと考えた瞬間、もう光は貫いているため、避けようがない。
「がはっ!!」
その子は全身貫かれて絶命する。
リミッターをまたかけてもらったはずなのだけど、それでもこの威力かと少し怖くなった。
勝者があたしに決定したあと、結界が消える。
瞬時に傷が無かった事になった女生徒は、目を覚ました後あたしに向けてニコリと微笑み、
「ありがとうございました! お姉様の魔法受けれて幸せです!」
と宣った。
え、頭おかしいの貴女。
若干引いてしまったのだが、女生徒は気にする様子もなく、場を降りて行った。
あたしも降りてナズナの隣に戻る。
「あれで制限しているのか? 本当に?」
「全ての属性を確認してもらったの。カヅキのお墨付きのはず…なんだけどね」
あたしのリミッターは、十段階に分けてもらっている。
雛桔梗が、あたしの身が危険だと判断した場合、あたしが対処できる段階までリミッターを外してくれる手筈になっていた、はずだ。
外したという報告が無かったから、完璧にかかっている。
「…制限をかけていても、あれだけの実力なんだ。やはり、俺の女は素晴らしいな」