転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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110.順調です

「あんまり褒めても何も出ないわよ。それより次は貴方でしょ? 入り口までは着いていくから」

 

大丈夫だ、と彼は言うが、あたしはナズナの護衛役なのでついて行かざるを得ない。

入り口につき、場に向かう彼の背を見送る。

 

「怪我しないでね、ナズナ…」

 

あたしは胸あたりで指を組み、祈った。

そんなあたしの両肩に、レヴィの手が置かれる。

 

「心配するな、我が主。我が夫がたまに特訓に付き合っておる故な」

「うむ。この間は居合い抜きの練習をしていた。中々の腕に磨き上がったぞ」

 

待って、居合い抜きですって?

そんな報告受けてない。

それに、ナズナは刀を使えたっけ?

 

「ルティ、だからそういう事は報告しなさいって…」

 

背後に控えていたルティを振り向くと、後ろから歓声が上がり、ナズナの方を見る。

収納魔法の中に入れていたのか、彼の手には一振りの刀が納められていた。

相手は一刀両断されたようで、倒れ伏して動かない。

あたしは場から降りてきたナズナに問いかける。

 

「ナズナ、その刀どうしたの?」

「あぁ、これか? 母上の実家は吾妻ノ国でな、そこから取り寄せた。レイピアは脆すぎるからな。突くのは良いが、薙ぎ払う事は出来ん。シャルが使っているのを見て、同じような物が吾妻にもあったと思い出してな」

 

なんて事ない、という風に言うが、刀なんて一振り一振り職人の手による一点物だ。

あたしなんて、創造魔法で作った模造品だというのに。

 

「良いなぁ…」

「冬休み、吾妻に行くか? 夏でもいいが」

 

彼の提案に、あたしは首を思い切り縦に振る。

とても行ってみたい。

だが、とあたしは止まる。

 

「いや、いち護衛が吾妻に行きたいからって、それは…」

「なら、夏にするか。その時は婚約者だ。婚約者を親の実家に連れて行くのは普通の事だろう?」

 

…照れるからやめてほしい。

そういえば、来年のノーム2の月でナズナの喪が明ける。

その時、正式にテスタロッサ家に婚約の申し込みに行くのだと、彼は言っていた。

 

「ちゃんと先方に話を通しておいてね。無断で行くなんて、貴方はしないでしょうけど」

「無論だ。さて帰るか、シャル。俺達の次の試合は明日だ」

 

そう言って、ナズナは歩き出す。

見ていかないのか、と彼に尋ねるが首を横に振られてしまった。

 

「見た所で、お前が学べるものは何もないと思うが。それよりも実戦を重ねてきているだろう? 俺も、お前も。それでも見たいなら残るけどな」

 

彼がここまで言うのだから、見る価値がないとは言わないけれど、ただの観戦になってしまうか。

 

「でも、勝手に出て行っていいの?」

「構わんさ。チラホラ人がいなくなっているの、気付いているか?」

 

観客席を眺めると、確かに空席がある。

生徒がいなくなっているのにも関わらず、先生達も何も言わない所を見るに、いてもいなくてもどちらでも良いのだろう。

 

「なら帰るけど、今日の夕飯どうする?」

「お前の手料理がいいな。好きなものを作ればいい」

 

ナズナは好物もなければ、嫌いなものもない。

アレルギーがない事も、付き合い始めてから雛桔梗に調べてもらった。

 

だからこそ、作り甲斐がないというか、なんというか。

 

「わかった。不味くても文句言わないでね?」

「お前の作るものを不味いと思った事など、ただの一度もないが」

 

あたしの指に自分の指を絡め、ナズナは微笑む。

その表情に弱いのだから、今は笑いかけないでほしい。

 

頬を赤らめてしまったのが、バレてしまうのだから。

 

◆◆◆

 

二日目、あたしもナズナも順調に勝ち進んで、三日目最終日。

あたしは次の相手の名前を見てゲンナリした。

 

「うぇ…あの先輩か…」

 

あの日、あたしに喧嘩を売ってきた先輩。

ルーチェ・ガルシア。

そこを勝ち抜いたら、次の対戦相手は肩幅がゴツイロドリゲス家の令嬢だ。

 

「速攻で終わらせていい、よね?」

「構わんだろう。先生方も、もうそろそろ点数をつけ終わりたいだろうしな」

 

あたしの背後に立って腕を組んでいるナズナが、自分のトーナメント表を眺めている。

残っているのはもう三年生ばかりで、二年や一年は一握りだ。

 

「大丈夫そう? もうそろそろ負けてもいいんじゃない?」

「流石にこのレベルで負けるのは、不名誉だな。ダーカンよりも弱いんだぞ、ここの生徒は」

 

第一騎士団長と、一般生徒を比べたらいけないと思うのだけど。

まぁ、ナズナから言わせれば、自分と打ち合いが出来るダーカン第一騎士団長より弱いのに、負ける要素がどこにある、という事だろうが。

 

「貴方と決勝で当たりたくないから言ってるんだけど」

「俺は当たってみたいがな。お前、手合わせの時手を抜きまくっているだろう」

 

何を当たり前の事を言っているのだろうか。

誰が好き好んで、愛している人を手にかけたいというのだろう。

本気でやれば、ナズナなんて一瞬で殺してしまう。

それは絶対に嫌だ。

それに、手にかけたいと思う奴はサイコパスに違いない。

 

「ナズナはあたしを殺してみたいの?」

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