あたしを唖然と見ている、自分に反感を抱いている連中に、礼をした。
そして、コロシアムに聞こえるように、拡声魔法を使って宣言する。
「私に反感を持っている方々に告げます。私に喧嘩を売るというなら、こうなる事を覚悟の上で売ってください。撃って良いのは、撃たれる覚悟のある者だけでしてよ?」
カヅキが良く、あたしに嫌味を言ってくる人達に対して言っていた言葉だ。
やるなら、やられる覚悟を持て、と。
黄色い歓声とどよめきと、一部からは悲鳴が上がった。
今の悲鳴、あたしに殺されるとでも思ったのかしら?
だから、何もしなければこちらも何もしないんだってば。
「シャル、脅しすぎだ」
場に上がってきたナズナが、あたしに苦言を言ってくる。
それに対して、あたしは微笑んだ。
「これくらい言わないと、わからない方々が多いではないですか。殿下? …覚悟は出来ておろうな?」
「っ!?」
あたしの豹変ぶりに、ナズナは驚く。
ニヤリ、と笑んでやった。
「シャル、それは…」
「貴様が望んだ事だろう。私と本気で戦いたいと。甘い私がお前と戦えるわけがない。ならば、総帥の私が出るしかないだろう?」
二重人格風味だけど、あたしはあたしだ。
甘えを捨てたらこうなる、とナズナにも認識して欲しかっただけ。
本当は戦いたくないのに。
それをわかってくれない彼が悪い。
「だから、それは恐ろしいって前に言ったはずなんだがな?!」
「知らぬ。今の私は、貴様の敵だ。私は、敵とみなした者には容赦せぬぞ」
刀を抜き、彼に向ける。
ナズナは刀を抜かず、姿勢を低くした。
先生の開始の合図で彼が居合い抜きをあたしに喰らわそうとしてきた。
が、それを刃先の部分で受け止める。
「なっ?!」
「何を驚く事がある。あぁ、力比べなら貴様の方に軍配が上がると、そう思っておったか? 普段ならそうであろうよ」
言いながら、ナズナの顔を横から蹴った。
重力魔法を乗せながら蹴ったので、普通なら顔面が陥没している。
だが、重力魔法なら彼も得意とする所なので、威力を相殺したようですぐ立ち上がった。
「シャル、お前…俺を怒らせたいのか?」
「先に私を怒らせたのは貴様だろうに。何を棚上げしている。あぁ、普段の私と戦いたかったのならご愁傷様だな。これでしか、私は貴様と戦う気はない」
パチパチと、ナズナの周りが帯電し始める。
彼が怒った姿など見た事がないので、内心戦々恐々なのに。
これから何をするというのだろうと、彼を観察した。
「なら、俺の本気を見せてやる」
地上にも空中にも、稲光が走る。
つん裂くような轟音が響き渡る。
それらはあたし目掛けて襲いかかってきた。
数が多く、全てを捌き切れるわけないと、見ている者達は思った事だろう。
普通ならこれで終わりだと。
だがしかし、これで終わるあたしではない。
「甘い!」
あたしは柄にも収まっていない刀身を創造魔法で作り出し、あたしの周りへ、無造作に地上へ刺した状態で召喚する。
雷光は全てそれに吸い込まれ、雷の力は地中へ放出された。
「やるな、シャルロット」
「これくらいで賛美されても、反応に困るだけだ。あぁ、貴様の十八番で遊んでやろうか?」
あたしは片手を上に掲げる。
暗雲が立ち込め、ナズナの時よりもさらに激しく雷鳴が鳴った。
刀を浮き上がらせ、その刀身に雷を落として纏わせて、彼の周りを浮遊させる。
「何をする気だ」
「言っただろう、貴様の十八番で遊んでやると」
刀からランダムに雷球が発射され、ナズナを襲う。
彼はそれを自身の反応速度だけで避けていった。
流石、戦場を駆け抜けただけはある。
惚れ直してしまうではないか。
にやけそうになる口元を引き結び、あたしはナズナに告げる。
「戯れもここまでだな。貴様の命運も尽きたようだ」
あたしは上空に飛び上がり、彼に片手を向けた。
リミッターは全て解除してもらっている。
だから、これがあたしの最大火力。
最大の雷を落としてあげようじゃないか。
「
今まで聞いた事がないような轟音と共に、避けようがない大きさの豪雷がナズナ目掛けて落ちてくる。
避けるなら、場から降りるしかない。
避けてくれるかと思ったけど、彼はそれを受け止めようと刀を雷に向けた。
だが、あたしの最大火力に加えて神の雷だ。
ただの人間が受け止められるわけがない。
爆音と共に、地上が炸裂した。
土煙が晴れると、黒焦げになったものが、その場に倒れ伏す。
先生が結界を解除して、あたしは地上に降りると、その場に崩れ落ちた。
「うぁ…あぁ…あぁぁぁぁぁあ…っ!!」
涙がとめどなく溢れては流れていく。
だから、だからだからだからっ!!!
こんな気持ちになるから戦いたくなかったのにっ!!
死なないとわかっていても、ナズナを手にかけることなど、したくなかったのにっ!
あたしの泣き叫ぶ声が、場に響いている。
ジャリ、と土を踏む音が聞こえ、泣いているあたしを起こして、誰かが抱きしめてくれた。