転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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114.仲直りしました

「シャル…シャルロット。泣くな。俺は死んでなどいない。それに…お前の本気は凄いな。受け止められると思っていたが、無理だった」

「…っ! 馬鹿…っ! 馬鹿馬鹿馬鹿…っ!! ナズナ…っ、嫌い…っ!大っ嫌い…っ!!」

 

泣きながら、彼の胸を叩く。

安堵したからか力が入らず、軽くしか彼に衝撃を与えられない。

 

あたしからの罵倒に、彼は困ったように笑った。

 

「嫌いと言われても…俺はお前が好きなんだ。無茶を言ってすまなかった。もう悲しませないように気を付ける。だから、泣き止んでくれシャルロット。お前の嘆く姿は、俺も辛い」

「誰の…っ! せいだと…っ!!」

 

俺のせいだな、と彼はあたしの頭を撫でてくる。

そのまま、彼はあたしを抱き上げた。

 

「先生、俺達は帰ります。恋人に心の傷を与えてしまった、その償いをしなければならないので」

 

ナズナはそう言うと、使い魔を呼び出して自分に纏わせる。

飛行能力を得た彼は、あたしを抱えたまま上空に飛び立った。

 

◆◆◆

 

「離してってば!」

 

彼が空中に上がったため、あたし達は学校から数十メートル上空にいる。

ナズナの腕の中で暴れるあたしを、彼は頑なに離そうとしなかった。

 

「今離したら、地上に真っ逆さまだぞ」

「別に、雛桔梗展開して飛べるし」

 

今ナズナが手を離した所で、あたしには雛桔梗がいる。

それに、自力でも飛べるのだ。

何も困る事はない。

 

「…すまん、俺が離れたくない」

 

少し辛そうに、ナズナは言う。

腕の力も強まって、あたしは大人しくなる。

 

そんな顔しても許さないんだから。

 

あたしはプイッと、彼から顔を背けた。

 

「すまなかった、シャルロット。お前を悲しませるつもりは全くなかったんだ。俺の好奇心で、お前を傷つける事になるとは思わなかった。いや、言い訳にしかならないな…。お前が望むようにしよう。お前の望み通りにしよう。もし、俺を本気で嫌いになったのなら、このままテスタロッサまで送る。お前は、どうしたい?」

 

とても後悔しているような声音で、そんな事を言う彼に、あたしは涙声で言った。

 

「……もう、やだ。嫌だ。なんでこんな思いしなくちゃいけないの? ナズナの事、殺したくなかったのに…っ!」

 

再びナズナの腕の中で泣き始めたあたしに、彼は額にキスを落とす。

その行為が優しくて、あたしはまた涙が溢れた。

 

「うん、わかってる。お前の好意につけ込んだ事、本当に後悔してる。すまない、シャルロット。まだ、俺の事を愛してくれているか?」

 

後悔と懇願を瞳に湛えて、彼はあたしを見つめる。

 

「嫌いに、なるわけないじゃない…っ!」

 

彼の首に腕を回して、泣きじゃくる。

あたしの背を撫で、彼は移動し始めた。

 

「ナズナ、どこ、いくの…?」

「テスタロッサの家だ。土下座しに行く」

 

待て待て待て。

今のあたしのこの姿を見たら、ターニャが怒り狂うのが目に見える。

 

あたしは彼の肩を叩いて、待ったをかけた。

 

「しに行かなくていい。貴方死にたいの?」

「そうしなければ、お前の気もすまないだろう?」

 

あたしは首を思い切り横に振る。

 

「今度は本当に死ぬ! ターニャは拷問部隊にいた事もあるくらいの手練れなの! 拷問はお手のものなの! やだ…ナズナが死ぬの、いやだ…」

 

要の裏部隊、その一部分である拷問部隊。

そこに長谷川はしばらくいたらしいと聞いた事がある。

総帥になるのだからと、部隊の存在だけは教えてもらっていたけれど。

そんな拷問に長けた人に、あたしを傷つけたと謝りに行くなんて、自殺をしに行くようなものだ。

 

困ったように眉を下げる彼の頬を両手で掴み、キスをした。

あたしからならセーフのはずだ。

 

「お願いだから、心配させないで。あたしの傍にいて。大好きな人が死ぬのは、もう失うのは、嫌なの…」

「シャル…」

 

目を見開いていた彼は、涙を零すあたしに向けてふわりと笑った。

 

「あぁ。お前の傍を離れない。出来る限り、心配させないようにする。愛してるよ、シャルロット」

「約束だからね…?」

 

あぁ、とナズナは返事をし、寮の方向へ方向転換し飛び始める。

 

「今日は添い寝して。悪夢でうなされるかもしれないから」

「……あぁ、わかった……生殺しか…」

 

聞こえてないと思ったのだろうが、バッチリ聞こえてしまって、あたしは彼を睨んだ。

 

「生殺しって何。そもそもナズナが悪いんでしょ?!」

「わかってる、わかってるから! 本当に申し訳ないと思っている! 添い寝でもなんでもするから、許してくれ…」

 

しょんぼりしてしまったナズナの表情を見て、あたしは吹き出して笑ってしまう。

あたしの笑顔を見て、彼もホッとしたようだった。

 

◆◆◆

 

「しかし、シャルの綺麗な髪が短くなってしまったな…。なんでこれは戻らなかったんだ」

「さぁ? 生命に支障が無いからじゃないの?」

 

寮に戻ってきたあたし達は、夕飯を終えてのんびりしていた。

彼は隣に座り、あたしの髪をいじりながら不満そうだった。

 

「あの令嬢、許さん。俺が王位についたら追放してやる…」

「馬鹿な事言ってないで、手を離して。髪整えられないじゃないの」

 

無造作に斬られたものだから、髪が短かったり長かったりとバラバラなのだ。

それをルティに整えてもらっている最中で、やっとナズナが手を離してくれたので、作業を再開出来るみたい。

 

「なんでも出来るのね、ルティ。レヴィもいい旦那さんもらったわね」

「であろう? 我が夫は手先も器用だし、いい男だ。妾の番として、申し分ないんだぞ」

 

ニコニコと笑いながら旦那さん自慢してくれるのはいいんだけど、ルティの手元が狂いそうで怖いんだけど。

嬉しくて彼の肩が震えているから。

 

いつもなら自分もと言ってくるナズナが大人しい。

今日の出来事で、あたしを泣かせてしまったのが堪えたのだろう。

 

「ルティ、もう大丈夫? 大丈夫なら、もう寝るから下がっていいよ」

 

あたしの髪とかを片付け、ルティとレヴィは下がっていく。

ソファーで腕を組んでいたナズナの手を引いて、彼の寝室に向かった。

 

「ん!」

 

ベッドを叩いて、ナズナの方を見る。

彼は苦笑して先にベッドの中に入り、あたしを招き入れた。

 

「今日だけ、今日だけだから」

 

彼の胸に頬を擦り付け、そう呟く。

 

「あぁ、わかってる。おやすみ、シャル」

 

彼の体温と頭を撫でる手に、あたしはすぐさま眠りに落ちたのだった。

悪夢なんて、見る事なく。




長いよぅ…2000文字に収まらなかったよう…
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