転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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118.びっくりしました

部屋から出てきたのは、白髪褐色肌のカヅキだった。

だが彼女は今、カヅキの名を呼んだ。

なら、この人は誰だというのだろう?

 

「お、お前…篠原夏月か…?」

 

ヨロヨロと、あたしの方に近寄ってくる女性に少しの恐怖を抱く。

メイドさんがあたし達の前に立って、彼女を止めてくれた。

それを見たナズナが、あたしを抱きしめてくれる。

 

月夏(ルカ)様。シャルロット様が怯えてらっしゃいます。あまり近付きますと、お館様にすぐさまご報告する事になりますが」

「うるせぇ! そこを退け!」

 

女性の目は、あたしを見据えていた。

何かを渇望するかのような、そんな目だ。

あたしはその目に、見覚えがある。

 

宮塚麻人。

 

思い出して、あたしは血の気が引き、カタカタと震え出した。

目をギュッと閉じ、ナズナの胸に顔を埋める。

 

嫌だ。

何も見たくない、聞きたくない。

助けて、ナズナ。

 

スパーンっ!!

 

と凄い音がして、次いで何かが倒れる音がした。

ナズナがあたしの名前を呼んだので目を開けると、眉が吊り上がったカヅキと、先程ルカと呼ばれた女性が倒れている姿が目に入ってくる。

 

「ルカ、テメェ…何ナツキ怯えさせてんだ! はっ倒すぞ!!」

「倒した後で言うんじゃねぇよアホ! てかナツキいるってなんで教えねぇんだ!!」

 

メイドさんがカヅキを呼んでくれたようで、あたしは安堵した。

ナズナがあたしの背を軽く叩いて、慰めてくれる。

心地よくて、彼の胸に頬擦りした。

 

「お前に教えようもんなら、ナツキの所に突撃するだろう?! 今のナツキは、メンタルボロボロの深窓の令嬢だぞ?! 少しでも刺激与えようもんなら、すぐ気絶するくらいなお嬢様だ! お前になんか会わせられるか!!」

 

あたしそんな風に思われてたのか。

流石に気絶しない…と言いたい。

多分。

 

「カヅキ、ここは任せていいか? シャルが怯えている。部屋に連れ帰ろうと思うが」

「そうしてくれ。ナツキ、夕飯時にでももう一回こいつとか他の家族を紹介する。それまでに暴走しないよう言い聞かせておく、安心してくれ」

 

カヅキの言葉に、あたしは頷いた。

ナズナに連れられ、部屋へと戻る。

 

お部屋の外にいたの、二時間くらいだったなぁ。

 

ベッドに腰掛け、隣に座ったナズナに寄りかかった。

彼はあたしの手を握って、あたしの頭に頬をくっつけてくる。

 

「そう言えば、シャル。ここに来る前、俺とのんびりしたいと言っていたな。気が済むまでこちらにいるという選択肢も、見えてきたと思うが」

「馬鹿な事言わないでよ。今のカヅキがどのくらいの年齢かはわからないけど、前に会った時よりも大人になってる。あんまりこちらにいると、向こうに戻った時大変な事になりそうじゃない? ナズナが消えたからって、ユキヤ君が王位を継がされる、とか。有り得そうじゃない?」

 

顔を上げたナズナの表情を見た。

彼は何かを悩むような、難しい顔をしている。

何を悩んでいるのだろうと、あたしは首を傾げた。

 

「いや…確かに有り得るんだが…シャルとテスタロッサに行く前に、俺宛に文が来たんだ。相手は、ユキヤの婚約者であるアリシア・トンプソンという令嬢でな。文の内容を思い出すと、頭の痛くなる話ではあるんだが…」

「何が書かれていたの? まさか…ナズナの婚約者になるとかそういう話?」

 

尋ねると、首を横に振られる。

 

「ユキヤの浮気がわかったから、協力して欲しいと」

「……あちゃー…」

 

遂に婚約者にバレたのか、ユキヤ君。

これ、修羅場になりそうだなぁ。

 

義理の弟になるとは言え、関係を清算させておかなかったユキヤ君が悪い。

これはあたしも擁護は出来ない。

 

「王太子も何もかも投げ出して、シャルとここで暮らしたいと思ってしまう出来事だろう? なんで俺が、弟の恋路に口を出さねばならん」

「うん。わかるけど…」

 

そう上手くかないのは、ナズナもよく分かっているだろうに。

あたしが見つめていると、彼は困ったように笑う。

 

「夢物語なのはわかっているんだ。地位も何もない、ただの俺達で暮らしたいと。俺が外で働いて、シャルには家を守ってもらって。なんでもない事で笑って、喧嘩して。そんな日々を暮らしてみたいと」

「うん。あたしも何回も思っているよ。貴方とそんな風に暮らせたらって」

 

そんな穏やかな時間を過ごせたらと。

叶わない夢を見る。

 

「来世に期待しましょう。あの神がちゃんと仕事してくれたら、だけど。来世でも、あたしを見つけてくれる?」

「勿論だ。俺の運命の女(ファム・ファタール)。誰にも渡すものか」

 

あたしを抱き寄せ、ナズナは口付けを落としてくる。

 

嬉しい、幸せだという感情があたしの胸を埋め尽くした。

 

◆◆◆

 

「えー…紹介する。私の旦那の立花裕里(たちばなゆうり)。私達の娘である(ゆえ)(ゆたか)。それと、私の妹である葵。そこに座っているのが、葵の使い魔になった冬夏(とうか)。その隣にいるのが、さっきお前を襲おうとしたルカ。向かいにいるのが、私の生徒のアイラとヨシキだ」

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