「シャルお前…だから理性が飛ぶような事を言うのはやめてくれ…っ! アルコールが入って気が大きくなるのはわかる。楽しいのもわかる。だが、発言には気をつけろ。お前、記憶が無くなる酔い方はしていないな? 後で思い出して悶絶するのはお前だぞ?」
肩に手を置かれ、説得されてしまった。
提案しただけで、何でこんなに言われなくてはならないのか。
大人しくベッドに座って待っているように言われ、ナズナは先にお風呂へいってしまう。
「別に、悶絶なんてしないもん…」
ターニャだってそこまで、あたしに気をつけてはいないだろう。
異世界だから何してもバレないだろう、なんて気持ちもある。
だからこそ、お酒の力を借りて誘ってみた。
はしたない事とは承知の上で。
大切にしてくれているのはわかるのだが、それにしたって。
「ナズナのバーカ…」
あたしはポスンと、ベッドに横たわる。
恥を忍んで誘ったんだから、応えてくれてもいいじゃん…っ!!
ベッドに横になったからか、うとうとし始めたあたしは、そのまま寝てしまった。
◆◆◆
「ん…」
朝の光で目が覚める。
途端に襲ってくる頭痛に、あたしは顔を顰めた。
あー、これが噂の二日酔い…。
あんまり酷い人だと、もう二度と飲むかって思うくらいの頭痛らしいけど、そういう人に限ってまた飲むのよね…。
頭を押さえて起き上がる。
隣を見ると、バスローブ姿のナズナが眠っていた。
あたしはと言えば、昨日と同じ姿。
流石に、着替えさせようとはしなかったらしい。
それに昨日の事も思い出していたが、やはり悶絶はしなかった。
旅の恥はかき捨て、って言葉を知らないのかこの人は。
ナズナを起こさないように、ベッドから出る。
あたしはそのままバスルームに向かった。
全て脱いでから、シャワーの栓を開ける。
すぐに暖かいお湯が降ってきて、あたしは頭や体を洗いつつ、お風呂にお湯を貯めた。
朝風呂最高!!
湯船に浸かって、そんな事を思う。
元々の世界ではこんな事している暇はなかったし、旅行先でもそんな時間は取れなかった。
大体、旅行という名の懇談会だったわけだし。
篠原の家の仕事の一環だったわけだし。
「ヴェスタ神、あなたに感謝します、ってか?」
あれを調子に乗らせたらもっと酷い事が起きそうなので、今回はここまでにしておく。
そして、はたと気付いた。
「あ、服と下着どうしよう」
そこら辺をカヅキに確認するのを忘れていたのだ。
最終手段、創造魔法であたしの分は作るとして、ナズナのはどうしたら…。
うんうん唸りながらお風呂から上がると、新しい下着と服が一式置いてあった。
バスタオルで髪とかを拭きつつ、少し扉を開けてナズナの様子を見る。
彼はまだ寝ているようで、これを用意したのはナズナではない事が分かった。
なら、誰が?
しばらく考えていたが、湯冷めしそうなのでありがたく着させてもらう。
「う…サイズぴったりって…」
引き攣り笑いが出る。
軍服みたいな物に、ロリータが組み合わさったような服。
フリルがたくさんで、さらに顔が引き攣った。
確かにあたしに似合うとは思うけど、普通の服のチョイスは?
「これ誰用意したの? せめて声かけて欲しかったかな…いや、声かけられても驚くだけなんだけど」
着替えて出てくると、先程まではなかったナズナの替えの服が机に置いてあって、更にあたしは驚く。
気配を全く感じなかった。
カヅキの昨日の様子からして、彼女自身が用意したものではないだろう。
「カヅキのとこのメイドは、隠密行動も出来る人達ばかりなのかしら…」
少し、いや若干引く。
隠密行動が長けてるのは優秀だとは思う。
諜報が必要な時は大いに役立つスキルだろう。
でも、声をかけないで置いていくのは流石にちょっと、とは思った。
「ナズナ、起きて。鍛錬したいから、カヅキに許可もらいに行きたいの。ナズナ」
彼を揺さぶってみるが、お酒の力のせいで起きる気配が全くない。
普段ならここまで深く眠る事はないので、あたしはナズナを起こす事を諦めた。
テスタロッサの家に来てからも、重要な書類とかをあたしの隣で処理していた事を思い出したのだ。
気を張っていた分、ここは安心出来ると寝入っているのだろう。
本当に穏やかな寝顔だこと。
椅子に座り、彼の寝顔を見続ける事数分。
扉がノックされたので、あたしは対応に出る事にした。
「はい、どちら様ですか?」
「おはようございます、ナツキ様。朝食のご用意が出来ましたので、宜しければ食堂までご案内いたします」
扉を少し開けると、昨日屋敷を案内してくれたメイドさんが立っている。
あたしは少し待って欲しい旨を伝えて、ナズナを本気で起こしにかかった。
◆◆◆
メイドさんの案内で食堂に着くと、そこには既にアオイちゃんとユエちゃん、ユタカちゃんが食事を終えて、ゆっくりしているところだった。
「おはようございます、皆さん」
「おはようございます、ナツキさん。ナズナさん…は、まだ眠そうですね」