「確かに、俺は彼女よりも弱いし守ってもらう立場の男だ。だが、誰よりも彼女を愛している。いつになるかはわからないが、全ての難敵から彼女を守りたいと思っている。お前には、その覚悟があるのか?」
「覚悟なら、あるよ!」
いやいや、会って数十分なのに何言ってんのこの人。
何?
覚悟って。
ナズナのと一緒にしないでくれない?
怖い。
あたしは若干鳥肌が立ち、カヅキの腕に抱きつく。
「どうした? ナツキ」
「ごめん、怖い。アオバ君が怖い…」
あたしの様子にカヅキはマズイものを感じたのか、あたしを軽く抱きしめ、ナズナに目線を向けた。
「お前ら早く片をつけろ、ナツキが怯えてんじゃねぇか」
ナズナは横目でそれを見て、詠唱を始めた。
あたしの顔を見て、一気に片をつけようと思ったのかもしれない。
「出でよ神ノ雷、神の裁きにて我が敵を討ち滅ぼさん…シャルのためだ、死ね!!」
「っ! やらせるか!!」
ナズナの詠唱が終わるや否や、アオバ君はナズナに突っ込んでくる。
だが一歩、遅かったようだ。
「
あたし程ではないが、轟音と共に避けようの無い豪雷がアオバ君を襲う。
衝撃と一緒に巻き上がった土煙が晴れると、黒焦げになったアオバ君だった物が、地面に倒れ伏していた。
「あ…」
あの瞬間がフラッシュバックしてあたしは立っていられなくなり、カヅキの腕から滑り落ちていく。
「ナツキ!」
「シャル!!」
カタカタ震え出し、あたしは自分を抱きしめる。
怖い、怖い怖い怖い…!!
嫌だ嫌だ…っ!!
ナズナ…っ!!
「シャル! 目を開けろシャル!!」
涙が溢れ蹲るあたしの肩をナズナが掴み、起こしてくる。
言われた通りに目を開けると、目の前にはナズナがいた。
「ナズ、ナ…」
「シャル。俺はここにいる。大丈夫だ、いなくならないから…」
そう言って彼は、あたしを抱きしめながらキスをしてくる。
ナズナの体温と、柔らかい感触に、あたしは段々落ち着いてきた。
彼の肩を軽く叩いて、離れてもらう。
「ごめん、また…」
「平気だ、これくらい。シャル、すまない。あの光景はまだ、お前には辛いものだったな。別ので倒しておけば良かった」
抱きしめながら、あたしの頭を撫でてくれるナズナの肩に顔を埋める。
上の方から咳払いが聞こえ、そう言えば授業中だった事を思い出した。
「ナツキ、結界解いてやれ。アオバをあのままにしておけん」
「あ…ごめんなさい…」
指を鳴らし、結界を解く。
瞬時に黒焦げだったアオバ君が元に戻った。
それに対して、ホッとする。
「決闘の勝者はナズナだ。誰か、アオバを医務室へ」
「じゃあ、僕が」
アオイちゃんが手を上げ、アオバ君を抱え上げた。
ヨシキ君も、一緒について行ったのを見送る。
「シャル、お前も。良いよな、カヅキ」
「仕方ない。流石にその状態でこの後の授業は出来んだろう。帰っていいぞ」
カヅキからのお許しが出たからか、ナズナはあたしをお姫様抱っこするとそのままグラウンドの入り口まで行き、止まった。
「すまん、カヅキ。帰り方がわからないのだが」
「はぁ…。迎えを呼んでやる、校舎の入り口はわかるな? …わからない顔してやがるな。わかった、私が悪かった。お前達、自主練してろ。こいつらを屋敷まで送ってくる」
カヅキが片手を上げる。
途端、影が壁一面を覆った。
「入れ。直通で屋敷に繋がってる」
「ごめんね、カヅキ。あたし…」
ちょっとは大丈夫だと思っていたのに。
この体たらくとは。
本当に情けない。
落ち込んで俯くあたしの頭を、彼女は撫でる。
「お前らの世界の座標もわかっていないから、まだ時間はある。ゆっくり療養しながら、トラウマも克服していけばいいさ。ナズナ…お前本当にとんでもない事してくれたな」
「すまん…」
こればっかりはナズナも反論出来ないようで、素直に謝っていた。
あたし達はカヅキが作ってくれた屋敷への帰り道を通って、帰ったのだった。
◆◆◆
ゆったりした部屋着に着替えて、あたしはベッドに横たわる。
その横にナズナが座り、あたしに口付けを落としてきた。
「約束だったからな」
頬を撫でて微笑んでくれるナズナに、あたしも微笑み返す。
あたしは、彼の名を呼んだ。
「ねぇ、ナズナ。弱くなってしまったあたしでも、愛してくれる?」
「何を当たり前な。俺は、シャルがシャルだから愛したんだ。力が強かろうが、人離れしていようが、それこそお前が醜かったとしても、俺はお前だけを愛しているよ」
あたしは彼の首に腕を回し、囁いた。
悲痛な声で。
「お願い…ターニャには黙っているから…ナズナを、あたしに刻み込んでほしいの…すぐ消える証じゃなくて、この体に。お願い、ナズナ…」
「シャ、ル…お前…」
顔を見られたくなくて、腕の力を強める。
戸惑っている彼の声に、懇願した。
多分、トラウマを消すにはこれしか方法がないと思う。
ナズナには違反をさせてしまうけど、ターニャも、カヅキも目を瞑ってくれるんじゃないかと、淡い期待をしてしまう。