転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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131.催眠治療を受けます

目が合った彼の瞳は、少しの熱を帯びているように見えた。

 

◆◆◆

 

通りがかりのメイドさんに事情を話し、お盆を受け取ってもらった後、カヅキの書斎まで案内してもらう。

 

「カヅキ、あの…」

 

中に入ると、革張りの椅子に足を組んで座っているカヅキが見え、あたしは話しかけた。

彼女はあたしを視認すると、盛大にため息をつく。

 

「お前、性急すぎやしないか?」

「ごもっともです…錯乱してました。ご迷惑おかけしました…」

 

あたしが項垂れていると、彼女は自分の横にある椅子を指差し、座れと言ってくる。

大人しく従うと、カヅキはあたしの頭を掴んだ。

 

「…カヅキ?」

「良いか、ナツキ。今からお前に催眠を施す。解ける条件はそうだな…ナズナと初夜を過ごしている最中にしてやるよ」

 

迷惑!

それ凄い迷惑!

 

「というか、何の催眠を施すつもりよ。確かに、あたしの言動で迷惑はかけたけれど…」

「お前のトラウマを一時的に封じるやつだ。ナズナからお前の言動を聞いて閃いた。ナズナとヤってる最中なら、癒されるだろ?」

 

それはそうだろうけど言い方!

元男なんだけど、あたしの婚約者だったの忘れてるのかしらこの人!

 

顔を赤くして、あたしは目を逸らす。

そんなあたしの様子を見て、カヅキは笑った。

 

笑い方はあの頃そっくりなのに、あたし達の関係は変わってしまったな、なんて少し感傷的になる。

 

「良いか、ナツキ。深呼吸しながら目を閉じろ。私が数を数えるから、それに合わせて呼吸を繰り返せ、良いな?」

 

そんな簡単な事で催眠なんてかかるのかしら?

 

あたしは言われた通りに、呼吸を繰り返し…彼女の手を叩く音で目を開けた。

 

「…え?」

「今日はここまでだな。もう帰っていいぞ。大丈夫になるまで毎夜繰り返すからな」

 

あたし、意識飛ばしてた?

いつから?

 

時計を見ると、あたしがカヅキの部屋を訪れてから数時間経っている。

 

「え? え?」

「ほら帰れって。ナズナも心配…いや、迎えに来てるな。おいナズナ、連れて帰れ」

 

後ろにある扉が開き、聞き慣れた足音があたしの背後に来た。

そして両肩に手を置かれる。

 

「シャル、少し散歩してから帰るか。カヅキ、失礼する」

「あぁ。明日も仕事なんだ、早く帰れ」

 

ナズナが横に来て手を差し出してくれた。

その手を取って立ち上がる。

そのまま、あたしは有無を言わさず部屋から連れ出されてしまった。

 

「あの、ナズナ…迎えに来てくれて、ありがとう」

「中々帰って来ないからな、少し心配になっただけだ。あぁ、シャル。庭に少し行かないか?」

 

彼の提案にあたしは頷く。

一体どうしたというのだろう?

 

カヅキの自慢の薔薇園に来たあたしとナズナだったが、彼に手を引かれる形だったあたしは首を傾げる。

 

なんか、ナズナの様子が少しおかしいような?

 

口を開こうとした瞬間、彼に抱きしめられた。

 

「ナズナ? どうしたの?」

 

尋ねてみるが、返答がない。

身動きをしてみようとするが、思いの外キツく抱きしめられているようで、離してくれそうになかった。

 

「不甲斐なくてすまない。お前の気持ちに応えたかったんだが…」

「だから、錯乱してたんだから忘れてってば! 何? あたしが出てった後、やり過ぎたとか、カヅキに言わなければ良かったとか、そんな反省してたわけ?」

 

またナズナが押し黙る。

これは肯定しているのと同義で、あたしはため息を吐いてしまった。

 

「ナズナ…」

「すまん…」

 

なんかこっちに来てから、ナズナ謝ってばかりだなぁ。

 

あたしは彼の背中に手を回し、胸に頬擦りする。

 

「ねぇ、ナズナ。カヅキが一時的にだけど、トラウマを無くしてくれるんですって。まだ暫くかかるみたいだから、学校に行きつつのんびりしようよ。その間、あたしと貴方は王族でも貴族でもない、ただの二人になるの。いい考えだと思わない?」

 

ナズナを見上げ、微笑む。

彼は少し驚いた顔をした後、眉尻を下げて笑った。

 

「あぁ、いい考えだな。肩肘張らなくて済む。俺の女は聡明だ、天才だ。愛してる、シャル」

「褒めすぎだし…でも、あたしもだよナズナ」

 

どちらからともなく口付けを交わす。

 

月明かりしかない薔薇園で、あたし達は笑い合った。

 

◆◆◆

 

「データ出来た、喜べ帰れるぞ」

 

あの騒動から一ヶ月。

カヅキの催眠ももうそろそろ必要無くなってきたかな、なんて思っていた時だった。

 

ルカさんが、データディスクを持って現れそう言う。

 

「え、帰れるの?」

「漸くか。シャル、もうそろそろカヅキからの治療も終わるんだろう? 面倒だが、あちらに帰ろうか」

 

ルカさんが持っていたディスクを、ナズナが取ろうとして、拒否された。

 

「お前だけ帰ればいいだろ。ナツキは置いてけ」

「…はぁ?」

 

そう言えば、と思い出す。

ルカさんとナズナ、すごく仲が悪くなってたんだったな、と。

きっかけはやはり、初めて会った時の印象だっただろうか。

ナズナもルカさんも、あたしが大好きって表現してくれるが、お互いの存在が気に食わないらしい。

あたしとしては、仲良くして欲しいところではあるのだけど。

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