転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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135.精霊に会いました

あたしの肩に手を回し、顔を近づけたナズナが小声であたしにそう言ってくる。

あたしはそれを横目に、ため息混じりで返した。

 

「出来れば目立ちたくないのよ。貴方と婚姻を結ぶのは吝かではないけれど、だからって注目を浴びるのは少し嫌だわ」

「何を今更」

 

えぇ、そうですね!

目立つ行動しかしてなかったわね!

悪かったわよ!

 

深いため息を吐いて、あたしは窓の外を見る。

緑色の髪をした小柄な男の子が、空中に浮きながらあたしを見つめていた。

 

「え…?」

 

驚いて言葉を無くしたあたしに、ナズナが怪訝な表情をして、どうしたと聞いてくる。

 

「いや、あそこ…」

 

あたしが指差した方向をナズナは見るが、首を傾げられてしまう。

 

「何もいないぞ」

「え、見えてないの? 嘘でしょ?」

 

彼の方を向き、また窓の外へ目を向けると、男の子はいなくなっていた。

あたしは自分の顔を手で覆い、座り込む。

 

「シャル?」

「お姉様? 具合がよろしく無いの? 殿下、お姉様を保健室へお願いしますわ」

 

ナズナは軽々とあたしを抱き上げて、歩き始めた。

だが、具合が悪くなったわけではない。

 

初めて幽霊見ちゃった…こんな朝早く…幽霊って、夜に出るものじゃないの…?

 

そんな恐怖から、目を背けたくて蹲っただけなのだ。

 

「シャル? 大丈夫か?」

「うぅ…幽霊じゃないの、あれぇ…」

 

ナズナの首に腕を回し、更に抱きつく。

やだぁ、とカタカタ震えているとナズナが立ち止まった。

 

「シャル…お前が言ってた幽霊って、あれか?」

 

顔を上げて、ナズナが見ている方向を見る。

そこには、全身が水色の長髪の女性が立っていた。

 

「ーーーっ!!!」

 

ナズナの服を思い切り掴む。

驚きとナズナにも見えているのかという安堵感、そしてなんで朝に出るんだという恐怖感で、思考がごちゃ混ぜになった。

 

「シャル、落ち着け。お前そんな強いのに、なんで幽霊は苦手なんだ」

「スピリット系は殴れないじゃないの! あたしは聖魔法使った事ないのよ?! アンデッドなら燃やしてなんとかなるかもしれないけど!!」

 

あたしがそう叫ぶのと、女性が笑い出すのは同時だった。

 

え、笑った?

 

唖然と女性を見ていると、ナズナがため息をつく。

 

「シャル、あれは精霊だ。幽霊じゃない」

「せい、れい?」

 

とは何だ?

 

首を傾げると、雛桔梗がウィンドウで説明をしてくれた。

 

【精霊とは、この世界に存在する生命体の一つです。彼らに魔力を渡す事で、魔法を扱う事が出来ます。自らの魔力回路を使うより、彼らに渡す方が効率が良いのです。我が主は、魔力が無尽蔵にと設定されているので、彼らと会った事がないのは無理もない事かと】

「ありがとう、雛桔梗。じゃあ、さっきの緑の子は…」

 

言いかけて、服を引っ張られる感覚がし、そちらに目を向ける。

緑の子が、満面の笑みをあたしに向けていた。

 

「……この子も、精霊?」

「あぁ。シャル、降ろすぞ」

 

そう言いナズナはあたしを床に降ろすと、女性に対して跪き、頭を垂れる。

王族であるナズナが頭を下げるなんて、彼よりも位が高いという事だ。

 

あたしも慌てて頭を下げる。

 

〈良いのです、人の子よ。頭をお上げなさい。我々は、元素の精霊からお使いを頼まれただけですので〉

〈そうそう。精霊使い荒いよね〉

 

頭に直接響いてくるような声に、あたしは驚いた。

これが精霊というものか、と。

言われた通り、あたしとナズナは頭を上げた。

 

「四大精霊の二柱、ウンディーネとシルフ。元素の精霊は、何用がお有りか」

〈そこの娘を、精霊の祠まで連れてくるように、と〉

 

そこの娘、と言われてあたしは辺りを見渡した。

 

今の時間、人がここを通ってもおかしくないのに、全くと言っていいほど人の気配がしない。

では、娘とは誰の事かと考え、自分を指差した。

 

「あの、それってあたしの事ですか?」

「お前以外に誰がいるって言うんだ」

 

ナズナが呆れた目であたしを見てくる。

だって、あたしだとは思わないじゃないか。

娘なんて、この学校で何百人といるわけだし。

 

〈人の子よ。精霊の祠までの道は分かりますね?〉

 

ウンディーネがナズナに尋ねる。

彼は返事をせず、一回だけ頷いた。

 

〈よろしい。では人の子よ、待っていますよ〉

〈あんまり遅いと、罠作っちゃうからな〉

 

そう言って二人は消えた。

途端、ナズナが長いため息をついて、床に手をつきながら座り込む。

 

「え、どうかした?」

「…流石だな、シャル。あと数言四大精霊が何か喋っていたら、俺は失神していた所だった。あの圧で平気なのか、お前は…」

 

これ、褒められてる、よね?

 

肩で息をしているナズナの背を撫でた。

 

彼が言う圧なんて、あたしは感じる事が出来なかったのだが、本当にあったのだろうか?

ナズナがこの様子なので、多分あったんだろうと結論づける。

 

一限目の鐘が鳴ったが、ナズナが動けそうもないのであたしは彼の隣に座り続けた。

 

◆◆◆

 

そして学校が休みの日、あたしはナズナと共に馬車に揺られていた。

 

行き先は迷いの森。

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