転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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138.精霊の祠に向かいます

だから、と彼は続けた。

 

「お前は、請われても、絶対に、名付けを、するんじゃない。わかったな? 俺を一人にしないでくれ」

 

区切り区切り、強調するようにナズナは言う。

あたしは、わかったと彼の手に自分の手を置いた。

 

「でも、精霊になったらナズナが死ぬまで傍にいられると思うのだけど」

「シャル…それは精霊にならなくても出来る事だろう? それに、精霊は死ぬ事はない。俺は、あまりお前を置いて先に逝きたくはないんだ」

 

コツンと、ナズナはあたしの額に自分のを合わせ、あたしの何も考えていない発言に、真剣に答えてくれる。

 

「あまり真剣に考えないで欲しいのだけど。ただの冗談じゃない」

「お前の冗談が、冗談に聞こえないから言ってるんだ」

 

それは、貴方の受け取り方の問題だと思うんだよなぁ…。

 

◆◆◆

 

エルフの隠れ里の門番に話しかけると、案外スムーズに通してくれた。

どうやら、元素の精霊がエルフの里に号令を出していたらしい。

王妃様の文もその後押しになったみたいで、あたしとナズナは、すんなりエルフの里に足を踏み入れた。

 

「なんか、イメージ通り」

 

太い木の枝に、色んな家がくっついている。

所謂ツリーハウスというものだ。

そして、エルフの人達の耳は尖っている。

昔読んだ小説の中みたいだと、感想を抱いた。

 

「結構見られてるな…」

「それはそうでしょ。部外者が村に入り込んでいるんだから」

 

なんでもない風を装って歩いてはいるが、あたし達に視線が集中しているのに気が付く。

目線を合わせようともしないし、こちらなど最初からいなかったかのように振る舞っている。

 

それでも見られている感覚に、あたしは寒気に似たモノを感じてしまった。

 

「シャル、気にするな。別に交流を図りに来たわけではないだろう?」

「それはそうだけど、こうも見られてると気分が悪いわ。言いたい事があるなら言えば良いのに」

 

歴史から、人間は自分達を迫害した存在だと思っているのはわかる。

こちらが加害者だという事も。

だから、事を荒げるつもりはない。

なんで無視するんだと怒る事もない。

 

ただ、何か言いたい事があるなら、言ってもらわなければわからない。

ただそれだけだ。

 

「確か、こっち…だったか?」

 

ナズナが村の奥に行こうとする。

それを、彼の服を掴む事で止めた。

 

「多分あっちだと思う。光の精霊が手招きしてる」

「…見えるのか?」

 

この村に入った時から、姿が見えるようになっていた。

多少だが、声も聞こえる。

クスクス笑いながら、あたし達について言っていた。

 

〈蒼髪の子、人と違うね〉

〈面白い魔力の匂いがする〉

〈隣の子は、精霊の愛し子の子だね〉

〈次の愛し子はあの子かな〉

〈きっとそう〉

 

次々とそんな事を言っているが、あたしは若干無視し、手招きされた方へ歩み出す。

木々を抜けた先、開けた場所に出た。

窪地の真ん中に、洞窟がぽっかり穴を開けている。

 

夢で見た光景、そのままだった。

 

「…シャル?」

 

ナズナが怪訝そうな顔で、あたしの顔を覗き込む。

あたしは、彼の服を掴んだ。

 

「ナズナ、ここだ。あたしが夢で見た場所、ここだよ」

「……やはり、予知夢か何か習得したんじゃないか? シャル」

 

それだけはごめん被りたい。

未来予知をして何が楽しいというのか。

確かに、先が予測出来ていれば回避もしやすいだろう。

だが、何度見ても覆せない未来が見えたとしたら。

あたしは、耐えられる自信がない。

 

「行こう、ナズナ。元素の精霊が、なんであたしを呼んだのか聞きたいし」

「そうだな」

 

あたし達は滑り降りるように窪地へ足を踏み入れる。

ちなみにあたしの今の服装は、黒のジャケットに黒と薄紫が合わさったワンピースとでも言うのだろうか。

スカートの部分にフリルがあしらわれているのだが、何分スカートが少し短い。

膝丈より上とか、戦闘を行ったら中身が見えそうである。

そして、黒い皮のブーツ付きだ。

太めのヒールも付いているものだが、これあたしに似合うと思ったのかしら。

 

いや、ナズナに聞いたところで、似合うとしか返ってこないのは目に見えている。

 

ちなみに選んだのはテスタロッサのメイド達ではなく、親衛隊の人達だ。

似合うと思って、と何着か寄越されたうちの一着である。

 

ジャケットも少し大きいのか、袖の部分が何もしていないのに手の甲まであった。

ナズナ殿下も気にいると思うよ、とはカナリアの言だ。

 

そんな気遣い、いらないんだけど。

 

窪地に降り立ち、あたしは思い出した事に対し盛大にため息をつく。

 

「どうした? シャル」

「何でも…いや、あるか。ナズナ、この服どう思う?」

 

ナズナはあたしを上から下へと見た後、ふむ、と首を傾げた。

 

「いつものシャルの服にしては、結構ワイルド系じゃないか? お前、クラシック系が好きだろう?」

「あたしの好み完全把握してるっ!! もう! 好きぃっ!!!」

 

結構な大声で言ってしまったものだから、ナズナが驚いている。

ごめんって…テンション上がりすぎたよ。

 

あたしは咳払いをし、洞窟を見る。

夢の通りなら、あの場所も確かにあるはずだ。

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