転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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139.精霊を呼び出します

洞窟の中に入る前に、中の酸素と魔力の濃度を雛桔梗に計ってもらう。

あたしが前にいた世界では、二酸化炭素が洞窟内に充満し、中に入ったら即死するというものがあった。

あたしは平気かもしれないが、ナズナは絶対死ぬ。

死ぬとわかっているのに、あたしが行くと言ったら着いてきそうなのだ。

そんな危ない場所に、彼を連れて行くわけにはいかない。

というので、雛桔梗にお願いしたのだ。

 

【問題ありません、我が主。ナズナ様も入れます】

「大丈夫だって、ナズナ。行こっか」

 

あたしとナズナは、祠に足を踏み入れる。

途端、洞窟内だというのに暴風に晒された。

 

「くっ…!!」

「シャル!」

 

ナズナがあたしを抱きしめる。

風であたしが吹き飛ばされるとでも思ったんだろう。

実際立っているのもやっとだったので、助かった。

 

「ちょっと! 手荒い歓迎すぎない?! いきなり何よ?!」

〈待ちくたびれから、少し遊ぼうよー〉

 

遠くからシルフの声がする。

確かに呼び出しを受けてから一週間は経っていた。

だが、精霊と人との感覚は大きな差があると思っている。

人にとっては長い時間だと思われるが、精霊にとっては一瞬の事だろうに。

 

「何が待ちくたびれたって言うのよ?! どうせ退屈だからでしょう?! あぁ、もう!! いい加減風を止めなさいよ?!」

 

あまりの暴風に声が大きくなるが、シルフはクスクス笑うだけで止める様子もない。

そっちがその気なら、こっちだって考えがある。

あたしは自分の手を噛み、血を滲ませた。

 

「シャル! 何を…!」

「黙ってて。我、希う。我が血と引き換えに、彼の者を止めよ。来い、エアリアル!!」

 

頭をよぎった事を実行してみる。

それは巧くいったようで、あたしの足元に魔法陣が展開された。

そして頭上に巨大な鳥のようなものが現れる。

 

名付けるなら、精霊召喚というものだろうか。

 

エアリアルはこの暴風の中、シルフを見定めたようで彼に突っ込んで行った。

 

〈うわ、やめろよ! こっち来るな! つつくな!!〉

 

あ、そこにいるんだ。

 

あたしの血を媒介にしている為か言う事を聞いてくれるようで、エアリアルはシルフを突きまくっているらしく、風の勢いが段々と弱まってくる。

治った後に見たものは、エアリアルの足に両腕を取られ、髪をその嘴で引っ張られているシルフの姿だった。

 

「…で、なんでこんな事したのよ」

 

涙目になっているシルフに、あたしは尋ねる。

多分鬼の形相だったのだろう、シルフの顔が恐怖に引き攣った。

 

〈げ、元素の精霊が出迎えてやれって言ったから…〉

「だからってこんな出迎え方はないでしょう?!」

 

怒鳴りつけると、ビクリと彼の肩が跳ね上がる。

まぁまぁ、とナズナが間に入ってきた。

 

「シルフの思考回路は、子供と一緒だと習った事がある。彼なりの歓迎だろう。ここは矛を収めたらどうだ、シャル? 子供の悪戯に目くじらを立てても仕方ないだろう?」

「…そうね。大人げなかった…って言うと思った? 悪い事をしたらそれ相応の罰を与えなければならない、ってターニャも小さい頃のカヅキに言っていたわ」

 

悪戯で、長谷川の物を壊したカヅキに彼女はそう言い、彼のお尻を約100発くらい叩いていた記憶がある。

お嬢様もこうなりたくなければ、善悪の区別はつけた方が宜しいですよ、と脅されもしたのだ。

 

小さいし、思考回路が幼いからと、あたしは容赦するつもりはない。

 

「大精霊だからなんだというのよ。あぁ、自分が世界中の風を止めるとかなんとか抜かすなら、貴方を消してエアリアルを据えるからそのつもりで」

〈お前ならそれ出来そうだから、反抗はしないよぅ…〉

 

どうやら反省しているようで、しょんぼりと肩を落としている。

ナズナも苦笑しながらあたしを見つめていた。

 

「さて、償いとして元素の精霊の元に案内してもらいましょうか? あと、貴方と同じ思考回路をしている精霊は、もういないわね?」

〈イフリートが、腕試ししたいって…〉

 

もう一人いたか…。

元素の精霊には悪いが、ここら一帯吹き飛ばしても構わないだろうか?

 

「シャル、物騒な事を考えるんじゃない」

「まだ何も言ってないでしょう? というか、あたしの思考を読まないでよ。読心術の心得でもあったの、貴方?」

 

ジト目でナズナを睨みつけると、彼は肩を竦めた。

何を馬鹿な事を、といっている感じがして、彼の腕を軽く叩く。

 

「痛っ! あのなぁ…読心術を使えるならな? お前の思考を読んで、告白せずに外堀から埋めてるんだ。お前が逃げられないようにな。そうじゃなかったから、俺はお前に告白したんだろうが」

「ご、ごめん。ごめんだから、肩掴んで寄らないで。ナズナの顔も好きだから、近寄られるとその…照れる…」

 

顔を背けてそう言うと、ナズナは盛大なため息をついた。

思考回路が残念でごめんなさい…。

 

「お前の顔だって、美しいんだぞ。悟られないようにしてはいるが、俺だってお前の顔も好きなんだからな」

〈イチャつくんなら、僕帰って良い?〉

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