ダメに決まってるでしょ、と逃げようとしていたシルフをエアリアルに再度捕まえてもらう。
「さて、次はイフリートと戦わなきゃいけないのか…他の大精霊は止めてくれないわけ?」
〈ノームは基本的にノンビリしてるし、ウンディーネもノンビリしてるし。そいつらは、お前と戦おうとは思わないと思うよ。あと僕らは、お互いの事は基本的にどうでも良いんだ。だから、止めようって発想にはならないかな〉
それは何よりだ。
四大全員と戦わなければならないなんて、面倒この上ない。
あたし達はシルフの案内で、さらに最奥に向かう事になった。
◆◆◆
〈よく来たな、人の子よ! 我はイフリート!! さぁ、我と戦え!!〉
シルフに案内された先、断崖絶壁の下がマグマになっているような場所に辿り着く。
その名前の通り、イフリートはどうにも暑苦しい精霊のようで、あたしは辟易した。
「なんで戦わなきゃいけないんですかね? 腕試しって聞いてますけど、する必要あります?」
〈怖気付いたか人の子よ! それでは元素の精霊も嘆く事だろうなぁ!!〉
ダメだ、この精霊。
人の話を全くもって聞いちゃいない。
自分が戦いたくて仕方ない、って思考でもしているんだろうか?
傍迷惑な。
「ナズナ、今回は危なそうだから後ろに隠れててもらえる? 貴方が火傷を負ったら、あたし死ねるかもしれない…」
「いや、それは俺もなんだが…」
なんで自分は除外されてるんだと、ナズナから非難めいた視線を感じる。
神から力をもらっているのだから、除外しても良いではないか。
それに、あたしは人を半分辞めている。
それでも人扱いしてくれる彼が、本当に愛おしい。
だからこそ、怪我をしてほしくはない。
〈では行くぞ!!〉
「レヴィ、ルティ、足止めお願い」
あたしはテスタロッサの屋敷に控えている二人を呼び出した。
あたしの背後に現れた二人は、イフリートに対して攻撃を始める。
〈ぬぅ! 多対一とは! 卑怯な!!〉
「何が卑怯か。大精霊が人に戦いを挑んでいる時点で、こちら側が不利な事、理解していて?」
あたしは魔法陣を展開し、今回はナイフ状にした爪で自分の手を切り裂いた。
ナズナが痛そうにこちらを見ていたが、あとで回復魔法をかけて直すので、お小言は後にして欲しい。
魔法陣を展開し、そこへ血を落とす。
「我、
雪の精霊、スネグーラチカを呼び出した。
しかも複数。
彼女らにやってもらう事は、この暑苦しい環境を極寒に変えてもらう事。
それだけだ。
彼女ら自体に戦ってもらうわけではない。
足場が不安定すぎて、イフリートの攻撃を上手く避けれる自信が、あたしにはなかったからだ。
落ちたら流石に死ぬだろうし。
マグマが冷えて凍ったら、落ちてもなんとかなると踏んだのだ。
レヴィとルティはお互いの事を知り尽くしているから、連携しながら攻撃が出来ている。
ルティは空も飛べるから余計に。
あたしが一人で行うとなると、雛桔梗を駆使しなければならない。
もし、イフリートの火炎が雛桔梗を灼いたとしたら、修復に何日かかる事やら。
それ以前に、雛桔梗にも、レヴィやルティにも前線に立って欲しくはないのだけれど。
辺りが氷一面になったところで、スネグーラチカ達がこちらを見る。
あたしは頷いて、彼女らを元いた場所に還した。
「寒っ! 寒いぞ、我が主!! 攻撃が鈍るではないか!!」
「我が妻、準備が整ったようだ。引くぞ」
なんで引かねばならん、とルティに怒鳴った彼女だったが、無理矢理転移で連れて行かれる。
〈ククク…此れ式の寒さで、我が止められると思って…〉
「火を消すなら水でしょう? でも貴方の炎は水だけじゃ消火出来ないと思って。スネグーラチカに整えてもらったのよ。というわけで、雛桔梗。フェーズ10」
【制限解除致します。ご武運を、我が主】
リミッターを全解除してもらう。
あたしは片手をイフリートに向けて、唱えた。
「
氷の塊を纏った暴風がイフリートを襲う。
彼は自分の顔を守るように、腕を交差させて防いでいた。
〈ぐぅ…! だが、此れ式…!〉
「誰がこれだけだと言った?
氷の槍を複数生成し、イフリートへ飛ばす。
炎を出して応戦しようとしていたが、それらも氷の塊が消していった。
槍が彼の体を傷つけ、八つ裂き寸前になった瞬間。
〈イフリート、もう良いでしょう。実力は充分に分かったことだと思いますが〉
何もない空間から、ウンディーネともう一人、老人の様な人が出てくる。
あれは誰だろうか?
〈良いや、まだだ! まだ我は戦える!!〉
〈頭に血が昇るのは、貴方の悪い癖ですよイフリート。元素の精霊も嘆いておいででしたので、ノーム。何とかしてもらえませんか?〉
自分で何とかしないの?!
あたしとナズナは、思わずお互いの顔を見てしまった。
そして、彼女の方を見る。
多分、同じ表情でウンディーネを見ていた事だろう。