転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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142.元素の精霊に名前をつけます

え、カヅキにリミッター付けてもらっているのに、そんな事になりかねないの?

嘘でしょ?

 

あたしの思考を読んだのか、元素の精霊は呆れた目であたしを見る。

 

〈人の子が作った装置に、何の意味がある。そんなもの、お前の感情が最高潮に達した時には意味等なさない。大丈夫だ。お前の私生活など覗かない。人間の営みには興味があるが、四大に怒られたくはないからな〉

 

怒られる事、あるんだ。

一番偉いはずだと思っているんだけど、貴女の事。

 

全く声に出さずに会話をしているものだから、ナズナがソワソワしているのが、気配でわかる。

本当に心配性だな、あの人は。

 

〈そろそろ返さねば、あの人の子がこちらにやって来そうだな。娘、私に名前をつけてくれ。それで、私はお前と同調出来る〉

「ナズナから、精霊に名付けを行うと死ぬみたいな事言われたんだけど」

 

そう言ったあたしに、元素の精霊は少しポカンとした後笑い出した。

 

〈それは、魔力量の少ない者の話だ。精霊の方が人より魔力の質も量も多い。だから、名付けを行うと同調した後魔力を吸われて死ぬんだ。だが、お前は問題ない。今まで生きてきた中で、見た事もないような魔力の量と質を保っているのだからな〉

 

彼女がそう言うなら、そうなのかもしれないが。

本当かと疑ってしまう。

 

〈妖精と違って、私達は嘘はつかない。だから娘、妖精に会った時は気を付けろ。この森にも潜んでいたりするからな。あの人の子を取られかねないぞ〉

「ご忠告どうも…」

 

彼女の言葉を信用する事にしよう。

あたしはそう決めて、彼女を見つめた。

 

金色の髪、ピンクに近い赤色の瞳。

その瞳の中には、星が煌めいているような光が見える。

それを見つめていると、不思議と心が落ち着いてくるような気がした。

 

「…ミラ。貴女の名前は、ミラ」

 

不思議なもの、という意味をもつ星。

くじら座の胸辺りに輝く星。

彼女の不思議な雰囲気と、瞳に輝く星からそう名前をつける。

 

〈ミラ…うん、良い名だ。人の子よ〉

「人の子じゃなく、シャルロット。仲のいい人達は、あたしの事をシャルって呼ぶわ」

 

元素の精霊ことミラは、あたしをキョトンと見ると、フワッと花が咲くような笑顔を向けてくれた。

 

〈シャル、いつでも来るといい。エルフには歓迎するよう言っておく〉

「シルフみたいな手荒い歓迎は無しにして頂戴ね」

 

え、という顔をミラはする。

聞いていなかったようで、あたしはここに来るまでの経緯を説明した。

 

その後、ミラはシルフを怒り、その余波でナズナが気絶する羽目になったのは、言うまでもない事だろう。

 

◆◆◆

 

「今日は散々だった…」

 

帰りの馬車の中で重いため息をつきながら、ナズナが呟いた。

 

目を覚ましたナズナと共に精霊の祠を後にし、エルフの里を抜けてまた迷いの森へと入る。

今度は帰り道なので、逆の順番を行けば良かっただけなのだが、運悪く妖精に見つかった。

ナズナの見目が麗しいのはわかっていた事だが、こう、女性に絡まれている彼を見ていると、女性に殺意が浮かぶというか。

妖精としては、ナズナを誘惑してその精を貰いたいのだろうが、彼としては鬱陶しいだけだったようで、閉口している。

 

「そこの妖精ども、存在ごと消されたくなかったら私の夫から離れろ。それとも、その命惜しくないと言うか?」

 

あたしの迫力に、妖精達がナズナから離れて散り散りに逃げていった。

彼も固まってしまったのは、まぁ、仕方ないというか。

少しは慣れてほしいものだが。

 

「ナズナ、別に貴方に怒ったわけではないのに。そんなに怖い?」

「怖い。俺の勝手なイメージだが、いつものシャルは芯が強くて愛らしくて美しく、表情がコロコロ変わって可愛いと思っている。だが、あのシャルはとても冷たい。氷のように感じる。何者をも寄せ付けない、誰も信用も信頼もしないと言っているようだ。そんなシャルは…見たくはないな」

 

そんな評価になるのか、あれ。

あながち間違ってはいないけど。

 

あたしは総帥になる予定だった。

上に立つという事は、それだけ責任も重い。

隙を見せたら足元を掬われる。

即ち、傘下の会社ごと潰される。

何万人という人が路頭に迷う事になる。

 

そうさせるわけにはいかない、隙を見せてはいけない。

だから誰も信用も信頼もするな。

それがお父様の口癖だった。

 

「貴方に向ける事はない…と思いたいけど」

「向けないと言い切ってもらいたいんだが…」

 

状況によっては、向ける可能性も否めないので断言出来ない。

あたしは曖昧に笑うが、ナズナがあたしの太ももに顔を埋めてきた。

 

「な、何やってるの、貴方は」

「シャルがやらないって言うまでこのままだからな」

 

子供なのかしら、この人は。

仕方ないな、と言葉を紡がず苦笑しながら彼の頭を撫でた。

 

「大好きだよ、ナズナ」

「…俺も」

 

城に着くまで、あたしは彼の頭を撫で続けた。

まぁ、城に着いて早々、騎士の人に引き剥がされ連れて行かれてしまったが。

政務が滞っているらしい。

頑張れ、ナズナ。

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