いつもはルティが作ってくれてるのだが、今日は呼んでも来なかった。
レヴィを呼んでも来なかったので、二人で何かしているのだろう。
仲がいい事で結構。
「ん? 俺が贈るつもりでいたんだが…迷惑か?」
「え…? むしろ、良いの? 逆に聞きたいんだけど、迷惑じゃないの?」
席に座り彼に尋ねると、首を横に振った。
今日はパスタにしたが、彼はフォークをパスタに刺しクルクルと回していく。
「俺のコーディネートで着飾るシャルが見たい。あとは俺の髪色も入れるつもりだが…ターニャが許すか…?」
「許すと思うよ。お嬢様を綺麗にするのは私の仕事です、とは言いそうではあるけど。そんなに不安なら、ターニャに聞いてみる?」
そうしてくれ、と言われたので食事が終わった後ターニャに雛桔梗から通話をかけてみた。
数コールの後ターニャが出たので、あたしはナズナから提案された事を伝える。
『それのデザインによっては、却下します。お嬢様が輝くようなドレスでなければ認めません』
「わかった。あとでデザイン画送ってもらうように伝えるね。遅い時間なのにありがとう、ターニャ」
いえ、と言ってターニャは通話を切った。
いつもなら、少しお小言が入るのに今日は珍しく切られてしまい、あたしはキョトンとなる。
「……いやー…ターニャにも春が到来したのかしら」
春は人を陽気にさせる何かがあるらしいし、ユキヤ君の件もあるし。
うーん、と伸びをしていると後ろから抱きしめられる。
そんな事をする人は、この部屋には一人しかいないのであたしは彼を見た。
「どうかした? ナズナ」
「ターニャと話終わったんだろう? なんて言ってた」
あたしの頭に頬擦りする彼に、この人の愛情表現は犬みたいだなと思ってしまう。
「ふふ…くすぐったいよ、ナズナ。とりあえず、デザイン画送れって。それ見てから判断するって」
「そうか。シャル」
あたしから手を離し、肩を掴んで自分の方を向かせると、ナズナはまたあたしを抱きしめてきた。
「あともう少しだ。もう少しで、お前と婚約出来る。やっとだ。長かった…」
「ナズナ…」
あたしの腰と頭に手を回し、彼は深い抱擁をしてくる。
ナズナの背中に手を添え、あたしは微笑む。
「そうだね、長かったね。でも、貴方と部屋が別になってしまうのは少し寂しいわ」
「…婚約者でも一緒に住めるよう、校長に交渉してみるか…」
いや、その前にターニャが許さなさそうだが。
婚約してもどこまで許してくれるか分からないのに、流石にそれは駄目ではないだろうか?
「ナズナ、ターニャにお伺いたててからね?」
「わかってる…」
あたしは、少し肩を落としてしまったナズナの頭を撫でた。
◆◆◆
卒業式当日。
あたしはテスタロッサのメイド達に、寮の自室でナズナから贈られたドレスを着付けてもらっていた。
紺青色のドレスに、ナズナの髪の色である金色が刺繍されている。
完璧に肩が出ているので、白色のレース生地のショールを羽織った。
髪もアップにしてもらい、これもナズナが贈ってきた紫の宝石がついた髪飾りをつける。
ヒールもあたしの足に合わせており、ガラスの靴を彷彿とさせるような透明なもの。
しかしこちらも、銀色の装飾やらが施されて結構煌びやかとなっている。
足にはネイルがしてあり、青色の中に金の星が散りばめられていた。
「お嬢様、いつにも増して美しいです…!!」
ルーティが目をキラキラさせて、あたしを褒め称える。
他のメイド達も、うんうん、と頷いてくれていた。
「みんなのお陰よ、ありがとう」
滅相もございません、とメイド達は頭を下げてくる。
そんな時、部屋の扉がノックされた。
リアラが扉を開けようとしたが、あたしはそれを制止する。
「あたしが開けるわ。一番に見せたいの」
あたしがそう言うと、メイド達は隅の方に下がって行った。
扉を開けると、王族専用だと言っていた黒地に金の刺繍入りの軍服に、片方の肩には赤く、しかし少し短いマントがかかっている姿のナズナがいる。
いつもはおろしている髪も、後方に撫で付けてあるのか、彼の顔がいつもよりはっきり見えて、あたしは思わず顔を逸らしてしまった。
「…似合ってないならそう言っていいぞ」
ナズナはそう言うが、あたしは違うと否定する。
「違う…格好良くて…直視出来ないの…。やだ、心臓、もつかな…」
ドレスと同じ色のロンググローブをつけた手で顔を覆う。
ドクドクと、心臓が鼓動を打つ音が煩い。
ナズナが、あー…、と声を出す。
「お前も、綺麗だ…その言葉、俺が言いたいくらいだぞ、シャル…」
顔を上げると頬を赤く染め、あたしから目を逸らしているナズナの姿が映った。
その姿を見て、あたしは少し笑ってしまう。
「ふふ…似た者同士ね、あたし達」
「そうだな。では、エスコートさせてくれ俺の姫」
ナズナが腕を差し出した。
その腕にあたしは手を絡める。
「お願いします、あたしの王子様」
ナズナにエスコートされ、会場に入った。
途端、歓談していた声が一斉に消える。
「…なんで?」