【試運転を行いますか?】
『あぁ、うん。どれくらいの性能なのか、試してみたいわ』
雛桔梗は了解と返すと、鎧が全て分解され、あたしの体に装着されていく。
ただ、ちゃんと装着されるわけではなく、胴体と頭はガラ空き状態。
胴体部分の鎧はといえば、何か変形されて宙に浮いている。
『これ、何かしら?』
【無線式の攻撃用兵器です。魔力を凝縮させて、剣にすることも可能です。なお、機体にはスラスターもありますので、飛ぶことも可能です】
機体?
という事はこれ、機械なの?
あたしの疑問に、雛桔梗はイエスと返してくる。
「シャルロット、凄いじゃない。これ、副隊長の座返上かもしれないわね、オリヴィエ?」
「馬鹿言わないで。シャルロット、休憩時間は終わりよ。早く魔武器をしまいなさい」
クスクスと笑うレイラさんに、オリヴィエさんは呆れたようで、そう返事を返す。
「はい、すみません副隊長」
雛桔梗に展開終了を告げると、瞬時に鎧は消え失せ、足に何か触れる感覚を覚えた。
見てみると、青紫の宝石がついたアンクレットが足に付いている。
成程、これが魔武器の待機形態なのね。
納得した上で、訓練を再開する。
こんな平和な時間が続けば良いんだけど、多分無理だろうな。
あたしの勘が、そう告げていた。
◆◆◆
王都に帰還する朝。
あたしの荷物なんてたかが知れていたので、ナズナの荷物の梱包を手伝おうと彼の部屋の前に来ている。
朝ご飯は最終日まで美味しく、時間がある時厨房にお邪魔して料理を習っていた関係からか、料理人の人達へ最後に挨拶してからこちらに来た。
彼らに物凄く惜しまれてしまったけれど。
何でだろう?
「…今の時間、王族の人達朝ご飯食べてるんだっけ?」
庭に備え付けられてる時計を見る。
この世界に来て上下水道が整っているのにも驚いたが、時計とかがあるのにも驚いた。
旧ヨーロッパ風なのに、そういう所は現代に近い。
確か発明は、21貴族のうちの1人であるテスタロッサ卿だったっけ。
あたしと一緒で、転生者だったりして。
そんな事を考えていると、ナズナがこちらに来るのが見えた。
「ん? おはようシャル。どうかしたか?」
「おはよ。荷物の梱包作業手伝おうと思って」
そう言うと、ナズナは微かに首を傾げる。
「荷物なんてメイドが纏めるし、俺らはする事なんて何もないぞ」
そうだった。
王族なんてチヤホヤされて、身の回りの世話もされる超セレブな人達の集まりだった。
なら、あたしがここにいる意味はない。
踵を返そうとすると、ナズナに肩を掴まれた。
「…何よ」
「馬車が出るまでまだ時間はある。少し散歩に付き合え」
そう言うや否や、あたしの手を掴んで庭の方へ歩き始める。
こうなった彼は、何を言ったところで止まらない。
全く、強引なんだから。
少々呆れていたのだが、庭を通り過ぎ門まで来た所でおかしいと思い、ナズナに問いかける。
「庭に行くんじゃなかったの?」
「お前、使い魔の召喚をまだしていなかっただろう? 手伝う」
先日、魔武器召喚の話をしたのだけど、その場にいたかったと拗ねられたのだ。
確かに、使い魔もセットで呼ぶみたいな話はされたし、まだ呼んでないと伝えてはいたけれど。
「今から? いくら時間があるからって、使い魔の召喚は話し合いだけじゃ済まない時があるんでしょう? 時間かかったらどうするの?」
「俺専用の馬車があるから大丈夫だし、親父達に先に戻って貰えば良いだろう」
そういう問題ではない気がするんだけど。
森の中までズンズンと入って行き、屋敷から充分に離れた所で、ナズナは手を離した。
「ここなら何かあっても大丈夫だろう」
「何かって何よ。というか、何かあったらあたしが守るわよ」
そのための専属護衛ですもの。
「シャル自身がやらかしそうだって話をしている。魔力量だって、常人と違うのだろう? 王都で使い魔召喚して何かあったら、その責任は俺にもある。だからここでやろうというわけだ」
成程。
確かに、あたしの魔力量は多い。
この間もそのせいで、反省文を書かされたばかりだ。
王都で爆発でもしたら、あたしだけじゃなくナズナの首も飛ぶ可能性があるのか…。
ナズナは地面に魔法陣を描いていく。
ルナさんやカナリアが描いてくれたやつと、文言が違う。
興味深い。
王都に行ったら、魔法陣の勉強もしてみたいな。
「ほら、ここに魔力を流して、呼びたいやつをイメージするんだ。あぁ、魔武器は呼んでおけ。何があるかわからないからな」
ナズナの忠告に頷きを返し、あたしは雛桔梗を腕の部分だけ展開する。
彼が描いてくれた魔法陣にゆっくりと魔力を流していくと、光り輝き始めた。
イメージ、イメージか…。
とりあえず、死にたくはないし、ナズナも死なせたくない。
だから、あたしを守れて、力になってくれる子がいいなぁ…。
そう思っているとまた魔法陣から閃光が放たれ、治ったと思うと同時に、目の前に巨大な鱗が見えた。
「え…?」
何これ。
蒼い、鱗?
使い魔は?