転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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152.ペアリングを買いました

「…もどかしいな…あの念書さえなければ…」

「…来月には喪が明けるじゃない。どれくらいまで許してくれるかわからないけど、流石にキスくらいは許してくれる…はず」

 

そう言った直後、あたし達は笑い出した。

本当にあたし達の恋は、周りから見たら滑稽すぎるのだろう。

順調すぎるのに、何をそんなに悩んでいたのか、と。

でも、青春っぽくて、それを経験した事のないあたし達はしばらく笑い合っていた。

 

◆◆◆

 

王都内にある宝飾店に連れられて来たのは良いのだけど、あたしはナズナの顔を思わず見てしまう。

 

「ねぇ…ここって、王家御用達とか言わないわよね?」

「そうだが?」

 

キョトンとした顔で言う彼の腕を軽く叩く。

 

そんな軽く言わないで欲しいのだけど。

そうだが、じゃないのよ。

全くこの人、少し天然入ってるんじゃないかしら。

 

あたしは彼の隣で軽くため息をついてしまう。

 

あたしもナズナも、そんなに装飾品をつける方ではない。

お出かけの際に、最小限だけしかつけないタイプだ。

だけど、彼に連れられてきたここは、そんな簡単につけられるような値段で売られてはいない。

安くても、数万はしている。

金銭感覚もこちらに来てから鍛えられたようで、何千万の桁は高いと感じるようになっていた。

 

「前世なら、何千万なんて端金(はしたがね)じゃない? なんて思っていた自分を殴ってやりたい気分だわ…。高い、高すぎる…ナズナ、もう少し安い所に行かない?」

 

そう小声で言ってみたのだが、彼はあたしの話を全く聞いていないようで、指輪が並べられているショーケースを見ている。

人の話聞きなさいよ、という意味を込めて、彼の脇腹を軽くつついた。

 

「ん? どうしたシャル?」

「どうしたじゃないのよ。もう少し安いとこに行きましょうって言ってるのに、人の話少しは聞いて」

 

他にもお客さんがいるので、あたしは更に小声でナズナに言う。

彼は、何を言ってるんだという風に首を傾げてきた。

 

「俺が出すから、好きなもの買っていいぞ」

「そういう問題じゃないんだけど。それに、欲しかったら自分で買うから良いわよ。ナズナ…もしかして、あたしへのプレゼントとでも思ってない?」

 

そう言うと、ナズナは目を逸らしてしまった。

やっぱり、とあたしはまたため息をつく。

 

「貴方、ヴィオレッタ嬢の行動が一般女性の感覚だとでも思ってない? それはまぁ、好きな人から贈られるのは、全く悪い気はしないけれど…あまり高価なものだと、相手は萎縮してしまうわ」

「お前はしなさそうだったんだが…悪い」

 

萎縮はしないけど、流石に高い物は御免被りたい。

無くしたりしたら嫌だもの。

だったら安いものでも、あたしは嬉しい。

 

少し申し訳なさそうにしているナズナの手を握り、あたしは首を横に振った。

 

「あたしも出すから、ペアリング買わない? 貴方とお揃いの、欲しいと思うもの。でも、高いものはダメ。良い? 数万でも高いと思うのよ、あたしは」

 

わかった、と彼は返して、ショーケースの中の一つの指輪を指差した。

シンプルなシルバーリングだが、内側に宝石らしきものが嵌っている。

 

「これなんてどうだ? 宝石の方は変えられるだろうし、値段も手頃だと思うのだが…」

「うん。凄く良いと思う。これ買おう?」

 

あたしの提案通り、お金は半分ずつ出す事にした。

ナズナは店主さんに、青と紫の宝石をつけてもらうよう告げる。

 

「なんで紫?」

「お前の瞳の色だろ。アメジストみたいに綺麗な眼だ」

 

あたしの頬を軽く摘みながら、彼は愛おしげに見てくる。

メイクしてるから、あまり顔に触ってほしくないんだけど。

 

「お待たせしました」

 

店主さんが持ってきた指輪をナズナが手に取り、あたしの右手の薬指に嵌めてくる。

チラリと見えた宝石の色は青だった。

なんで左につけないのか、と彼を見ながら首を傾げる。

 

「右手は、婚約している証になるらしい。お前に言い寄る男共を牽制出来るからな」

「あら、それなら貴方に言い寄る女性にも、牽制になるのかしら?」

 

多分な、と言いながら、ナズナは自分の右手をあたしに差し出してきた。

残った指輪、紫の宝石がつけられているものを、彼の指に嵌める。

 

あたしはナズナの色を、ナズナはあたしの色を。

お互いが想い合っているという証を、身につける。

 

「少し、照れくさいわ…」

「そんなお前も愛おしいよ、シャルロット」

 

◆◆◆

 

お店を出るともう日が暮れかけていて、夕飯時だと感じる。

あたしはナズナに何が食べたいか尋ねると、久々にシャルの手料理が食べたい、と言われたので寮に戻って来た。

流石にこの格好で料理するのは嫌だったので、普段着の肩出しワンピースに着替える。

ナズナは少し残念がっていたけど、汚したくないのだから仕方ない。

 

「ナズナ、あの、すごい邪魔なんだけど…」

 

彼は後ろからあたしを抱きしめ、調理工程を見ていた。

やっと髪も少し伸びてきて結えるようになったので、横に流す形で結ってはいるのだが。

それとは逆方向に、彼は自分の頭を置いている。

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