転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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153.あたしの運命です

これ久々だなぁ、と思いつつも、火傷しないか心配だから離れてくれないだろうか、という気持ちになった。

 

「…シャルが俺のために作ってくれていると思うと、愛しくてな。離れ難い…」

「もう…」

 

少しおかしくてクスクス笑ってしまう。

いつも通りなのに、今日のナズナは甘えん坊だ。

まぁ、あたしもこの状態なのは嫌ではないので、彼の好きなようにさせていた。

 

「ナズナ、胡椒取りたいのだけど」

「これだな」

 

ナズナの長い腕が、調味料を取って渡してくれる。

やっぱりあたしを離す気配はない。

火傷するよ、と言ってはみたが、治してくれるだろう、と返事が返って来た。

 

治しますけども。

むしろどんな重症だったとしても、治してみせますとも。

 

あたしを抱きしめる力が少しだけ強くなった。

一体どうしたのかと、あたしは彼の頭を撫でつつ、お玉で鍋の中身をかき混ぜる。

 

「ん、どうしたのナズナ。何か不安がる事でもあった?」

「いや…幸せ過ぎて、これが夢なら怖いと思ったんだ。起きたらお前はいなくて、ヴィオレッタは健在で。お前がいないまま、あいつと婚姻を結んで…。夢の中のお前を想い続けながら、生きていくのは嫌だ、と思ってな」

 

何を馬鹿な事言い始めてるのかしら、この人。

 

鍋の味見をして、お玉をナズナへ差し出す。

スープを一口飲んだ彼は、美味しいと言った。

 

「あのね、ナズナ。あたしを抱きしめている感触も、スープを飲んだ味覚も、全て夢だとでも思う? 思うならとんだ明晰夢ね。貴方の頭の中、どうなってるのよ」

 

お玉を鍋の縁にかけ、火を止める。

彼の腕の拘束を解き向き直ると、首に腕を絡めた。

囁くように、ナズナへ言う。

 

「あたしの貴方への愛も、夢だとでも言うつもり? 妄想の中の出来事だって? やめてよ、悲しくなるわ」

「すまん、シャル。夢ではなく、現実だ。分かっている」

 

あたしを強く抱きしめ、ナズナは頬擦りしてくる。

彼の胸板を押し少し体を離して、あたしからナズナにキスをした。

あともう少しで婚約なのだから、少しは見逃して欲しい。

 

「シャ、ル…?」

「愛してるわ、ナズナ。この世の誰よりも。何者よりも。だから、あたしを離さないでね。貴方が手を離したら、あたしは消えてしまうかもしれないもの」

 

目を丸くしていたナズナはフッと笑った後、あたしの額に自分のをくっつけてくる。

 

「離しはしない。誰にも渡さない。お前は俺の運命の女(ファム・ファタール)だ。今更嫌だと言っても聞かないからな、シャル」

「あら、誰が嫌だと言ったのかしら。貴方こそ、嫌だって言っても離れてなんてあげないんだから」

 

言うわけないだろ、と彼は言ってあたしから離れ、食卓に向かった。

ふと、あたしは彼に思った事を聞いてみる。

 

「そう言えば、なんで今日はあたしの手料理が食べたいって言ったの? 簡単な物しか作れないのに。ルティのご飯の方が美味しいでしょう?」

「お前が妃教育に入ったら、食べられる機会が減ると思ってな」

 

何とわかりやすい。

確かに、普通の貴族は自分で料理なんて作らないし、それは使用人の仕事である。

あたしは少しニヤリとして、ナズナの前に具沢山のスープを置いた。

 

「つまりナズナは、あたしに胃袋を掴まれてしまったと。そう言うのね?」

「その通りだが?」

 

キョトンとした顔で返さないでよ、恥ずかしくなるじゃないの…っ!

揶揄おうとしたのに、そんな素直に返さないで欲しいわ…。

 

あたしは彼を揶揄うのを諦め、食卓に着いた。

 

作ったご飯を美味しいと言って笑顔で食べる彼を見て、もし現代でナズナと出会っていたら、あたしは恋に落ちたのかしらと考える。

カヅキが死ななければ、あたしは彼が好きだったと気付かなかった。

なら、ナズナと出会っていたら、どうなっていたのか。

 

「シャル?」

「……うん? 何?」

 

ぼんやり考えていて、ナズナからの問いかけに数拍遅れた。

彼は身を乗り出して、あたしの額に触れてくる。

 

「熱でもあるのか? ボーッとしていたが」

「少し考え事していただけよ。ごめんね、話聞いてなくて」

 

少し首を傾け彼の手を取り、頬に当てて目を閉じた。

 

ナズナの手が好き。

声も顔も、性格も、何もかも。

 

さっきの考え事の結論が出る。

現代で会っていても、多分あたしはナズナに恋をした。

実らなくても、想いに応えてもらえなくても。

彼を好きになってしまっていただろう。

それが、あたしの運命というやつだと、今は思う。

 

「シャル?」

「ごめんね、ご飯冷めちゃうね」

 

彼の手を離すと、何故か目尻を拭われた。

それが不思議であたしは彼を見る。

 

「なんで泣いてるんだ? どこか痛い所でもあるのか?」

「え?」

 

あたしは目を丸くして、自分の頬に触れた。

すぐに、頬が濡れている感覚がして驚く。

 

「え? え…なんで…? いや、意味わかんない。なんで泣いてるのあたし?」

「…シャル」

 

ナズナが立ち上がりあたしの傍に来ると、あたしを立ち上がらせ、お姫様抱っこをしてくる。

そのまま、ソファーに座った。

 

「ナズナ、あの、料理冷める…」

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