転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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154.ナズナは勝負事に強いです

「あとで温め直せばいい。シャル、今悲しいのか?」

 

その問いかけに、首を横に振る。

 

そんな事はない。

悲しいなんて、思うはずがない。

貴方といられて、今とても幸せなのに。

 

あたしの様子に、ナズナは苦笑した。

 

「なら、幸せ過ぎて泣いているのか。シャル、とても嬉しいんだが…お前、結婚式の時も泣きそうだな?」

「な、泣くはず…」

 

ないとは言えなくて、あたしは彼の胸に顔を埋める。

優しく頭を撫でてくれる彼が愛しくて、また涙が出てきた。

 

「……ナズナ、意地悪だよ」

「どこがだ? さっきのシャル程ではないと思うがな」

 

こいつ、わかっててあの返ししたな?

あのキョトン顔も演技か。

この王太子、俳優になれるんじゃないのか?

 

ムッとしたあたしは、ナズナの首に噛み付く。

 

「シャル、痛いんだが」

「痛くしてるのよ」

 

やれやれ、といった感じで、ナズナはあたしの好きなようにさせてくれた。

気が済むまでやっていいって事なのかしら?

 

少し吸いついたりして、ナズナの首に跡をつける。

口を離した途端、彼から押し倒された。

 

「な、ちょ…?!」

「俺にもつけさせろ」

 

つけさせろじゃないんだけど?!

どういう理屈で言ってんの、この人?!

 

少し抵抗したけど、ナズナの唇が肌に触れた瞬間あたしは大人しくなる。

鎖骨辺りが少し吸われて痛いが、あたしも彼にやってしまったのだからおあいこという事で。

 

「シャル…」

 

唇を離し、少し熱っぽくあたしを見るナズナから、目が離せない。

彼はあたしの右手を取って、指輪にキスを落としてくる。

 

「ナズナ…」

「…これ以上は歯止めが効かなくなりそうだ…そんな目で見ないでくれ、シャル。情欲が抑えられないだろう?」

 

あたしの頬にキスをし、彼は苦笑しながら離れていく。

そうなっても良かった、と思ってしまい、あたしは起き上がった後思い切り首を横に振ってため息をついた。

彼の思いを無碍にするなと、自分に言い聞かせながら。

 

◆◆◆

 

食後、ソファーで本を読んでいるナズナの隣に座る。

彼の肩に頭を乗せると、撫でてくれた。

 

「どうした? シャル」

「少し構って欲しいだけ」

 

ナズナは苦笑して、本を閉じる。

それをソファーに置き、あたしの手を取って一緒に立ち上がった。

 

「? ナズナ?」

「シャル、お前チェスは出来るか?」

 

ダイニングテーブルの椅子に座らされ、ナズナは戸棚からチェス盤を取り出し、見せてくる。

 

「カヅキとした事はあるけど、あたし弱いよ? むしろオセロの方が強かったかな…」

 

ルールもちゃんと説明してあったのに、半分以上ひっくり返されてしまい、カヅキが悔しがっていた姿が思い出された。

 

「一応オセロもあるぞ」

「…今度帰ったら、ターニャに聞かなきゃ…」

 

あとどれぐらい現代の知識をこちらに持ち込んでいるのか、と。

 

ナズナはオセロ盤をダイニングテーブルに置き、どちらがいいと聞いてくる。

白を選択し、先攻と後攻を決めた。

パチ、パチと、オセロをひっくり返す音が静かになった部屋に響く。

 

「ナズナ、ありがとう」

「いきなりなんだ」

 

盤から目を上げず、あたしは彼に感謝を述べた。

それに怪訝そうな表情をして、ナズナはあたしを見てくる。

 

「さっきもだけど、あたしのためを思って我慢してくれて。あたしの事を大事にしてくれて、ありがとう」

「何を当たり前な。お前は俺の愛しい女だ。大事にするのは当然だろう。お前が傷つくのは、嫌だ。俺から離れていくのは、もっと嫌だ。なら、お前を守り慈しむのは、当然の帰結だろう」

 

そうだね、とあたしは笑う。

 

貴方はそういう人だもんね。

あたしは、同じだけ貴方に返せているのかな?

貰ってばかりは、流石に嫌だけれど。

貴方からの愛に、溺れてしまいそうになる。

それがとても心地良いだなんて、何たる堕落なのだろう。

そんなあたしでも、貴方は愛してくれるのだろうか?

 

「ナズナ、大好きだよ」

「俺もだ、シャルロット。と、俺の勝ちだな?」

 

盤面が黒に染まる。

あー、とあたしは天を仰いだ。

 

「負けたー! ナズナ、何しても強いじゃないー!」

「勝負事には強いが、お前には弱いつもりだがな。魔法も、腕力も、技術も。お前に勝てた事は一度もない。お前がおねだりして来たら、何がなんでも叶えてやりたいと思うほど、俺はお前に惚れているんだ。それが弱くないなどと言えるだろうか?」

「ちょっと待って。今聞き捨てならない単語が入っていた気がしたんだけど」

 

気のせいだ、と彼は笑ってオセロ盤を片付け始める。

もうそろそろ寝る時間か、なんて時計を見ながら思った。

 

「明日からまた授業があるのかぁ…」

「毎日休みなら、俺と共にいられるのにとか思ってるのか? それはそれで嬉しいんだが…すまん、シャル。親父がな…」

 

あたしは、わかってると返事を返す。

 

ナズナが休みの度に、重要書類を送りつけてくる陛下は、一体何のお仕事をしてらっしゃるんでしょうか。

下剋上しても良いならするのに、と星空を見ながら思った。

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