転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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158.高評価をもらえたようです

「マナーやその他については、テスタロッサ家のメイド長であるターニャに教えていただきました。昔から懇意にしておりましたの。厳しいながらに、優しさもあるレッスンでしたわ。それに皆様方からすれば、私など若輩者です。そこまでお褒めいただかなくても…」

 

ターニャの名前を出した瞬間、夫人方が騒めく。

その声に、ナズナの眉が少し動いた。

煩いって思ったのだろうが、女性同士の会話などこんなものだ。

少々我慢していただきたい。

 

「まぁ! 近々テスタロッサ卿と婚姻を結ばれるという、あの?!」

「そんなに有名ですの?」

「有名も有名ですわ! 平民なのにメイド長まで登り詰めたばかりか、テスタロッサ卿の発明に一役買ったとか! 今私達が扱っている物は、全て彼女がテスタロッサ卿に助言したものだって、噂で持ち切りでしてよ!」

 

うわ…うちの情報漏洩してるんだけど。

これ、ワザと流してるのだろうか、ターニャは。

 

紅茶を頂きながら、笑みを絶やさず夫人方の話を聞く。

 

心の内では百面相しているけれど。

 

彼女にとっては、情報を統制するのも漏洩させるのも思いのままだろう。

現代と違って、ここは中世以下。

情報の正確さなど、影を持っている一部の権力者でなければ、確かめようもないのだから。

 

多分ターニャの考えを推察するに、自分が平民で貴族藉のお義父様と婚姻を結ぶに当たって身分の差があり、お義父様が自分の事で笑い者になるのを避けたかったのだろう。

平民と貴族の結婚は法で許されているとはいえ。

なればこそ、お義父様の功績にしていた家電やら何やらを、自分が助言したからだと、噂をばら撒いたのだ。

実際その通りだから、お義父様もターニャがそうするのを止めなかった、って感じかな。

 

というか、この間家に帰った時にお義父様と結婚するって話をされて、驚いたばかりだというのに。

ターニャ、本当に敵に回したくない。

彼女が敵に回るなんて、想像は出来ないけれど。

 

「彼女からの教えなら、私達がお教えする事など何も無いではありませんか。殿下、お分かりになられていましたわね?」

「一応建前で、シャルロット嬢には妃教育を受けさせ、夫人方から合格点を貰った、という証明が必要だったものでな。気分を悪くさせたなら申し訳ない」

 

ニコリと笑うナズナに、夫人方が艶めいたため息をつく。

ナズナが王太子でなければ、若いツバメにしても良いとか思ってそうだな、と表情に出さずに思った。

 

「気分が悪くなるなど…むしろ、こんな聡明なお嬢様を妃になさる殿下の先見の明に、感服致しましたわ」

「シャルロット様は、テスタロッサに入る前は殿下の護衛役をなさっておいでだったとか。文武両道で聡明なんて、良いご縁に恵まれましたわね殿下」

 

こんなに人に良い評価をされた事がなくて、あたしは少し照れる。

そんなあたしを見て、ナズナも微笑んでいた。

 

◆◆◆

 

ダンスの講師である夫人からも合格を貰え、僅か一ヶ月で妃教育を終えてしまったあたしは、ナズナが執務する横で本を読んでいる。

 

「それ面白いか? シャル」

「まぁまぁかしら…吾妻ノ国の歴史書みたいだけど。日本に似た国なのは分かったわ」

 

書類から顔を上げず尋ねてくるナズナに、感想を言う。

あたしは本から彼の方に顔を向けるが、それでも集中しているようで目も合わない。

 

「陛下は何をしているの? ナズナに政務を任せっきりで」

「遊び呆けているんじゃないか? まぁ、その方が俺にも都合が良くて助かるが」

 

ナズナは学校を卒業後、すぐさま陛下を退位させて自分が王位につくつもりらしい。

仕事熱心なのは良い事だとは思うが、少し寂しいと感じてしまう。

本来一年くらいかかる妃教育を一ヶ月で終わらせてしまったあたしが、何を言っているのかという話ではあるのだが。

 

「……ブリジットさん、本を返しに行った後少し散歩したいのですが良いでしょうか?」

「…ナズナ殿下がお許しになれば…」

 

ブリジットさんの方を見ながら尋ねるが、彼女は目を逸らしてそう言った。

一体何故? と思った瞬間、あたしはナズナの方を見る。

彼は顔を上げ、少し不機嫌そうにブリジットさんを見つめていた。

 

「ナズナ? 離れて欲しくないならそう言いなさいよ」

「………」

 

少しむすっとしてしまった彼は、また書類に目を落としてしまう。

 

全くこの人は…あたしより二歳上なのに、こういうところは子供っぽいんだから…。

 

あたしは少し息を吐き、ブリジットさんとルルさんに少し外に出てもらうようお願いした。

婚姻前の男女が密室に二人きりなんて、とはわかっているが、不機嫌になってしまった婚約者を宥めるのもあたしの仕事だと思う。

5分だけだよ、とブリジットさんは言って、二人は部屋から出て行った。

 

「ナズナ、あたしだって寂しいのよ? 忙しいのはわかるのだけど、貴方に構ってもらえないのは、つまらないわ」

 

ナズナの背後に行き、彼の背中へ頬をつける。

途端、書類を書いていた手が止まり、ペンを置いたナズナがゆっくりと椅子ごと振り返った。

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