転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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160.兄? 出現です

ノーム3の月。

あたしは目の前の光景に頭を悩ませていた。

 

「どういう事なのかしら、これ…」

 

時は遡る事、数分前。

ナズナとお昼を一緒に食べ、彼に肩を抱かれながら教室に戻っている時だった。

もう婚約者だから堂々とイチャつけると、少し浮き足立っている彼に苦笑している時、学校の庭の方で人だかりを見かけたのだ。

 

「何かしら、あれ?」

「さぁな。俺達には関係のない事だろう」

 

人だかりのほとんどは女生徒のようで、きゃあきゃあと黄色い声をあげている。

中心にいる人は座り込んでいたようで、女生徒の輪が少し広がり、その人が立ち上がった。

 

見える髪の色は、蒼。

それが見えた瞬間、あたしは立ち止まってしまう。

 

「シャル?」

 

ナズナも立ち止まり、あたしを見た後人だかりの中心部を見たようだ。

あたしと同じ髪色に、彼も驚いたようで、は? という声がナズナから上がる。

 

中心にいた人と目が合うと、その人はあたしに向かって手を振って来た。

 

「おーい、シャルロットー! お兄ちゃん困ってんだけど、助けてくんねー?」

「はい?」

 

兄?

今あの人は兄と言ったか?

 

ナズナが中心にいた人からあたしに目を向け、尋ねてくる。

 

「シャル、お前兄がいたのか?」

「いないいない!! あたしには妹しかいないわよ! 兄と呼べる存在なんて、カヅキのお兄さん方くらいしか…!」

 

それに、あたしをナツキと呼ぶならまだしも、彼はあたしをシャルロットと言った。

一体誰だ、と警戒を露わにしていると、女生徒の輪から抜け出しこちらに来る。

ヘラヘラと笑っているが、胡散臭い事この上ない。

 

キッ、と睨み付けると、苦笑されてしまった。

 

「ナズナ殿下、初めまして。シンクと申します。以後お見知り置きくだされば幸いです」

 

恭しく、ナズナに頭を下げるシンクと名乗った人物へ彼は少し目を細める。

ナズナは何かを見定めているようで、あたしは口を噤んだ。

 

「…シャル、少しコイツと話がある。お前は先に教室に戻っていろ」

 

少しあたしに笑いかけて、ナズナはシンクの方へと歩み始める。

 

「は? 出来るわけないでしょ? 何かあったらどうするの? あたしは許さないからね。専属護衛を外れたからって、貴方を守りたいって思いは変わってないのよ? 貴方に何かあったら、あたしは…」

 

ここを焼け野原にしてでも、この男を殺してやる。

 

そういう目でシンクを睨みつけながら、ナズナの腕を掴んだ。

あたしに睨みつけられた彼は、シャルロットも一緒で良いですよと言う。

他の女子生徒も、シンクが気になったようで付いて来ようとしたのを、あたしは眼光で制した。

 

近くの空き教室に入り、シンクはあたしに一応断りを入れて、教室全体に防音魔法と、誰も入って来られないよう遮断魔法をかけた後、あたし達に土下座してくる。

 

「本当に申し訳ないんですが、迎え来るまで居候させてもらえませんか?! 書類整理とかなら出来ますし、守秘義務も守ります!」

「……何個か質問していいか?」

 

ナズナはあたしを椅子に座らせ、土下座して頭を上げないシンクに対して尋ねた。

 

「何個と言わずいくらでも! 答えられる事なら何でも答えます!」

「お前のそれ、道化を演じているな? 何故だ」

 

え、これ演じてた性格だったの?

本当にこんな性格なのかと思っていたのだけど。

 

少し驚いてナズナを見上げる。

彼にそう問われ、シンクは苦笑いを浮かべながら立ち上がった。

 

「…初対面の人なら、これで案外騙されてくれるんですけど。流石ナズナ殿下ですね。観察眼が非常に宜しいようで。何故と問われても、こんな印象より軽薄そうな笑顔を振り撒いていた方が、相手は油断してくれるでしょう?」

 

先程の軽薄そうな印象から一転、策士のような表情をするものだから、この人は頭の回転がとても早いのだと理解する。

 

「答えられる事なら何でも答えると言ったな? 何故シャルと同じ髪色をしている」

「答えても良いですが、それであなた方の未来が変わる可能性がある。それでも聞くおつもりですか?」

 

聞くなら相応の覚悟をしろ、という事だろう。

あたしはナズナの方を見る。

彼もあたしを見つめていた。

 

「シャル、どうする?」

「…あたしに聞かないで。次期王の貴方の判断なら、その決定にあたしは従います。それが、将来貴方の妻になる、あたしの判断です」

 

ナズナはあたしの肩に手を置き、少しため息をつく。

そして、シンクに告げた。

 

「話せ」

「畏まりました」

 

恭しく一礼したシンクは、まずは改めて自己紹介を、と言う。

 

「シンク・ラナンキュラス・テレジアと申します。歳の頃は28。テレジア家当主と一族が斬首になったので、その称号と家名を貰いました。前の家名は、ブリリアント。シンク・ラナンキュラス・ブリリアント。この髪色は、俺が敬愛する母様譲りです…ここまで言えば、お二人にはお分かりの事かと思います」

 

ナズナが息を呑み、あたしは驚きで口元を手で覆った。

彼の言葉が真実なら、シンクはあたしの子供という事になる。

そして、家名がブリリアントという事は、彼はナズナの子供という事にもなる。

ナズナと同じ青い瞳がその証拠だ。

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