転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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161.息子らしいです

「証拠を提示しろと言われても、俺には出来ません。この身がその証拠だと言い張るしかありません。あと、俺はここの世界ではなく、並行世界のあなた方の息子です。でも、あなた方は俺を息子だと受け入れてくれた。その感謝は今でも忘れる事はありません」

「……そうか」

 

ナズナがあたしの頭を撫でてくる。

シンクの姿が滲み、あたしは自分が泣いている事に気付いた。

 

「…っ…う…っ」

 

嬉しい。

ナズナと結ばれる未来が、ちゃんと来る事が。

彼との子供が出来る事が、とても嬉しい。

 

顔を覆って俯くと、あー、とシンクが声を上げた。

 

「母様泣かせると父様に怒鳴られるんだよなぁ…。これ、帰ったら仕事放り投げられそー…」

「…シャルが嬉し泣きしてるんだ。するわけないだろう」

 

苦笑いを浮かべるシンクへ、ナズナは呆れたように言うが、いやいや、と彼は手を横に振る。

 

「父様、今以上に母様溺愛してるんですよ。四六時中側にいないと、不機嫌になっちゃって。母様、少し困ってて…」

「…あまり今と変わらないような…」

 

涙を拭きながら顔を上げポツリと呟くと、マジかという目で見られた。

 

お風呂とトイレ以外は、あたしはずっとナズナと一緒にいる。

あたしが離れて不機嫌になる事はないが、甘えてくる事は多いかもしれない。

 

「シンク、迎えが来るまでと言っていたな。一体いつになる? それによっては、俺の所よりシャルの所に身を置いた方が良いだろう」

「あー…それは俺にも分かりかねます。兄と一緒に遺跡の視察に行ってたら、どうやら時空断層に巻き込まれたようで。兄の姿が見えないんで、あっちはあっちで何とかしてるでしょうけど」

 

少し頭を掻いて、シンクは眉を下げる。

自分の事ではなく、兄の方を心配しているようだ。

 

「そのお兄さん、も、あたしの息子なのよね?」

「そうですよ、母様。名前はグンジョウって言います。ちゃんと貴女の息子ですよ」

 

シンクの雰囲気が優しいものに変わる。

あたしは椅子から立ち上がり、シンクの前に行くと彼を抱きしめた。

 

「貴方も、あたしの息子でしょう? お腹を痛めたか痛めてないかなんて、関係ないわ」

「母様…。嬉しいんですけど、父様の視線が痛いんで離れてもらっても良いですかね?」

 

彼から手を離しナズナの方を見ると、腕を組んで少し不機嫌そうにあたし達を見ている。

その表情に、あたしは笑ってしまった。

 

「貴方、将来子供にもそんな嫉妬をしそうね? 子供も大事だけど、貴方も同じくらい大事なのに」

「将来はしないかもしれんが、今は違うだろ。いくら俺達の子とはいえ、もう成人して何年も経っているんだ。シャルの美しさに目が眩むかもしれん」

 

そんな馬鹿な。

母親であるあたしに目が眩むなど、あるわけがないだろうに。

 

あたしが呆れた目を向けると、シンクが自分の左手を掲げた。

その薬指には指輪が嵌っている。

 

「すんません、俺結婚してるんで。嫁一筋だし、子供もいるんです。流石に母様が若くて美人でも、母親と浮気とか出来ないです。普通に気持ち悪いんで…いや、母様が気持ち悪いとか思ってないですよ? 父様、自分の母親と近親相姦出来ます? 出来ないでしょ? そういう事です」

「……すまん」

 

少し想像したのか、ナズナが口元を押さえて気持ち悪そうにしている。

 

中世とか、そういうの普通に横行していたって聞いた事あるけど。

だから血が濃ゆくなって、一族滅んだところもあるとか何とか。

 

いや別に、そういう事をしたいとは思ってはいないが、それが常識の所もあるのではないかと思っただけである。

 

「ナズナ、大丈夫?」

「…少し気分が悪い」

 

彼はあたしを抱きしめ、頬擦りしてきた。

自分で地雷を踏みに行ったのに、何をしているのかしらこの人は。

 

彼の背をさすりながらあたしはシンクを見た。

いつも通りだな、なんて表情をしていたので、未来でもあたし達はこうらしい。

 

◆◆◆

 

授業が終わるまでシンクには寮の部屋に転移して待っていてもらい、あたし達は授業が終わるなりそそくさと寮に帰った。

 

「ただいま、シンク。ごめんね、待たせて」

「いや、別に待ってないですよ母様。そこにあった本読んでただけなんで」

 

本棚にあるナズナの軍事書やらなんやらを指差し、ソファーに座ってたシンクは苦笑する。

またナズナが睨んでいるのかと、あたしは背後を振り返った。

 

あたしに見られたナズナは、不思議そうに首を傾げているだけで、あたしも首を傾げてしまう。

 

「どうした、シャル?」

「いや…シンクが苦笑いしてるから、また貴方が嫉妬で睨み付けているのかと…」

 

あたしの言葉に、シンクが慌てたように首を横に振り始めた。

 

「いやいやいや! 父様が睨みつけたから、苦笑いしたわけじゃないですよ?! いや、あのー…母様から、ただいまって言われた事ないんで。いつも母様は俺らを出迎える方なんですよ。お帰りって言われた事は沢山ありますけどね」

 

成程、感慨深かったわけか。

というか、シンクの言い分だとあたし城から一歩も出てないって事にならないかしら?

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