転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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163.ターニャが義母になりました

テスタロッサの玄関をくぐると、メイド達が二列に別れてあたしへ頭を下げて出迎えてくれる。

 

「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」

「ただいま、みんな。お客様を連れて来たから、彼が帰るまで丁重におもてなしして差し上げてね」

 

畏まりました、とメイド達は返してくれた。

その様子に、シンクはコソッとあたしに耳打ちしてくる。

 

「別に、言ってもらえれば働きますけど…」

「休暇と思いなさい。多分、推測なんだけど…貴方結構働きすぎてないかしら?」

 

その質問に、シンクは苦笑だけを返してきた。

言及はしないが、その通りだと感じてしまって、未来のあたしは何をしているのだと少し嘆いてしまう。

 

「お嬢様、お帰りなさいませ。そちらの方がお話にあった方ですか。別室に部屋を用意してあります、続きはそこで」

「ただいま帰りました、お義母様。急に来てしまってごめんなさい」

 

ターニャが階段の上から現れ、降りならそう言ったのであたしも帰宅の挨拶をする。

瞬間、ターニャは階段を駆け降り、あたしを抱きしめてきた。

 

「お嬢様、義母など…! いつも通り、ターニャとお呼びくださいませ!」

「そういうわけにもいかないでしょう? 貴女、お義父様と婚姻を結んだのだし。それなら、あたしにとっても義母になる訳で…」

 

嫌だという風に、ターニャはあたしを抱きしめたまま、首を横に振る。

といっても、ターニャはあたしより背が低いので、あたしの胸あたりでイヤイヤをしているわけなのだが。

 

「…わかった、わかったから。離してターニャ、話が進まないから」

 

あたしがそう言うと、渋々と言った感じでターニャが離れてくれる。

シンクの方をチラ見すると、うわぁ…という顔をしていたので、未来のターニャはもっと落ち着いているようだ。

 

「では、お嬢様。こちらへどうぞ」

 

ここでお嬢様呼びを止めろなどと言ったが最後、多分先程と同じ事になるので、黙っておく。

別室と言ってはいたが、お義父様の執務室に通され、やはりなという気持ちになった。

 

ターニャに伝えたのは以下の通り。

 

信じられないかもしれないけど、あたしの息子が未来から迷い込んできた。

迎えが近々来るようなので、それまで保護したい。

 

この事態を彼女がお義父様に伝えない、なんて選択肢はなかったと思う。

それを聞いた時どんな反応をするかなんて、一目瞭然だろう。

 

好奇心の塊で、人は能力で判断し、無能な人間はいないと豪語しているお義父様が。

あたしの未来の息子で、自分の孫であるシンクを見たいと思うのは、必然だと思う。

 

「お帰りなさい、シャル。そちらが、ターニャに伝えた息子君ですか」

「ただいま帰りました、お義父様。はい、その通りです」

 

あたしはシンクを見た。

彼はあたしの意を汲んで、頭を下げる。

 

「こちらでは初めまして。お祖父様、お祖母様。シンクと申します。暫くの間ではございますが、お世話になります。よろしくお願い致します」

 

少し緊張しているのは、若い時の二人に会ったからだろうか。

あたしが子供を産むのは早くてもナズナと結婚した後だろうし、この子が物心ついた頃なんて、多分二人は少し老けているだろう。

 

ターニャの眼光が少し厳しいのが気にはなるが。

 

「貴方、その作法は誰から学びましたか?」

「…何か、粗相を致しましたでしょうか、お祖母様」

 

シンクの態度に、あたしは二人に会った緊張感からではないと気付く。

 

彼が緊張してるのは、ターニャが恐ろしいからだ。

礼儀やマナーに厳しい彼女が、シンクの動作に言及する等、何か思う所があったに違いなかった。

 

「その腕の角度と、おじきの角度。全くもってなっていません。帰る間、私が教えて差し上げましょう」

「…こうなる予感はしてた、うん。まぁ、父様の所に行って、これより厄介な事になるよりは、母様の所の方がマシ…」

 

何をぶつぶつ言っているのです、とターニャに腕を掴まれ、シンクはレッスン室に移動し始める。

 

「ちょっと待ってターニャ。その前にご飯とか、お風呂とかが先でしょう? 彼、疲れているのよ? あまり無体な事をすると、私…泣いてしまうかもしれないわ? 私の息子に、そんな酷い事をするだなんて…」

 

軽く泣き真似をすると、ターニャが少し慌てた。

レッスンは明日からにします、と言った彼女へ内心舌を出す。

 

ターニャはあたしには甘い。

怒る時は怒るが、基本的には甘やかしてくれる。

泣き真似をしなくても、ちゃんと説得すれば良いのだが、そんな事をしていたらナズナの所に帰るのが遅くなってしまう。

あたしは別にいいのだが、あたしの帰りが遅い事によって、ナズナの不機嫌に巻き込まれるルルさんとブリジットさんが可哀想だ。

 

「なら、後はお願いしてもいい…?」

「お任せください、お嬢様」

 

あたしの泣き真似はわかっているはずなのに、最近あまり会いに来れていなかったせいか、ターニャが張り切ってしまう。

 

本当に、あたしが頼ると貴女は嬉しそうね、ターニャ。

 

「シンク、明日からターニャのレッスンだけど…まぁ…社会勉強だと思って」

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