転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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170.吾妻ノ国に行きます

石自体忘れていたとはいえ転位門って、そんな機能があるのか。

知らなかった。

なら、すぐ行って始業式が始まる前には帰って来られるわけだ。

 

「ほら、行くぞシャル」

 

ナズナがあたしに手を差し出してくる。

その手を取ると、王宮の転位門まで飛んだらしい。

目の前の景色が、寮の部屋からすぐさま変わった。

 

あたしは彼の方を見る。

手を握りながら、ナズナは少し疲労感を漂わせていた。

 

「ナズナ、行く前にバテないでね? 怪我は治せるけど、疲労は治せないのよ?」

「わかってる。お前の手を煩わせる事態にならないよう、気を付けるさ」

 

言ってくれれば、あたしが魔力を使って王宮に転移したものを。

この人、あたしに対して格好つけたいのかしら。

それはそれで、少しおかしくて笑ってしまうのだけど。

 

「何を笑っている?」

 

クスクスと笑いを零してしまったあたしに、ナズナは怪訝そうな顔をする。

 

「別に? 吾妻ノ国、どんな所か楽しみだと思って」

「行けばわかる」

 

転位石に魔力を込め、魔法陣の上に乗った。

景色が一瞬で変わり、あたしの目の前に飛び込んできたのは、螺鈿細工で作られた扉に白色の壁と朱色の柱といった、昔の中華風の部屋だった。

 

「ナズナ殿下、お久しぶりです」

「お久しぶりです、叔父上。ご無沙汰しております」

 

部屋の中に一人の男性がおり、ナズナに挨拶してきた。

ナズナがその男性に頭を下げたので、あたしも下げる。

畏まる必要はない、と言われたあたし達は頭を上げた。

 

ナズナが叔父、と言った事からこの人はナズナのお母さんの弟さんなんだろう。

黒髪茶目、歳の頃は40くらいだろうか。

顔は中華寄りというよりは、日本人寄りっぽい。

服は中華風とも、着物を現代風にアレンジしたものとも取れるようなデザインで、ナズナが着たら似合うのだろうな、と思った。

 

「そちらが、殿下の婚約者殿か。暁蓮(あかつき れん)と申す。暁家当主を務めている」

「シャルロット・マリアライト・テスタロッサと申します。お会い出来て光栄です」

 

カーテシーをしながら微笑む。

蓮さんは、ほう、と驚いた声を上げた。

 

「何とも優美な女子(おなご)だ。殿下、良い伴侶を見つけられましたな。いやはや、羨ましい限りです」

「でしょう。シャルロットは、俺には勿体無いくらいの女性です。俺の妻に迎えられる事は、とんでもない幸運だと思っていますよ」

 

そう言って、彼はあたしを抱き寄せ、お熱いですな、と蓮さんは笑う。

あたしは笑顔を崩さず思った。

 

実の叔父にまで、嫉妬から見せつけるようにやらなくても良いじゃない。

あの陛下じゃあるまいし、甥の婚約者に手を出そうとする人じゃないでしょうよ。

 

「どれくらい此方(こちら)に居られますかな? 別に彼方(あちら)に帰らなくても良いとは思いますが」

「叔父上。俺が母上の忘れ形見だからと、あまり誘惑しないでいただきたい。以前ならともかく、今はシャルロットもいます故」

 

ニコリと笑って蓮さんのお誘いを断るナズナだったが、あたしはそれに含みがあるんじゃないかと思ってしまう。

 

それ、あたしがいるから国に帰らなきゃって意味なのか、それともあたしを連れ去って、王太子の座も捨てて、この国に移住したいって意味なのか。

 

一体どちらの意味でそう言ったのか、後で問い質さなくては。

 

蓮さんの先導で、あたし達は転位門の部屋から外に出る。

部屋の外には日本風の庭が広がっていて、あたしは感嘆の声を上げた。

 

「シャル?」

「…あ、ごめんなさい。少し、懐かしくなってしまって」

 

篠原家の屋敷内の一角にも枯山水があり、よくそこで疲れ果てたあたしを労うように、カヅキがお茶菓子を、長谷川がお茶を入れてくれて三人で眺めていたのだ。

その事を、思い出した。

 

「シャルロット殿は、この庭の良さが分かりますか」

「はい、実家の方にも同じようなものがございました。とても、懐かしく思います」

 

帰ったらターニャにおねだりして、枯山水をテスタロッサの庭に作ってもらおうかしら。

 

そう考えていると、蓮さんからある提案をされた。

 

「御二方、服を用意しましたのでそちらに着替えては如何か? 特にシャルロット殿は、吾妻は初めてでしょう? ナズナ殿下、どうです?」

「そうですね。シャル、お言葉に甘えよう。こちらの服を着たお前も見てみたい」

 

蓮さんが使用人の人に声をかけ、あたしは着替えるためにナズナから離れる。

ちなみに、最初からルルさんとブリジットさんは付いてきていない。

ナズナが権限を使って、二人を城へ待機にさせたのだ。

 

護衛の意味分かってんのかしら、この人…。

いくらあたしと二人で旅行したいからって、王太子って自覚ある?

 

あたしは、小さくなり更に透明へなってくれているルティに、ナズナの護衛を任せ、使用人の人達についていく。

着付け室みたいな場所に連れて行かれ、あちらこちらと服を合わせて似合っている物を着させられた。

 

ベースは黒地なのだが、キャミワンピースタイプで、長袖の薄地の上着と一緒に帯を閉められる。

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