転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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172.浮気されそうになりました

「何処行くんだ」

 

途端、ナズナから腕を掴まれる。

彼からしたら、あたしが知らない土地で動き回るなど危ない、とでも考えたのだろう。

その意識は正しいが、あたしは転生者である。

むしろ危ないのはナズナの方だろう。

だからこそ、二人をこっそり付けたというのに。

 

「ナズナ、ちょっとお互い頭を冷やしましょう? 心配しなくても、貴方の位置は雛桔梗が把握してるから。腕、離してくれないかしら?」

 

ニッコリ笑いながら言うが、彼は不満そうにしているだけで何も言わない。

これはいつものパターンだな、とはわかるがここは異国の地。

物陰などありはしない。

 

キスをして仲直り、はここでは出来ないのだ。

 

「離してナズナ」

「………」

 

もう一度言うと、彼は手を離して踵を返して歩いていってしまう。

あれ、完璧に拗ねたな。

 

彼の態度に肩を竦め、あたしは呉服屋にある着物を見に行く。

薄いピンクの生地に、桜が刺繍されていてとても美しい。

欲しいなぁ、とは思ったが、これをかける衣桁(いこう)も買わねばならないので、結構お値段が張ってしまうだろう。

むしろ、リューネの通貨がこちらで使えるかわからない。

 

「何かご入用ですか?」

「あ、いえ。こちらの着物が素敵だと思って、眺めていたんです。私、リューネから来たのですが、あちらの通貨しか持っていなくて。しかもギルドカードにしか入ってないんですよ。すみません、商売の邪魔をしてしまって」

 

店の人が話しかけてくれたが、あたしはそう説明して謝罪した。

それを聞いた店の人は、使えますよ、と一言あたしに告げる。

 

「…へ?」

「こちらにも組合という名前のギルドがありましてね。リューネの所と提携してるんでさ。だから、手数料ってもんはかかりますが、こっちでも買い物できますよ」

 

これはナズナが手を回したのか、それともギルドが独自でやったのか。

何にしても有難い。

 

「じゃあ、この着物と衣桁を頂けますか? あ、収納魔法があるのでそのままで大丈夫です」

 

ギルドカードを店の人に渡すと、目の前で何らかの機械にカードを差した。

暫くしてから返却され、いいなと思っていた着物と、それをかけるための衣桁を渡される。

それを収納魔法に入れ、店の人に礼を言って出た。

 

「あたし、こっちでもちゃんと買い物できるじゃない。偉いぞ、あたし」

 

自分で自分を褒め称える。

そして、少しナズナが気になったので、レヴィに念話で聞く事にした。

 

〈レヴィ、ナズナはどう?〉

〈昼間から酒飲んで管を巻いておる。我が主、本当にこいつが(つがい)で大丈夫なのか?〉

 

お酒?

え、本当に?

何やってるのあの人?

 

メンタル、あたし以上に弱すぎでは?

 

あたしは呆れてしまい、二人にお願いする。

 

〈レヴィ、ルティ。あまり飲みすぎないように見ててあげて。それでも止まらず潰れたら…暁の屋敷に放り投げて頂戴。あたしはもう暫く町を見てから帰るから〉

〈〈御意〉〉

 

他の呉服屋もあったので着物とかを買いながら、町を眺めつつ歩いた。

そんな時、ルティから急に念話が飛んでくる。

 

〈我が主、番が主以外の女に粉をかけられてついて行こうとしているが…〉

「は?」

 

ルティの言葉に一瞬頭がフリーズした。

 

それ浮気じゃない?

あたしが相手しないからって、それどういう事なの?

 

〈ルティ、ナズナを張っ倒せ。姿を見せても構わん。私が常に貴様を見ていると気付かせろ。あと、今回ばかりは流石に目に余ると伝えておけ。蓮殿が気を遣って、寝室を一緒にしてくれていたようだが、別にしてもらうよう私から話しておくともな〉

〈御意〉

 

頭に来て、あたしは街の散策を切り上げ、転移で暁の屋敷に戻る。

ちょうど蓮さんが玄関にいたので、事情を話して寝室をもう一つ借りる事にした。

 

自分の甥の所業に多少驚いていた蓮さんだったが、若いですな、と笑っている。

あたしにとっては笑い事では無いのだけど。

しかも蓮さんから、ナズナ用に用意した寝室からかなり遠い位置の寝室をあたし用に用意すると言われた。

若いといっても流石にな、と思ったらしい。

 

リューネに帰るまで、ナズナとは同衾無しだ。

 

日が傾きかけてきた頃、頂いたお茶を部屋で飲んでいた。

遠くからかなり慌てた足音が聞こえ始め、あたしは部屋の扉を魔法で開かないよう固定する。

 

「シャル?! 違う、誤解だ!! 開けてくれ!!」

 

扉を開けようとして開かない事を理解し、彼は扉を叩いてきた。

あまりの大声に、あたしは眉を(ひそ)める。

 

「殿下、喧しいのですけれど。お屋敷の方々が驚いてしまいます。お静かになさいませ」

 

ぐっ、と声が聞こえ、ナズナはそれ以降黙った。

ただ、そこから全く動こうとしないのが気配でわかる。

 

「殿下、夕餉の時間ですので、お食事を摂りに行った方がよろしいのでは?」

「…シャルはどうするんだ」

 

どうしてもあたしの顔が見たいのだろうナズナが聞いてくるが、あたしはにこやかに答えた。

 

「こちらで頂きます。殿下はどうか、ご親戚の方々との交流をなさいませ?」

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