転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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173.ナズナの弁明です

彼をここに入れたら、そのまま流されるだろう事が目に見えていたあたしは、絶対に開けるものかと決意を固くする。

 

「シャル…」

「ルティ、連れて行け。私が穏やかに何を言った所で、殿下は動きそうもないからな」

 

ため息をつき、あたしは総帥モードでルティに命令を下す。

穏やかに話している間に、素直に離れれば良いものを。

 

御意、とルティは了承をして、ナズナが抵抗出来ないように浮かせて連れて行ってくれた。

後で聞いたが、ろくに抵抗もせず彼はあたしの部屋から離れたそうだ。

 

夕飯を中に運び込んでもらい、あたしはその彩りの良さにまた感嘆の声を上げる。

吾妻ノ国はその名前の通り和という感じだったが、まさか食事も和食が出るとは思わなかった。

 

お茶の食器も陶器だったし、食事をする為の食器も漆器で、食べやすいようにと使用人の人にフォークとかを渡されたが、もしかしてと思い、箸はあるかと尋ねる。

驚かれたが、あると言われたので持ってきてもらった。

 

久しぶりの和食に、久しぶりに使い慣れたお箸で食事を頂く。

あちらでは洋食ばかりで、和食が恋しくなっていたのだ。

感動して少し涙ぐんでしまう。

 

あぁ、帰りたくなくなってきたなぁ。

ナズナだけ帰らないかなぁ…。

 

なんて思ってしまった。

そんな事を考えてしまう程、あたしは彼に対して怒っているらしい。

 

そして夜。

室内にあるという露天風呂に入る事にした。

 

「うわぁ…っ!!」

 

所々柚子が浮いていて、とてもいい香りがする。

柑橘系が元々好きなあたしは、飛び上がりそうになるくらい嬉しくなった。

テスタロッサの製品であるシャンプーやボディーソープがここにもある事に驚きつつ体を洗い、柚子風呂に入った。

 

「極楽ー…」

 

そして思う。

 

ナズナ、大丈夫かな…。

 

こんな事を考えるなど甘いにも程があるが、まさかこっちに来てまで、彼と喧嘩するとは思わなかった。

いや、あれはナズナが全面的に悪いんだけど。

でもカヅキの言葉を借りるなら、メンタルクソ雑魚? のナズナがあたしにこんな態度を取られて、逆ギレせず落ち込んだら…首括んないかしら…?

それは凄く困るんだけど。

周りにかなり迷惑だし。

 

〈ルティ、貴方ナズナの傍にいる?〉

〈いるが…此奴、主の部屋の前から動こうとしないぞ? 一回元の部屋に連れては行ったが、またここに戻ってきた。如何する、主? 昏倒させるか?〉

 

はい?

あたしの部屋の前?

連れてって戻ってきた?

どういう状況なの?

 

あたしは露天風呂の淵に頭を乗せて、空を仰ぎ見る。

報告を受けても全く理解出来ない。

ナズナの行動が意味不明すぎる。

 

自分が王太子だという自覚、本当に無いのだろうか?

ここは自国じゃないから、羽目を外してる?

それともルティが傍にいるから、危険な目にあっても大丈夫とか?

冗談じゃない。

 

〈ナズナ、酔ってる?〉

〈いいや。もう素面だな。主の顔を見るまで動かんと言っている〉

 

あぁ、もう。

子供なのかな、彼は。

 

呆れたあたしは、仕方なく露天風呂から上がり、身体をタオルで拭いてから、下着を身に付け浴衣を羽織り帯を締める。

そのまま、部屋の扉を開けた。

 

「貴方、何やってんの?」

「………」

 

無言であたしを見上げるナズナは、少し憔悴しているようで、無表情も相まってかなり怖い。

 

「誤解だって言ってたけど、何をどうしたら誤解しないって事になるのか、説明して欲しいんだけど」

 

若干気圧されそうになりながらも、あたしは彼に説明要求する。

 

「…店の女性に、お前をどれだけ愛しているか、話していただけだ。確かに酔ってはいたが、部屋に行こうと言われて断っていた所へ、ルティが現れて頭を殴られてだな…お前からの伝言に酔いも覚めたし、血の気も引いた。別について行こうとしていたわけではない、とすぐに弁明したかったんだが…叔父達にも痴話喧嘩かと笑われてしまうし…本当にすまなかった…」

 

そう言うと、ナズナはあたしから顔を背けて、体育座りをしていた自分の足に顔を埋めた。

 

「あの、いつまでそうしているつもりで…?」

「…さぁな」

 

返答が素っ気なくなっている。

 

え、落ち込んでるの?

 

ナズナの答えが単調になってきているとは、彼のメンタル的に、相当マズい状況ではないだろうか。

 

「ナズナ? とりあえず部屋に戻ったら…?」

「嫌だ」

 

あたしは困って、傍に控えてたレヴィとルティを見る。

見られた瞬間、二人とも無理だと首を横に振った。

 

ですよね…。

わかってた、うん。

 

「ナズナ? ここ冷えると思うんだけど。風邪引いちゃうわよ?」

「構わん」

 

構わん、じゃない。

あたしが構うんだってば。

…全く、仕方ない人だなぁ…。

 

あたしは本当に、彼に対してほとほと甘いみたいだ。

 

指を鳴らして、時を止める。

そして、ナズナの横に腰掛けた。

 

「…胸の事、まだ謝られてないんだけど。なんか弁明しようとしたら、本気でキレるからね」

「すまなかった…」

 

よし、謝ったから許してあげよう。

 

あたしは彼の隣で空を見上げる。

夜空には満月が輝いていて、あたしはある言葉を口にした。

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