転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

182 / 276
182.眠り姫と言われました

いひゃい(痛い)! いひゃいっひぇ(痛いって)なひゅな(ナズナ)!!」

「お前がわかるまで、このままだからな」

 

それ本気で言ってるのこの人?!

 

嘘でしょ、と思って彼を見るけど、こんな冗談言う人じゃないのは分かりきっているので、あたしは本気で泣き始めた。

ボロボロと涙をこぼし始めたあたしを見たナズナは、ため息をついて手を離してから、あたしを抱きしめる。

 

「シャル、泣くな」

「泣くもん…っ! うわぁあんっ!!」

 

ぽんぽんとあやすように背中を軽く叩かれて、あたしは嗚咽をもらしながら、また再びウトウトし始める。

 

「シャル、流石に寝過ぎだ。全く…俺の妃は眠り姫だったのか?」

「うぅ…」

 

眠くて反論出来ない。

あたしは多少の抗議の意を込めて、彼の服を握りしめる。

 

「シャール? シャルロットー?」

「やぁ…」

 

嫌だと、このままが良いとフルフル首を横に振るが、ナズナに抱き上げられた。

そのまま外に連れて行かれ、夕陽が眩しくて、あたしは彼の首に腕を回して顔を背けた。

 

「シャル、少し散歩しようか。お前、昨日俺と別れてからずっと中にいただろう? あまり、お前と共にいられなかったから、俺も多少寂しかったんだぞ?」

「露天風呂とか…廊下だって、外に面していたじゃない…ずっと、部屋の中になんて…籠ってないし…」

 

ナズナが歩く揺れが心地良すぎて、やっぱり瞼が重くなる。

ギュッと、首に回した腕の力を強くするとそこを軽く叩かれた。

 

「シャル、締まってる」

「…ごめん」

 

ナズナがあたしを落とす事は多分ないだろうと、少し身動(みじろ)ぎしてから、瞼を擦る。

彼はあたしを抱き抱える体勢を、重力魔法も使って変え、片腕にあたしを乗せるような形にした。

まだ瞼を擦っていたあたしの手を、ナズナは取る。

 

「せっかくの白い肌が赤くなるぞ、シャル」

「んん…だって、眠いんだもの…」

 

少し不満げに彼を見たが、ナズナは優しげな目を向けてきていた。

なんで、なんてもう疑問に思う事はない。

 

「ナズナ、ごめんね。殴っちゃって」

「俺こそすまなかった。やはり、シャルには敵わないな」

 

ナズナに謝罪すると、苦笑しながらも彼から謝罪が返って来た。

あたしの手を離し、ナズナはあたしの蒼い髪に触れる。

 

「この髪の長さ、久方ぶりに見たな」

「あの先輩に切られて、短くなっちゃったものね。懐かしい?」

 

尋ねると、あぁ、とナズナは嬉しそうに目を細めた。

 

「出会った頃のシャルを思い出すよ」

「貴方、あたしを見るなり目を逸らしていたのにね。それに、貴方と出会ってまだ一年と少ししか経っていないのに、結構長く一緒にいるような感覚がしているわ」

 

俺もだ、とナズナは笑う。

 

彼の笑顔を好きになって、彼を守りたいと願った。

彼の隣にいられたらいい、けれど叶わぬ願いだと、そう思っていたのに。

 

「あたしって、本当に神に愛されているのかもしれないわね? 願ったらなんでも叶いそう」

「最高神に会ったんだ。それは愛されている証拠だろう?」

 

最高神の名前を出されて、あたしは眉を寄せた。

 

「あいつ、好きじゃない…」

「シャル…」

 

あたしの言葉に、ナズナが苦笑する。

彼から夕陽の方に顔を向けた。

 

「…吾妻ノ国から見る夕陽も、綺麗ね。ねぇ、ナズナ。あたし、帰ったらあそこに行きたい」

「あそこ?」

 

何処だろう、と首を傾げているであろうナズナの方を見ず、あたしは言う。

 

「貴方のお気に入りの場所。トリスタン領にある、あの小高い丘。貴方があたしに、プロポーズしてくれた所。二人で、また行きたいわ。貴方とゆっくり、そこで過ごしたい」

「…あぁ。リューネに帰ったら、一緒に行こう」

 

彼の方を見ると、眩しそうにあたしを見つめていた。

だからあたしは、彼に微笑みかけたのだ。

愛しているという意味を込めて。

 

◆◆◆

 

ナズナが使用人の人に、夕飯はあたしの部屋で、あたしの分も一緒に持ってきて貰うよう頼んでいた。

あたしは髪が長くなったので、三つ編みにしてからお団子にして創造魔法で作ったピンで留める。

 

夕飯が運ばれてきたが、ナズナはお箸を頼み、あたしを見てニコリと笑った。

 

「教えてくれるんだろう? シャル」

「勿論」

 

お箸の使い方をレクチャーすると、彼は難なく使いこなせるようになった。

豆とかを掴むのには苦労しているようだったが。

 

「この、ハシ? は便利だな。片手で使えるのも良い。もう片方の手が空くからな」

「食べながら何かをしようと思っているなら、それは行儀が悪いわナズナ。そんな事したら怒るからね」

 

わかってるさ、と返してくるが、あたしが注意しなかったら、多分書類とかを見ながらご飯食べたんじゃなかろうか、と思う。

 

食事を終え、食器類を使用人の人に下げてもらい、ナズナは自分の部屋に帰る…かと思いきや。

 

「今日は一緒にいたい」

 

そう言って彼は、ソファーに座ってゆっくりしていたあたしへ、甘えるように抱きついてくる。

そんな彼の様子に、あたしはクスリと笑ってしまう。

 

「なんで笑うんだ…」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。