転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

185 / 276
185.トラウマを克服したようです

「違う。お前は全く悪くない。暴走したアイツらが悪い」

 

寝室に着き、ベッドへあたしをゆっくりと降ろしたナズナは、その隣に寝転がる。

あたしを抱き寄せて、彼は目を閉じた。

 

「ナズナ…」

「ん…?」

 

あたしも眠気がピークになり、ウトウトしながら彼に言う。

 

「大好き…」

「…俺も」

 

そのまま意識を暗転させ、次に気が付いたら朝だった。

横を見るともうナズナの姿はなく、彼がいたところを触るとまだ暖かかったので、つい先程起きたのかと、あたしはぼーっとした頭で思う。

 

「ナズナ…」

 

嫌な想像をしてしまう。

多分、いずれ訪れる、永遠の別れを。

今この瞬間、それが訪れてしまったら、と。

 

「っ!!」

 

あたしは意識を覚醒させ、布団から飛び出した。

そんな事あるわけないのに、あたしは寝室の扉を力任せに開ける。

もしそこにナズナがいなかったら、あたしは泣き崩れるんだろうと、想像してしまった。

 

「…シャル、どうした?」

 

ちょうど寝室に戻ろうとしていたのであろうナズナが、驚いたようにあたしを見ている。

そんな彼にあたしは抱きついた。

 

あたしの様子が少しおかしい事はわかっていたであろうに、ナズナはあたしを抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でてくれる。

 

「どうした? 怖い夢でも見たか?」

「ナズナ…」

 

彼の体温で少し安心したあたしは、彼の背に手を回し、目を閉じた。

 

「ん…?」

 

ナズナの名前を呼んだからか、優しく聞き返してくれる彼がとても愛おしいと思う。

その間、ナズナはあたしの頭を撫でる手を止めない。

 

「…そう…そうなの…怖い夢を見たの。貴方がいなくなってしまう夢。とても…とても、怖かった…」

「シャルロット。俺がお前の元からいなくなるなど、絶対にあり得ない事だ。死が二人を分かつとも、俺はお前の傍に居るとも」

 

強く抱きしめられ、あたしは少し笑ってしまう。

そんなあたしを見たナズナが、ホッとしたような顔をした。

 

「ごめんね、ナズナ。もう大丈夫だよ。貴方、もう一度眠る?」

「いいや。目が冴えた。シャル、散歩でもするか?」

 

昨日の事もあってあまり外には出たくないなとは思ったが、ナズナも一緒なので何とかなるか、と考え直す。

あと目が冴えたのはあたしのせいなので、少し申し訳なく思った。

 

「そうだね。今何時?」

「朝の5時だ。この季節は少し冷えるだろうから、これを羽織っていけ」

 

ナズナはクローゼットから薄手の上着を取り出し、あたしにかけてくれる。

 

彼を見ながら、もしかしたら、と予感めいたものを感じた。

その予感は外れるかもしれないし、その場合彼に多大な迷惑をかける事になるだろう。

 

でも、その予感にかけてみようと思った。

 

「ナズナ、お願いがあるの」

「ん? なんだ?」

 

上着をあたしにかけた状態で、ナズナは首を傾げる。

あたしは意を決して、彼にお願いしてみた。

 

「あたしの首に、軽く手をかけて欲しいのだけど」

「…シャル、それは…」

 

そんな事をしたら、と彼の顔は物語っていたけれど、あたしは苦笑いをする。

 

「もしかしたら、って予感めいたものがあって。ほら、最近直感力が上がってきた気がしてて。もしかしたら、気絶しないかもしれないじゃない?」

「…シャル」

 

ナズナの眉が寄って、少し顔が険しくなっていた。

あたしの名前を呼ぶ声も、険が含まれている。

 

いや、うん。

無茶苦茶なお願いだってのはわかってるよ?

恋人の首に手をかけるなんて、軽くても嫌だよね。

わかってるんだけど…。

 

「貴方を愛しているからこそ、信じているからこそ、お願いしているのだけど…ダメ?」

「……っ! お前、その顔は反則だろうが…っ!」

 

少し泣きそうな顔で、彼にお願いしてみる。

ナズナはあたしから手を離し、片手で顔を覆って俯いた。

深いため息をつきながら。

 

「…シャル、お前気絶したらどうするんだ…」

 

地を這うような声で問われて、あたしは少し悩む。

気絶したらどうする、か。

 

「…ターニャにお願いして、婚姻を結ぶの早めてもらう」

「やるか」

 

そう言った瞬間、ナズナは顔を上げて即答した。

 

あたしが気絶する方に賭けたわね、こいつ。

しなかったら、どうしてくれようか。

 

ムッとしたけれど、あたしは少し深呼吸をして彼が手にかけやすいよう、ちょっとだけ顔を反らす。

そっと、ナズナがあたしの首に手をかけた。

 

宮塚が、あたしの首に手をかけたような恐怖感はなく、ただ、ナズナの手が暖かいと感じるだけだった。

 

「……平気」

「そうか……もういいか? いいよな?」

 

そう言って、ナズナはあたしの首から手を離し、その場に蹲る。

呆れてため息を吐かれるかと思っていたあたしは、少し驚いた。

 

「ナ、ナズナ? 大丈夫?」

「…大丈夫かと聞きたいのは、こちらの方なんだがな…シャルロット、お前…本当に平気か?」

 

ナズナが心配になって彼と同じ目線まで屈むと、上目遣いでナズナはあたしを見てくる。

その目は、本気であたしを心配している目だった。

 

「うん…本当に平気。多分、貴方だからなのかもしれないけれど」

「…チョーカーとか付けたら、気絶しそうだなお前」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。