転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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186.雨です

それは否めない…。

今度、ナズナの前でつけて試すとしよう。

 

これで気絶したら、婚姻が早まると思えば…いや、それを期待してやっては駄目だと思う。

むしろターニャに叱られそうで怖い。

 

それを想像して頭を抱えたあたしを、ナズナは昨日みたいに抱き抱えた。

 

「お前の近くの庭も良かったが、こちらにも見頃な花があったぞ。もしかしたら、お前には馴染みがあるかもしれないな」

 

彼の言葉に、首を軽く傾げる。

 

馴染みがあるとはなんだろうか?

 

しかしすぐに、彼の言葉に納得した。

ナズナの部屋近くの庭に、青い紫陽花が咲き乱れていたのだ。

 

「うわぁ…凄い…」

 

ここまで大量の紫陽花は見た事ない。

そして先程のナズナの言葉に、首を傾げる。

何故あたしに馴染みがあると、彼は言ったのだろうか?

 

「ナズナ、さっきのどうしてそう思ったの?」

「うん? あぁ、この花の事か? 青いだろ? シャルの髪の色だ」

 

それだけ? と聞くと頷かれたので、単純だなぁと笑う。

早朝だからか草の匂いが強いし、少し肌寒いけれど、それが気にならないくらい今は穏やかな気持ちだ。

 

試してみて良かったと思う。

あたしはきっと、ナズナの隣ならどんな困難でも乗り越えられるのだろう。

そう思った。

 

◆◆◆

 

朝食を頂き、あたしはナズナと部屋でのんびりしていた。

午後からは雨模様らしく、外には行かない方がいいと、使用人の人に言われたからだ。

 

そのうち、使用人の人が言っていた通り空が曇ってきて、雨が降り始める。

 

「雨かぁ…」

 

あたしは窓の外を見ながら呟く。

結構激しく降っていて、雨粒が窓を叩いている。

 

「あまりリューネでは降らんからな。珍しいか、シャル?」

 

あたしの足を枕にしながら本を読んでいたナズナが、目線をあたしに投げかけてくる。

あたしはチラリと彼を見た後、また窓の外に目を向けた。

 

「そうだなぁ…。羨ましいと思って見ていたかな」

「羨ましい?」

 

一体何故と疑問が浮かんでいるだろう彼に、あたしは言う。

 

「あたし、送り迎えは車…こっちの世界で言ったら、馬車かな。それでずっと移動していたの。雨が降ってても、晴れてても関係なく。車から降りても、カヅキが傘を差してくれてたから、あたし自身が濡れる事はなかった。だから、車から見える光景が羨ましかったの。一緒に傘を差して帰る友達、同じ傘の下で手を繋いで歩く恋人の人達。傘を持ってなくて走る人や、雨宿りしてる人もいたっけ…」

 

あたしは懐かしくなって、目を閉じた。

自分の呼吸音や、ナズナの呼吸音よりも強い雨音が耳に響く。

 

「もし、貴方があたしと同じ場所に生まれて、同じ時を過ごしていたら…。あたしは貴方に恋をしたかしら?」

「シャル…」

 

名を呼ばれて、あたしは目を開けた。

彼の方を見ると、真剣な顔であたしを見つめている。

 

「もしもの話よ。もし、貴方があたしと同じ日本人で生まれていたとしても、多分結ばれる事は無かったんだろうなぁ、と思ってしまって…」

 

次期総帥であるあたしには、カヅキという婚約者がいた。

もし、ナズナに恋をしたところで、それは叶わなかっただろう。

 

苦笑しながら言うが、ナズナは手を伸ばし、あたしの頬に触れた。

 

「シャル。俺は生まれ変わったとしても、絶対お前に惚れるだろうし、お前を振り向かせる努力だって怠らないだろう。お前も知っての通り、俺は嫉妬深いんだ。お前に言い寄る男は、例えカヅキが相手だろうと、蹴散らしてやる。お前が振り向いてくれるまで口説くし、振り向いてからも口説き続ける。お前を愛していると、何回でも言うよ」

 

ただの戯言なのに、ナズナは真剣に答えてくれる。

あたしはそれが、何より嬉しい。

 

「ありがとう、ナズナ」

「シャル? 今度雨が降ったら、二人で傘を使って何処か行ってみるか? それとも、雨の中濡れながら歩こうか? お前が望むなら、俺はどこまでも共に行こう」

 

彼が触れてくれている手に頬擦りする。

そしてあたしは、困ったようにナズナを見た。

 

「貴方、あたしに甘すぎだと思うわ。あたしが望む全てを叶えようとしなくていいのよ?」

「お前が愛おしいだけだ。むしろ、お前は少し我儘を言った方がいい。惚れた女の望みを叶えるのも、男の甲斐性だからな」

 

仕方がない人だと思う。

あたしは、貴方の隣に居られれば、それだけで良いのに。

 

ゆっくりと、時間が流れていく感じがする。

 

「あたし、我儘結構言っている気がするけれど?」

「ささやかすぎて、我儘と思えないのばかりじゃないか。あれが欲しい、これが欲しいとねだっても良いくらいなんだが?」

 

少し不満げに言われてしまったので、あたしはナズナに言った。

 

「ナズナにねだるくらいなら、自分で買う。欲しいものなんて、貴方からの愛だけだわ」

 

それを聞いたナズナは身を起こし、あたしに触れるだけのキスをしてくる。

彼が唇を離した後、二人で笑った。

 

それから一月の後、あたし達は蓮さん達にお礼を言ってリューネに帰った。

とりあえずナズナは、従兄弟二人の所業について、蓮さんに釘を刺しまくっていたが。

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