イフリート1の月、2の月と吾妻ノ国へ行き、暁家にお世話になって、一騒動あり。
そんなこんなで始業式が始まる前までに、リューネに戻ってきたあたし達だったが。
「称号持ちの、会議?」
テスタロッサ家に届けられていた手紙を、うちに所属しているアリエッタが持ってきたのを受け取り、それを見たあたしは思わず呟いてしまう。
アルテミシアさんからの手紙で、今度の休みの日にギルドの称号者が一堂に会して、会議を行うという通知だった。
ナズナの方にも同じ物が来ていたので、アルテミシアさんの名を騙った手紙ではないとわかる。
ちゃんと封蝋も、アルテミシアさんの名前が入っていたし。
アリエッタが一礼して帰っていくのを見送り、あたしはナズナに尋ねる。
「会議って…一体何をするのかしら?」
「ギルドの運営とか、資金繰りとか、他の称号者では太刀打ち出来ない魔物の討伐とか、あとは…そうだな、王家からの依頼をどう捌くか、とかか?」
指折り数えてナズナは言うが、王族本人がいる前で、そんな話するかな…?
「まぁ、行ってみればわかるさ」
あたしの頭を撫でる彼に苦笑した。
ナズナのこの態度は寵愛というやつだと、この間メイドのみんなに教えてもらったので、悪い気はしない。
むしろ嬉しいので、もっと撫でてもらいたいとあたしはナズナに甘えるように抱きつく。
吾妻から帰ってきてから、あたし達の仲は前にも増して仲睦まじいと思う。
将来離婚騒動になるとは、思えないくらい。
「本当にあたし、貴方に離婚を言い渡すのかしら…?」
吾妻ノ国に行く一月前に、未来の息子が言っていた事を思い出して、あたしは呟く。
「やめてくれ…心臓が痛くなる…」
抱きついたあたしを、抱きしめてくれていたナズナの腕の力が、強まった。
あたしは彼を見上げ、微笑む。
「大丈夫よ、ナズナ。シンクも、まだ離婚してないって言ってたじゃない」
「………まだって何だ…まだって…」
この話は今後禁句のようだ。
落ち込んでしまったナズナを持ち直させるのは、結構骨が折れた。
◆◆◆
王都のギルド本部に、休みの日ナズナと共に訪れる。
今日の服は、裾の部分に金のラインが入った黒地のワンピースで、胸元に紫のリボンがつけられていた物だった。
髪もハーフアップにして、そこにも金色の髪留めをつけさせられる。
ナズナのコーディネートに、自分の色を纏わせてくるのならと、あたしも彼に吾妻ノ国の服を着てもらった。
勿論、あたしの髪色が入った服だ。
装飾品として、サファイアが埋め込まれてるブローチも付けてもらう。
「傍から見たら、お嬢様に付き従ってる従者だなこれ」
「何馬鹿な事言ってるの、貴方は。大体、そう思うならなんで自分の色を纏わせてきたのよ」
マツリカさんに案内されて会議室の前に着いたが、ナズナが自分の格好を見て苦笑する。
それに対して抗議したあたしへ、彼は言った。
「最近、お前に懸想する男共が増えてきてな。指輪だけじゃ牽制出来んと思って……すまんな、嫉妬深い男で」
吾妻ノ国でも、カヅキの所でも、男性に言い寄られてしまったあたしに、ナズナは凄く不安になったのだろう。
そう言われてしまっては仕方ないと、あたしは彼の腕に抱きつく。
「貴方からの気持ちなら、別に悪い気はしないわ。それに、嫉妬しない人の方がおかしいもの。あたしも、貴方に近寄る女は……どうしてくれようか」
「シャル、それはやめてくれ…」
おっと、総帥モードが出てしまった。
いけないいけない。
これはナズナが怖がるから、本当に怒った時だけにしておかないと。
彼に腕を引かれ、会議室の中に入る。
中は円形のテーブルになっていて、テーブルを時計で表すなら12時にアルテミシアさんが座っている。
「よく来た、雷皇、光姫。自分のネームが置いてある席に座ってくれ」
あたしの名前の所を確認すると、ちょうどアルテミシアさんの真っ正面だった。
席はアルテミシアさんを入れて9席。
クロエは彼女の後ろに立っている。
「お、遅れましたーっ!!」
扉を勢いよく開けて、ロゼが入ってくる。
そういえば彼も称号持ちだったと、今更ながらに思い出した。
「炎舞、まだ会議は始まっていない。席につけ」
「よ、良かったぁ。あ、シャル久しぶりー。元気にしてた?」
遅刻したと思っていたロゼは胸を撫で下ろし、あたしの姿を見つけて話しかけてくる。
あたしもそれへ、にこやかに返した。
「久しぶり、ロゼ。あたしも殿下も元気よ。貴方も元気そうね」
「うん! この間、仕事の相棒が出来たんだ。今度シャル達にも紹介するね!」
アルテミシアさんの咳払いで、ロゼは慌てて自分の席に座った。
あたし達が来る前から座っていた茶髪の男性と、水色の髪の女性。
女性の方に見覚えがあったあたしは、思わず彼女を見てしまう。
「お久しぶりです、シャルロットさん」
「エレオノールさん…なんで貴女がここに?」
聖女じゃないのか、この人。
なんでギルドの称号持ちしてるわけ?