転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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189.グレゴワール君は人の話を聞かないようです

手をいい加減離して欲しいと言おうと思ったのに、グレゴワール君は、あたしの言葉に被せるように話し出し、困惑する。

こんなに人に話を聞いてもらえないのは、初めてだ。

 

どうしようと思っていた所、あたしの真横から魔法が発動する揺らぎを感じる。

そこにいる人物なんて、一人だけだ。

 

三重重力(トリプル・グラヴィティ)

「ぐぁぁあっ?!」

 

グレゴワール君が床に突っ伏す。

重力系の魔法を食らって、立ち上がれないようだ。

 

「貴様…誰に向かって、そんな戯言(たわごと)を吐いた…?」

 

とても低いお声でそう宣うあたしの愛しい殿下は、怒髪天を突いてしまったようで、グレゴワール君にそう尋ねる。

あたしに対して怒っているわけではないのだが、怖くて横を向けず、あたしはグレゴワール君を見つめる他ない。

 

アオバ君の時以上に怒っている気がする。

迂闊でごめん、ナズナ。

 

「殿下、処罰なら外でやった方がいい。ここは上階だ。下手しなくても床が抜けて、下に被害が行く」

「アスカリドの言う通りです。やめた方が良いです。そんなに怒ると、光のお姉さんが怖がるです。殿下、お姉さん怖がらせたいです?」

 

ガタイのいい茶髪の男の人と、鉛白色の髪の女の子がナズナを止めに入る。

二人の言葉は耳に届いているだろうに、ナズナは魔法を止めようとしない。

 

「殿下、シャルロットさんが怯えてらっしゃいますよ? その証拠に、殿下の方を一切見ないではありませんか。そのままですと、関係に亀裂が入るのでは?」

 

エレオノールさんも口添えをしてくれる。

 

三人共、止めに入ってくれてありがとう。

本当に怖くて、ナズナの方に顔を向けれないのよね。

 

ナズナはため息をつき、魔法を止めた。

シャル、と名前を呼ばれたので、あたしは彼の方を見る。

不安そうな顔であたしを見ていたので、あたしは指を鳴らし時を止めた。

 

「すまん、シャル。怖かったか…?」

「とても。いや、ごめん。あたしが迂闊だった。思い出し笑いをしてしまって…この人に微笑みかけたわけではないのだけど」

 

あたしの足元に大の字になって倒れている、グレゴワール君を見る。

何だろう、女難の相ならぬ男難の相でも出てるのかしら、あたし。

これ、あの無能のせいとか言わないわよね?

 

「好かれるなら、貴方以外嫌だわ」

「シャル」

 

後ろから抱きしめられ、あたしは彼の頭を撫でた。

ナズナもあたしに甘えるように、頬擦りをしてくる。

くすぐったくて、クスクス笑ってしまった。

 

「シャル、愛してる」

「あたしも。愛してるわ、ナズナ」

 

彼が身を乗り出し、あたしにキスをしてきたので受け入れる。

唇を離した彼に、あたしは尋ねた。

 

「ところで、あちらのお二人はどなた? 貴方、人の顔と名前は覚えているのでしょう?」

「茶髪の男の方は、アスカリド・バスティア。ギルドでもトップに入る程の実力者で、俺も何回か顔を合わせた事がある。そっちの少女は、フォルトゥナ・アデライード。アスカリドの、仕事でのパートナーだ。よく2人で組んでやっている」

 

ナズナを止めてくれた二人、アスカリドさんとフォルトゥナさん。

よし、覚えた。

 

指を鳴らし、魔法を解除する。

ナズナは少し不満げに、もっとイチャついていたかったと、小声で呟いた。

 

「帰ってからね」

「はっ!! 殿下何を…何をしているのですか、僕の美しい人に!!」

 

彼の言葉に苦笑していると、グレゴワール君が起き上がった。

あれで気絶してくれていたら良かったのに、彼はあたしを抱きしめているナズナを見て怒り始める。

貴方にそんな権利ないんだけど、と思ってしまうが、多分ナズナの方が彼の扱いは上手いだろう。

 

グレゴワール君のファミリーネームに聞き覚えがあったからだ。

ベルナール家は、21貴族の一つのはず。

あたしの家である、テスタロッサ家と同じ。

 

「何をしていると言えば、見た通りだと思います闇帝。それに、殿下は彼女にそうする権利があります。闇帝の耳には入っていなかったのですか? 殿下が才女と名高い、テスタロッサ家のご令嬢とノーム2の月に婚約したと。その方の容姿も、聞き及んでいるはずですよ? 私の耳にでさえ入ってきているのですから」

 

本を読んでいるミントグリーンの髪の女の子が、グレゴワール君の疑問に答えた。

それに対して、ロゼが困ったように笑う。

 

「アエラ、それ僕情報じゃないの?」

「先輩情報でも、私の周りでさえ知っているのです。闇帝は私より家格が上ですので、その話なんてとっくの昔に知っているものだと思ってました」

 

ロゼが言ってた相棒って、彼女の事っぽい。

あまり人と関わってこなかった彼が、人見知りを発動せず話せているという事は、知り合いだという事だ。

紹介する前に知ってしまったけど、まぁ良いか。

 

グレゴワール君は、そんな馬鹿なと呟いた。

 

「テスタロッサ家の才女、魔王討伐の英雄、気高い魂が殿下の心を射止めた。なんて、噂されていますものね?」

 

クスクス笑いながら、エレオノールさんも言う。

 

「いや、あの、エレオノールさん、なんですかその噂」

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