エンリケを倒してしばらく、同じ感じでナズナに絡んでくる王族、主に男児がすごく多かった。
理由は大小様々だったけど、その対処を何故かナズナ自身が行っていて、あたしがいる意味って何? って感じになってしまっていた。
一回ナズナに注意したのだが、
「王族同士の諍いだ。専属護衛を出す必要はない」
と、取り合ってもらえなかった。
そんなこんなで、学校に行く日になったのだけれど。
「何でカナリアが一緒に乗ってるの?」
ユキヤ君と一緒に、馬車に乗り込もうとしていたカナリアに声をかける。
ついでにあたしとナズナも同乗するのだが、なんで専属護衛であるオリヴィエさんではなく、カナリアが来ているのだろうか?
「シャル、学校ってね。留年でもしない限り、入っちゃいけない年齢の人がいるんだよ?」
「ん? そうなの?」
王族なんだから、世話役とかメイドとか連れていくものではないの?
首を傾げるあたしに、カナリアは続ける。
「シャル、こっちに帰って来てから料理とか掃除とか色々教えてもらったよね? 何のためだと思う?」
「…一人でも、生活できるため?」
何となく嫌な予感がして来たあたしは、段々と声が小さくなっていく。
「それもそうなんだけど、王族の専属護衛ってね。王族の身の回りのお世話もできるように、訓練されるものなの。それで私は、学校に行けないオリヴィエ副隊長の代わりに、ユキヤ殿下のお世話をするために着いて来てるだけ」
「というか、学校と城往復すれば良くない?」
馬車に乗っているのだ。
それぐらいできるだろう。
しかしカナリアは、首を横に振った。
「学校は寮生活だよ? 城に帰れるのは、夏と冬の休みくらいで、それ以外はずーっと寮なの。それに、すぐに帰れる距離に学校があるわけないじゃん。そんなの、何かあったらすぐ親に泣きつく貴族の子供が、多数出ちゃうし。自立心を育てるためなんだから。早馬でもない限り、一日二日で帰れないって」
「マジか…」
ナズナ、知ってて黙ってたな。
ユキヤ君も少し不機嫌そうだし。
カナリアが耳元でこっそり教えてくれた。
「ユキヤ殿下、オリヴィエ副隊長がお気に入りだから離れるの嫌なんだよね。一時期、家庭教師にするって我儘言ったみたいだし」
だからあんなにベッタリなのかと納得がいく。
「シャル、カナリア。早く乗れ、馬車が出れん」
ナズナに言われ、あたしとカナリアは馬車に乗り込む。
一瞬、馬車に何か細工をされていたのに気付き、そこを修復してからだが。
御者が馬に鞭を打ち、ゆっくりと馬車が発進する。
「大丈夫ですよ、殿下。少しばかり離れても、副隊長は殿下のこと忘れませんし、その日あった事は書に
城から離れるに連れて、ユキヤ君が無口になっていく。
その雰囲気に居た堪れず、ナズナの方を見た。
「いつもの事だ、放っておけ。カナリア悪いな。弟はまだ気持ちの整理がつかないようで、機嫌を取らせる事になってしまう」
「いえいえ、大丈夫ですよナズナ殿下」
ニコッと笑うカナリアだが、めちゃくちゃ気を遣っているのがわかる。
普段ならもっと騒がしいカナリアが大人しいのが、その証拠だ。
確かユキヤ君、16って言ってたっけな。
あたしは今何歳なんだろうか?
そこの記憶も抜け落ちている。
「ナズナ、あたし何歳に見える?」
「ユキヤと同じに見える」
成程。
なら、あたしの年齢は16という事にしておこう。
レヴィはあの日から、あたしの腕に巻きついて寝ているようで、今もすごく静かだ。
こんなに周りが騒がしいというのに。
「早馬で一日二日って、普通なら何日かかるの?」
「一週間くらいだな。各領地に学校があるが、そこも一瞬間かかる距離に建てられていることが多いそうだ。視察にも行った事はあるが、ベルナールの所は案外近くにあって、甘えた感情の奴らが多かった」
ベルナール、という事はリューネに代表される21貴族の一つだ。
レイラさんから聞いたリューネの貴族階級は、21貴族が筆頭貴族として、上流貴族、中流貴族、下流貴族に分けられるらしい。
無論、上流貴族とは21貴族を置いて他になく、中流は武勲を立てたり、国に何か貢献をしたりして褒賞を頂いた貴族の事で、下流貴族は中流に劣るもののそれなりに功績を上げたり、果ては賄賂で貴族籍を貰ったりしている人達らしく、あまり品があるようではない、とはレイラさんの言だ。
あたしが元々いた世界での階級で言えば、21貴族は公爵の位。
中流が、侯爵、辺境伯、伯爵。
下流が、子爵、男爵だろうか。
ちなみにレイラさんは中流貴族の出だそうだ。
「色んな領地に視察行くこともあるの?」
「学校に入る前まではな。今は、夏や冬の休みの間だけだな。今回も視察に行こうとしていたんだが、アキカがゴネてな。仕方なく、視察は取りやめになった」
アキカちゃんと言えば、王妃様の娘だっけ。