次にギルドのハンター達、その次に武家の家々。
一番後ろは王族が控えているので、突破されるわけにはいかないのは、皆わかっている事だろう。
「うちの陣はここだけど…エレノア、テレサ。危ないと思ったらすぐに逃げるのよ? 多少護衛として兵は残していくけれど、あちら側が奇襲をかけてくる事だってあるかもしれない」
「いいえ、お嬢様。私達の命はお嬢様と共に」
「私達だけで逃げたら、奥様に叱られてしまいます」
二人とも頑なに、あたしに最期まで付き従うと言う。
レヴィとルティを置いて行く事になるな、これ。
あたしは少し嘆息して、それ以上何も言う事なく馬車に揺られた。
そして三日後。
あたし達テスタロッサ家は、魚鱗の陣の最前線にいた。
エレノアとテレサの手によって着させられたのは、あたしの髪色と同じく青い、軍服みたいなもの。
ただの軍服ではなく、白のワイシャツに黒のネクタイ、青いジャケットに、コルセット付きスカートは太もも辺りにスリットが入っており、黒いショートパンツに、黒のブーツ付き。
黒いレース付きの小さい帽子を頭につけられ、髪を三つ編みにされ、纏められる。
出来上がりを見てみれば、どこぞの女公爵という感じで、本当うちのメイド達の腕は凄いなぁ、と感心してしまう。
「お嬢様は、旦那様の代理で戦地に赴かれるのですから、このくらい着飾ったところでバチは当たりませんとも!」
「そうですとも、お嬢様! いってらっしゃいませ! 無事のお戻りをお待ちしております!!」
ありがとう、と言ってあたしは陣幕から外に出る。
テスタロッサの兵達が、跪いてあたしを待っていた。
あたしは少し息を吸って、兵達に聞こえるよう声を出す。
「諸君、まずは私に付き従ってくれて感謝する。私はお義父様の代理だが、こんな小娘に従うなど、不服の者もいよう。しかし、私はここに宣言する。ここにいる者は、全て私が守る。誰も死なせない。だから安心して私についてこい。良いな?」
あたしの言葉に、皆が頭を垂れた。
そして、アイゼンが声を上げる。
「お嬢の実力なんて、みんなわかってますよ。誰も不服な奴なんていません。俺達は、お嬢を守って死ねりゃ本望でさ」
「アイゼン。先程も言ったが、私は誰一人死なせるつもりなどない。お前達には、相手側に威嚇するカカシになってもらう。動く事は許さん。取りこぼしがあった場合、攻撃して良い。分かったなら、出陣するぞ!!」
オオーッ!!
と、鬨の声を上げ、皆は馬に乗って戦場へと出ていった。
あたしは雛桔梗を纏い、上空へと飛ぶ。
「ミラ、これから人間同士の醜い争いが始まるの。最大出力を出すつもりだから、貴女に負荷がかかるかもしれない。大変申し訳ないのだけど…」
〈私の事は気にするな。シャルの好きなようにすれば良い〉
ミラに話しかけると、そう念話で返ってきた。
本当、多事多難だらけだけど、人には恵まれているようだ。
「ありがとう、ミラ。雛桔梗、全リミッター解除。最大出力を出します。悪いけど、耐えてちょうだいね」
【了解しました、我が主。どうぞ、ご存分に力を発揮下さいますよう】
サーチしただけでも、敵兵は30万。
こちらは10万と戦力差が3倍向こうの方が多い。
だからなんだという話だが。
あたしは背後を見る。
ナズナがいるであろう、王族の陣幕。
狼煙代わりの迅雷が鳴ったら、開戦の合図だ。
双方死者が出なければ良いと思うが、そうもいかないのが戦争だ。
あたしは、戦争とは無縁な所で生きてきたけれど、悲惨さは知っている。
憎しみが憎しみを生む事も。
「…ごめんなさい」
あたしが今から殺すであろう人々に、謝罪する。
その死を悼む。
圧倒的力で薙ぎ払って、痛みもなく、死なせてあげよう。
それが、あなた達に出来るあたしからの手向けだ。
迅雷が鳴る。
手を組み、目を閉じて祈っていたあたしは目を開けた。
魔力回路を高速で回す。
あたしの周りや、敵の上空に魔法陣がいくつも浮かんだ。
周りから見たら、圧巻だろうなと頭の片隅で思った。
「
魔法陣から、光の柱が降り注ぐ。
それに触れた敵が、蒸発していった。
逃げ惑うが、逃げ場など既にない。
あたしに、ナズナに、そしてリューネに敵対した時に、もう運命は決まっていたのだから。
取りこぼしがあったようで、二、三人程こちらに駆けてくる人影があり、あたしはそれへ
それを暫く続けていると、敵方から魔砲を撃たれた。
シールドを張って止めるが、なかなかの威力でシールドに罅が入る。
歩兵の方が全滅したので、遠方攻撃に切り替えたのだろう。
〈お嬢、後方から前進しろって来たんですけど、どうします?〉
〈こちらが注意を引き付けておくから、前進しろ。サボっていると思われたら敵わん。そちらに攻撃がいくかもしれんが、私が守る。安心しろ〉
アイゼンからの念話で、あたしはそう指示する。