魔砲が飛んできている方向をサーチすると、砲台に魔石を詰めていた人達が口々に、あたしを青い悪魔と呼んでいた。
魔法陣が蒼いからだろうが、ナズナに後で言ってみよう。
化物に加えて、青い悪魔も追加されたのよって。
怒りそうだな、とあたしはクスクス笑ってしまう。
全体が移動するのが見え、あたしも前進した。
魔砲があたしや前線にいる兵に飛んでくるが、先程はシールドを一枚しか張ってなかったから罅が入ったのだと思ったあたしは、シールドを二重三重に重ねる。
「魔砲も邪魔だなぁ…潰すか」
魔力回路をまた高速で回す。
ギシッ、と少し体が軋んだ。
ズキズキと頭が痛み出し、呼吸が荒くなってくる。
「雛桔梗、
あたしは胸の辺りを押さえ、荒くなった呼吸を整えるように、前屈みになった。
空中に留まっているのは、雛桔梗の方でコントロールしてくれてるから、落ちる心配はないとはいえ。
歯を食いしばり、頭を押さえる。
時を止めるよりこっちの方が反動が大きい、って事なのか。
でも、頑張らなきゃ。
お義父様も、頑張りなさいって言ってくれた。
ナズナにも、誰も死なせないと約束した。
これが終わるまで、保ってあたしの体。
「雛桔梗、痛覚遮断を…使うね。ごめん、パラメーターの確認…よろしく…」
【我が主…了解致しました。これ以上無理だと判断しましたら、強制的にナズナ様の元へ転移させて頂きます】
貴女に回す魔力、残っていればいいのだけど。
あたしは痛覚遮断を自分にかけ、顔を上げる。
前方を見ると、あたしが張ったシールドに魔砲が当たっている最中だった。
あたしに来なかったのは、本隊があたしより前に行ってしまったからだろう。
あたしの真下には、ベルナールの軍が歩を進めている最中だった。
あたしは雛桔梗のスラスターを全開にし、最前まで飛ぶ。
瞬間、あたしに向けても魔砲が撃たれた。
少しイラっとしたあたしは、魔力回路をぶん回す。
「落ちろぉっ!!」
あとは親玉だけだと思った瞬間、雛桔梗からアラートが来る。
【我が主、危険域です。ナズナ様の所へ】
「待って、雛桔梗! 残党がいるかも…」
あたしの言葉に反して、雛桔梗はナズナの元へ転移させた。
彼は、本陣で戦況を聞きながら各陣営に指示を出している最中で、急に現れたあたしに驚いていた。
「シャル?! どうした!?」
「ごめんなさい、殿下…少し休んだら、すぐに、前線へ行きます…」
あたしの様子がおかしい事を理解したナズナは、あたしを抱き上げ、陣の隅の方に座らせる。
痛覚遮断も、雛桔梗によって解除されていた。
「雛桔梗、シャルのこの様子はなんだ。何があった」
【我が主は魔力回路の使い過ぎで、体に負荷がかかっており、とても危険な状態です。このまま戦わせれば、命を落とす危険もあります】
あー…やっぱり。
神罰二回、神雷一回。
あんな大規模殺傷魔法、そんなぽんぽん撃てるもんじゃないよね。
しかも広範囲で、連続して。
休めば、大丈夫だと思うんだけどな。
「雛桔梗…あんまり言うと、殿下が…心配するから…」
「もうしてる…!」
ナズナはあたしをキツく抱きしめてくる。
あたしは彼の背中を軽く叩いた。
「大丈夫、です…殿下。あとは、残党がいないか…見るだけですから。もう、大規模魔法…使う必要性、ないかと…」
「なら、もう休めシャル! お前のおかげで、こちらの被害はゼロだ。残党狩りなど、他の者に任せておけ。だから、頼むから…休んでくれ、シャルロット…」
だって、貴方と約束したもの。
誰も死なせないって。
「雛…桔梗…レヴィと、ルティ、を…」
瞼が重くなってくる。
ナズナの体温と声で、安心してしまっている自分がいる。
「呼んだか、我が主」
「あまり無茶をするな、我が主! 死なれては、我々が困るのだぞ?!」
二人が現れ、声をかけてきた。
あたしは、二人に命じる。
「残党がいたら、テスタロッサの、兵に…渡して…あと、みんなを守って…あたし、もう無理…みたいだから…」
ごめんね、ナズナ。
最後まで、約束守れなくて。
あたしの意識は、彼に謝ったところで暗転した。
◆◆◆
気が付くと、あたしはベッドに寝かされていた。
少し身動ぎすると、激痛が全身に走り呻き声を上げる。
「起きたか」
痛すぎて涙目になっていると、そう声をかけられてあたしはそちらに目をやった。
「ナズナ…」
「全く無茶をする…お前、一ヶ月も目を覚まさなかったんだぞ…。魔力回路も傷ついているという診断だ。暫く魔法は使用禁止だからな、シャル」
確か、戦争があったのがイフリート3の月。
その一月後という事は、今はウンディーネ1の月。
日本の10月か。
「そんなに眠っていたの、あたし…」
そういえば今月、文化祭じゃなかったかしら。
ナズナとデートしたかったなぁ…。
去年は出来なかったのに。
「シャル、文化祭は来月だぞ。それに戦争が起こったからな。その後処理で、学校も休みだ」