転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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202.幸福を感じました

「悪かった、悪かったよシャル。そう怒ってくれるな。ほら、ゴミ捨てて来るから寄越せ」

 

ナズナにあたしが持ってた物を素直に渡し、彼の後ろ姿を見る。

 

陽に照らされて、キラキラ光る金髪。

長身の身長に、制服で隠れてはいるががっしりとした体格。

いつもあたしを抱きしめてくれる、暖かくて長い腕。

頭を撫でてくれる、細い指。

 

何もかも素敵な、あたしの恋人。

 

「早く、結婚したいなぁ…」

 

思わず、そんな呟きが漏れた。

 

目の端に映った、ファンクラブの人と女子生徒の攻防は見なかった事とする。

ただ、あたしの所に帰ってくる時に、ナズナが怪訝そうな顔をしてそちらを見てはいたが。

 

「シャル、次はどれを食べる?」

「んー…そうね。味が濃かったから、次はさっぱりしたのが食べてみたいわ」

 

と言っても、屋台にはそんな物は売ってないようだ。

あと、味が濃かったので少し喉が乾いてしまっている。

 

「ナズナ、飲み物売ってなかったかしら」

「あっちにレモネードが売ってるぞ。行こうか、シャル」

 

あたしに手を差し出してくるナズナの手を取った。

うん、普通のデートだ。

本当に、ファンクラブの人達と生徒の攻防さえなければ。

 

◆◆◆

 

外の屋台も見て回り、あたし達は校内に入る。

中も色んなものが売っていて、あたしは目を輝かせた。

 

「わぁ…! 可愛い…っ!」

 

ふわふわの生地で作られたクマのぬいぐるみを見つけ、あたしは立ち止まる。

ピンク色のそれは可愛いリボンをつけられて、店先に置かれていた。

 

「欲しいのか、シャル?」

「…欲しいけど…子供っぽいって思った? こういう可愛い系が好きって…」

 

昔は、持っていた。

小さい頃は、とても可愛いもので部屋が埋め尽くされていた。

でも、成長するにつれて、徐々に捨てられていった。

次期総帥のお前には、必要のないものだと言われて。

 

「別に? それにお前が欲しいと思ったものは、全て買ってやろうと決めている」

「貴方…それ、あたしがとても高い宝石が欲しいとか言ったらどうするのよ。一個で国家が傾くようなものを。安易にそんな事を言うものではないわ」

 

それに、欲しいなら自分で買うと前も言ったはずだ。

だけど彼は、首を横に振りあたしに微笑んでくる。

 

「お前はそんな事を言う女ではないと知っている。あと、あまり物を強請らない事もな。だからこそ、欲しいと言ったものは買ってやりたくなるんだ。というわけで、店主。これをくれ」

 

ナズナが店主さんにお金を渡し、代わりにあたしが欲しいと言ったクマのぬいぐるみを貰っていた。

それを、あたしに渡してくる。

 

「ほら、シャル」

「…ありがとう、ナズナ」

 

あたしは嬉しくて、クマのぬいぐるみを抱きしめた。

そんなあたしの表情を見て、ナズナも嬉しそうに笑っている。

 

とても、優しい時間だと思う。

前世では考えられないくらい。

 

ぬいぐるみが売っている店から離れ、色々見て回っている最中、あたしは彼に言った。

 

「ナズナ、あたし今幸せだわ。ここに生まれて来れて、本当に良かった。今、とてもそう思うの」

 

彼があたしの肩を抱き、自分の方に近寄らせる。

一体どうしたのかとナズナを見上げた。

 

「今だけじゃない。これからもずっと、お前は幸せを感じ続けて良いんだ。お前の幸福は、俺の幸福でもある。だから、シャル。俺の隣で笑っていてくれ。お前が死ぬまで、ずっと」

 

優しげに微笑みながら、陽の光を背にナズナはそう言う。

あたしは驚き、そして困ったように笑み返した。

 

「貴方、人が周りにいるのに…そういうのは、部屋に帰ってから言って頂戴」

「今言いたかったんだ。それに、これは俺の本心からの言葉だ。お前に隣で笑っていて欲しい、俺の隣で幸福でいて欲しい。ずっと、お前を守らせて欲しいと、そう願っている」

 

本当にこの人は…だから部屋に帰ってからと言っているのに。

 

あたしはナズナの手を引き、人気のない所へ連れて行く。

空き教室があったのでそこへ入ると、彼に抱きついた。

 

「もう…やめてよ…嬉しくて、泣いてしまうのに。みんなに、泣き顔…見られて、しまうじゃない…」

「それは悪かった。だが、シャルロット。お前を幸せにするのは、俺であれば良いと願っている。あぁ、そんなに泣かないでくれ。本当にお前は、涙腺が弱いのだな」

 

あたしの頬を包み彼は顔を上げさせ、音を立てながらあたしの顔中にキスを降らせてくる。

そして、最後に唇を合わせた。

 

「…そうね。あたしを泣かせるのは、貴方くらいよナズナ」

「それは良い事なのか、悪い事なのか…判断に困るぞシャル」

 

そう彼が言った後、あたし達は笑い合う。

 

あぁ、幸福だ。

とても、とても幸せだ。

このまま時が止まってしまえば良いと、本気で思った。

 

◆◆◆

 

お昼になったので、あたし達は屋台の物を買い学校の食堂に行く。

全く見た事ない食べ物ばかりで、買ってみたは良いが、どういう味なのか予想がつかない。

唯一食べた事があるのは、去年ナズナ達が買ってきてくれたフランクフルトだけである。

 

「シャル、いらなかったら俺が食うからな」

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