転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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208.三日目はゆっくりします

その場合、ナズナと会えても恋人になる可能性はなかっただろう、とは思うけど。

 

「雛桔梗、貴女大丈夫?」

【問題ありません、我が主。私のバッテリーはあと一週間保つ予定です。予定外の戦闘がない限りはですが】

 

そんな事になったら、すぐさまリミッター外してもらうわよ。

 

ナズナの腕に抱きつきながら、あたしはお化け屋敷内の道を進む。

途中、脅かし役の人が出てきて悲鳴をあげた。

そんなあたしを見たナズナは少し驚いているようで、抱きつかれている腕とは逆の手で頭を撫でてくれる。

 

「シャル、お前怖いのスピリット系じゃなかったか?」

「何よ! 普通にこういうのも怖いでしょう?! 今、魔力も何もない普通の女の子になってるのよ?! なんでナズナ平気なの?! す、少しは、あたしを労っ…きゃあぁぁあっ?!」

 

目の前に逆さになった脅かし役が出てきて、あたしはまた悲鳴をあげた。

ナズナはやれやれ、と苦笑したようであたしの腕を外し、子供を抱き上げるような抱き方をする。

 

「ナ、ナズナ?」

「目を閉じていろ、シャル。お前、案外怖がりだったんだな」

 

彼の肩に顔を埋め、あたしは言われた通り目を閉じた。

音も怖いのに、ナズナが守ってくれている安心感がある。

 

いつもは、あたしが彼を守っているはずなんだけどなぁ。

 

ちょっとおかしくて、クスリと笑ってしまう。

 

「シャル?」

「ううん、何でもない。守られるって、こんな感じだったなぁって思い出しただけ」

 

その言葉が彼には嬉しかったようで、あたしの頭に頬擦りをしてくる。

暫く歩いていた感覚があったが、唐突に彼が止まった。

 

「ナズナ?」

「シャル、お化け屋敷から出たぞ。もう目を開けて大丈夫だ」

 

ソローっと顔を上げて薄目を開ける。

確かにもう薄暗くなく、一般生徒の話し声も聞こえ始めていた。

あたしはホッとして、ナズナを見る。

 

「ありがとう、ナズナ。降ろしてもらっていい?」

「この状態で歩きたいんだが…」

 

流石にそれは恥ずかしいんですが。

 

いやいや、とあたしは首を横に振った。

 

「そうか、嫌か…残念だ」

 

本当に残念そうに、ナズナはあたしを降ろしてくれる。

人がいなければ、別に良いのだが。

あたしはナズナにだけ聞こえるよう、こっそり耳元で言う。

 

「帰ったら、いくらでも抱き上げてくれて良いわよ。人前なのが恥ずかしいだけだから」

「…絶対だぞ」

 

彼の真剣な顔に、あたしは頷いた。

というか、一緒に寝てもいるのにスキンシップ足りないのかしら?

 

◆◆◆

 

またテスタロッサの音ゲーコーナーに行ったり、食い倒れを満喫したりと二日目も楽しく過ごして三日目。

最終日の今日。

 

ナズナが朝から離してくれなくて、あたしは少し困った。

 

「ナズナ? 文化祭は? 行かないの?」

「…今日は、シャルとゆっくり過ごしたい」

 

と言っても、朝ご飯とかどうしたら…。

まだ食材はあるから、作れはするけれど。

 

「…ナズナ、疲れちゃった?」

 

ベッドの中の彼の頭を撫でる。

コクリと頷いたナズナは、あたしの胸に顔を埋めてきた。

少し恥ずかしかったが、彼の頭を抱きしめる。

 

「…卒業まで、あと四ヶ月だね。ねぇ、ナズナ。あたし、ウェディングドレスは可愛いのが良いな。一生に一度だから、貴方と決めたい。どんなデザインが、あたしに似合うと思う?」

 

スッと顔を上げたナズナが、そうだな、と言いつつ目を閉じた。

 

「お前は、色んなのが似合うからな…美姫なのも考えものだな、シャル…。体の線が出ているのも良いが…裾が広がっているデザインもいい…」

「ナズナ、貴方眠いんでしょう?」

 

うん、と頷かれたので、仕方ないなと笑う。

 

「息苦しくない? 離れましょうか?」

「嫌だ…シャルの、甘い匂いが…離れるのは…俺の…傍、に…ずっと…」

 

すー、とその言葉の後寝息が聞こえてきて、彼の体が脱力する。

あたしは起こさないようにそっと抜け出し、音を立てずに扉を開閉した。

 

というか甘い匂いって何。

あたしそんな匂いさせてたの?

 

自分の匂いを嗅いでみるが、やはりよく分からない。

まぁ、分からないものを考えた所で仕方ないので、あたしは魔法で家事をする。

 

「技術革新が進んでて良かったなぁ…それはターニャに感謝しなきゃ…」

 

三種の神器と言われている、冷蔵庫、洗濯機、掃除機が普通にあるのは有り難かった。

でなければ、夏の食材保管は大変だっただろうし、掃除はまぁ、箒とちりとりがあれば何とかなるとして。

洗濯は流石に、ナズナの下着とかは恥ずかしくて触れない。

 

家事を終了して、あたしは一息つくためにお湯を沸かしてお茶を淹れる。

学校の方からは結構な騒がしさが聞こえたが、寮の中は静かだ。

砂糖とミルクを入れてぼーっと飲んでいると、寝室の扉が開いた。

そちらに目を向けると、寝ぼけ眼を擦りながらナズナが出てくる。

 

「…すまん、シャル…今何時だ」

「まだ午前10時よ、あなた。おはよう、あたしがいなくてよく眠れたかしら?」

 

尋ねると、眠る直前の事を思い出したのか彼の頬が少し染まった。

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