転生お嬢様、2度目の人生も頑張ります!   作:桜舞

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212.修学旅行先に着きました

魔力が全て持っていかれる感覚はせず、ほんのちょっと込めただけで完了する。

心配そうなナズナに、あたしは笑いかけた。

 

「大丈夫そう。気分悪くなったりもしてないから」

「本当だろうな」

 

疑いの眼差しを向けられたので、あたしは苦笑するしかない。

心配をかけさせ、泣かせてしまったあの日から、彼は本当にあたしを気遣って、心配して、甘やかしてくれる。

そんな彼が大好きで愛しているからこそ、隠し事は無しにしたい。

 

「本当。ダメならちゃんと言うから」

 

順々に充填していくが、あたしの後を雛鳥のごとくナズナが着いて回る。

その様子を見ていたカーン先生も苦笑していた。

 

最後の転位石に充填し終わると、ナズナがカーン先生の所に行き何か耳打ちする。

最初先生は驚いていたが、仕方ないといった感じで肩を竦めた。

 

何だろうと首を傾げつつ、あたしはナズナの所に行く。

 

「ナズナ? 貴方何を…」

「シャルがこんな労力をかけたのだから、対価として俺と二人部屋にするようカーン先生に言っただけだ」

 

何やってるんだこいつは。

その交渉するの、貴方じゃなくてあたしじゃないの?

自分の欲望を最優先にするんじゃない。

 

「まったく…貴方って人は…」

 

呆れて頭を押さえていると、抱きしめられた。

何も言わずそのままだったので、彼の心に深い傷を付けてしまったのだと理解し、申し訳ないと思ってしまう。

それほど、あの戦争で倒れたあたしの姿は、ナズナにとっては衝撃的だったのだろう。

血を流していなかったとはいえ、苦しんでいるあたしの姿というのは。

 

「ナズナ? もうそろそろ転移すると思うのだけど」

「…あぁ」

 

あたしから体を離し、手を握ってナズナは魔法陣の中へと歩いて行く。

 

そして思う。

 

あたしがもし死ぬ事になったら、貴方はあたしの後を追ってくれるのだろうか、と。

生きてはいけないとは言っていたが、自死なんて、ナズナは出来ないのではないだろうか。

責任感が強い人だから。

 

なら、貴方の心に深い傷を与えて一生忘れられない女に、唯一の女になれたのなら。

あたしは、幸せなのだろうな、なんて自嘲気味に笑ってしまう。

 

「シャル?」

 

そんなあたしを見て、ナズナは眉を寄せる。

また変な考えをしているのだろうと、その目は語っていた。

 

「何でもない。楽しみね、ナズナ」

「あぁ、そうだな…あとで何考えていたか吐けよ、シャル」

 

おっと、追及が来てしまった。

怒られる覚悟をしなければならないかな、これ。

 

◆◆◆

 

飛んだ先は大きな広場になっていて、リューネとはまた違う街並みにあたしは、凄いなぁ、という単調な感想しか抱けなかった。

語彙力が消失するくらい、素晴らしい街並みなのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。

 

リューネは大体暖色系の壁で、レンガとか積み上がっているお家が多いが、こちらは白一色。

地球で言えば、イギリスの旧市街の街並みに近いだろうか。

 

「では、組毎に見学する場所が違いますから、僕の組の人達はこちらに来てください!」

 

カーン先生の誘導で、あたし達は先生の所に行く。

先生があたし達を見ながら数を数えて、生徒全員がいる事を確認し、先生が歩き出した事によってクラスメイト全員が先生についていった。

 

あたしは物珍しくてキョロキョロと街並みを見ていて少し遅れてしまったが、ナズナに手を引かれて彼と一緒に歩き出す。

 

「シャル、珍しいのは分かるが逸れるぞ」

「ごめんなさい。凄いなぁ、って思ってしまって」

 

使っている言語はリューネと一緒みたいで、そこかしこに何かのお店があった。

後で自由時間があれば彼と一緒に来れたらな、なんて思う。

 

カーン先生が歩みを止めたので、列の前列が止まり、あたし達も止まった。

 

「こちらの建物はスェッド国の王城になります。古代の技術で作られた物だそうで、今もそのままで現存しているのはこの城だけだそうです。本来なら中も観せてもらえたら、と思って許可を取ろうとしたんですが、拒否されてしまったので外観だけです」

 

カーン先生が指差す先、城を見たあたしは乳白色の結界が張られている事に気付く。

そして、それと同様のものが空にも広がっていて、あたしはナズナに問いかけた。

 

「ねぇ、ナズナ。あの結界って…」

「結界? 何の話だ?」

 

彼から首を傾げられ、これは一般の人には見えていないもののようだと理解する。

普通の結界は無色透明で、こんな色の結界を見た事がなかった。

それに、光が当たっている所は更に輝いていて、見ていてとても不思議な感覚に陥る。

 

「シャル?」

「見えて、ないんだよね? お城に張られている結界とか、空にあるやつとか」

 

名前を呼ばれたので、彼に耳打ちしながら尋ねた。

すぐさま首を横に振られたので、やはりそうなのかと思う。

 

なんであたしにだけ見えているんだろう?

 

カーン先生が移動を始めたので、列が進んでいく。

あたしは疑問に思いながらも、クラスメイトの列に着いて行った。

次の場所は大聖堂のようで、正面に大きなステンドグラス、天井には何かの絵が描いてある。

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